フルトレーラーを運転するには、合計3つの免許を取得する必要があります。取得には時間がかかりますが、一度取得してしまえば仕事の幅が大きく広がるため、高給ドライバーを目指すことも可能です。 本記事では、フルトレーラーに必要な免許の種類と取得方法を解説します。
目次
フルトレーラーに必要な3つの免許
フルトレーラーは大型車両扱いとなるため、運転するためには「大型免許」と「けん引免許」の取得が必要です。場合によっては「けん引第二種免許 」が必要になる場合もあります。どの免許も難易度が高いとされており、高度な運転技術が必要です。 ここでは、フルトレーラーに必要な3つの免許について詳しく解説していきます。
大型免許
大型免許は、以下の項目に該当するトラックやバスを運転する際に必要になる免許のことです。 車両総重量が11トン以上 最大積載量6.5トン以上 乗車定員30人以上 フルトレーラーは数十トン単位の大きな荷物を積んで運転するため、普通免許では運転できません。運転には必ず大型免許が必要です。 大型免許を取得できれば、大型トラックをはじめ、ダンプカーや中型トラックなどを運転できるようになります。仕事の幅が大きく広がるため、取得するメリットは大きいでしょう。
けん引免許
けん引免許(第一種)とは、車両総重量が750kgを超えるけん引車両を運転するときに必要になる免許のことです。けん引自動車とは、けん引されるための構造や装置を備えた車を指します。フルトレーラーの車両総重量は750kgを超えるため、運転にはけん引免許が必要です。 けん引免許を持っているだけでは自動車の運転はできないので、フルトレーラーを運転するときは大型免許とけん引免許の両方を取得する必要があります。
けん引第二種免許
けん引免許には第一種、第二種の2種類があります。一般的に第一種のことをけん引免許と呼びます。第二種は、乗客を乗せたけん引車両を運転するために必要な免許です。 トレーラーバスのような連結バスを運転するときには第二種の免許が必要ですが、日本では現役の車両がほとんどありません。乗客を乗せるけん引車両はあまり普及していないため、第二種の免許を取る必要性は、ほぼないといえるでしょう。
フルトレーラーの免許はどうやって取得する?
フルトレーラーの運転に必要な免許を取得するには、ある程度の費用と日数がかかります。どの免許も合格の難易度が高いので、運転技術に自信のない人は、免許取得までの日数に余裕を持っておいたほうがよいかもしれません。 ここでは、フルトレーラーの免許を取得する方法や取得条件、取得費用や必要な時間などをまとめて紹介します。
免許の取得方法
大型免許とけん引免許の取得方法は以下3つあります。 教習所に通う 合宿免許に参加して短期間で取得する 運転免許試験場に出向いて技能試験だけを受ける フルトレーラーの免許は、教習所や合宿で免許を取得する方法が一般的です。大型免許とけん引免許を一緒に取得できるコースを用意している教習所もあります。 運転技術などを習わずに、運転免許試験場で直接受験することも可能です。この場合、取得までの時間や費用を大幅に圧縮できますが、一発試験は難易度が非常に高いため、一般的な取得方法ではありません。 ただし、けん引第二種免許は教習所での教習や技能検定が行われていないので、運転免許試験場での技能試験に合格する必要があります。
免許の取得条件
大型免許、けん引免許、けん引第二種免許には、それぞれ取得条件が定められています。
大型免許 |
・満21歳以上 |
けん引免許 |
・満18歳以上 |
けん引第二種免許 |
・満21歳以上 |
免許取得に必要な費用と時間
大型免許の取得にかかる費用は、教習所に通う場合は30万円前後、合宿は20万円前後、一発試験は4万円前後(路上試験代を含む)です。免許取得にかかる日数は個々の運転技能によって異なりますが、通学の場合は20~40日程度、合宿の場合は13日間ほどです。 けん引免許を取得するには、技能教習を12時間合計で受ける必要があります。毎日2時限ずつ講習を受ければ、1週間以内に教習・検定を終えられます。免許の取得費用は、通学の場合で15万前後、合宿は12万前後、一発試験は6,100円です。教習所によって取得費用が異なるので、事前に比較しておくと良いでしょう。 なお、けん引第二種免許に必要な費用は、運転免許試験場で支払う6,700円の受験費用のみとなります。
フルトレーラーの免許を取得する3つのメリット
フルトレーラーの免許を取得するには費用と時間がかかるため、実際に取得すべきか悩んでいる人も多いでしょう。しかし、実際に取得できればキャリアアップや年収アップなどの大きなメリットを得られます。ドライバーとして飛躍したいなら、フルトレーラーの免許の取得は必須です。 ここでは、フルトレーラーの免許を取得する主な3つのメリットを紹介します。
規制緩和で需要が高まる
2019年にトレーラーに対する規制緩和が行われ、従来21mまでに制限されていたフルトレーラーの連結全長が最大25mまでに延長されました。フルトレーラーを利用するけん引貨物自動車の輸送効率がさらに向上するため、規制緩和によって連結全長が4m伸びたメリットは非常に大きいといえます。 今後はダブル連結トラックの運行が可能になるとともに、けん引免許保有者へのニーズが急速に高まることが予想されます。けん引免許を取得しておくことは、将来において有効なスキルアップだといえるでしょう。
高給ドライバーを目指せる
ドライバーの給与は貨物の質や量、輸送距離の影響を強く受けるため、貨物をより多く、より遠くへ輸送できるドライバーのほうが高給を得やすいです。長距離運送業務ではトラックよりも輸送効率の良いけん引貨物自動車が優位に立っているため、大型免許とけん引免許があれば高給ドライバーへの足掛かりとなります。 普通・準中型の自動車運転免許でも運送業で働くことは可能ですが、ドライバーの所得は制限される傾向にあります。大型免許とけん引免許を取得できれば、運送業務に使用する全車両の運転が可能になるため、仕事の選択肢や将来の可能性が大きく広がるでしょう。
効率よく運行できる
トレーラーは荷待ちをすることなく、効率よく運行できるメリットがあります。荷待ちとは、物流倉庫で荷物の積み下ろしや荷受けをする際に待機させられる時間のことです。物流倉庫で出入庫が集中してしまうと、数時間待たされることもあります。荷待ち時間が長いことは、トラックドライバーの長時間労働の原因の一つとされており、業界全体の課題となっています。 トレーラーであれば、牽引車両と被牽引車両を切り離すことができるため、トレーラーごと引き渡し・荷受けをすることが可能です。荷物の積み込みを終えた時点でトレーラーごと荷受けできるため、トラックのように長時間の荷待ちが発生することはありません。運送業務を効率化できるのは、トレーラーの大きな魅力です。
フルトレーラーの運転手におすすめの資格
フルトレーラーのドライバーとして仕事の幅を大きく広げたいなら、他の資格取得にも挑戦してみましょう。 ここで紹介する資格はどれも国家資格ですが、大型免許やけん引免許を取得するよりも費用や時間がかからないため、初心者でも挑戦しやすいといえます。仕事の合間に新しい資格の取得に挑戦して、キャリアアップや年収アップを実現しましょう。
フォークリフト運転
工場や倉庫などで最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転する場合は、フォークリフト運転免許が必要です。免許を取得すれば、構内で荷物の積み下ろしができるようになります。 フォーク運転免許を取得するには、フォークリフト運転技能講習を修了する必要があります。数日の座学講習を受けるだけなので、大型免許やけん引免許のような難しい運転テクニックは必要ありません。また、免許の更新なども必要ないため、一度取ってしまえば一生モノの資格となります。
危険物取扱者資格
危険物取扱者資格には甲種、乙種、丙種の3種類があります。このうち、乙種には第1類から第6類までありますが、乙種4類を取得すれば、ガソリンや重油を積んだタンクトレーラーを運転できるようになります。 灯油やガソリンなどの燃料輸送の仕事では、危険物取扱者の資格が欠かせません。甲種 を取得すると全種類の危険物を扱えるようになるため、さらに業務の幅が広がります。試験は年に数回実施されるため、万が一試験に落ちてもすぐに再挑戦できます。
フルトレーラーの運転で注意すべきポイント
一般的な貨物トラックと違い、フルトレーラーには連結部があるため、運転する際はいくつか注意すべきポイントがあります。特に悪天候の日の走行や運転や滑りやすい路面を走行するときは、運転に気をつけないと大事故につながる可能性もあるので要注意です。 ここでは、フルトレーラーの運転で発生する危険な現象を3つ紹介します。しっかり頭に入れて、日々安全運転を心がけましょう。
ジャックナイフ現象
ジャックナイフ現象とは、ジャックナイフのようにトラクターとトレーラーがくの字に曲がってしまう現象のことです。運転中に急ブレーキや急ハンドルをすると、ジャックナイフ現象が起きやすくなります。横転したり後継者がトレーラーに衝突したり、重大事故につながる可能性があるため、大変危険です。 特に注意すべきは、滑りやすい路面での走行や過積載での走行です。雪や雨の日に急ブレーキや急ハンドルをすると、車輪がロックされてタイヤが滑り、ジャックナイフ現象が発生してしまいます。また、荷物の積みすぎでトレーラー側の力が強くなったときも発生しやすいので注意が必要です。
スネーキング現象
スネーキング現象とは、走行中にハンドルが効かなくなってトレーラーが蛇行してしまう状態のことです。荷物のバランスが悪いときや、急ハンドル・急ブレーキをした際に発生しやすい現象です。また、強烈な横風や路面の状態など、環境的な原因で発生することもあります。 スネーキング現象を起こすと、トレーラー本体が横転したり、後続車や対向車と衝突したりする危険性があります。一度起きてしまうと重大事故につながる傾向があるので、 普段から車両の点検を念入りに行うなど、予防対策に取り組みましょう。
トレーラースイング現象
トレーラースイング現象とは、トレーラーのブレーキにロックが掛かってトレーラーが左右に振られてしまう状態のことです。 トレーラースイング現象が発生する主な原因は、急ブレーキやカーブでのスピードの出しすぎです。急ブレーキや急なハンドル操作をすると、ブレーキがロックされてフルトレーラー部分が遠心力で振り回されてしまいます。 ドライバーが後方部分のトレーラーまで操作することはできないため、カーブで発生したときは重大事故につながります。雨の日の道路や舗装されていない道路など、路面の状態が悪いときもロックされやすいので注意が必要です。荷物を積んでいない状態でもトレーラースイング現象は起こるため、日々運転には気を付けましょう。
フルトレーラーの免許を取得して仕事の幅を広げよう
フルトレーラーの運転に必要な免許は、大型免許とけん引免許です。これらの免許を取得しておくと、運送業務に使用する全車両の運転が可能になるため、仕事の選択肢が増えます。加えて、フォークリフト運転免許や危険物取扱者資格を取得すれば、将来の可能性がさらに大きく広がるでしょう。 2019年に行われたトレーラーに対する規制緩和により、今後はフルトレーラーの需要が増すことが予想されます。荷待ちなしで効率よく運行できるフルトレーラーは、トラックよりも優位な存在です。フルトレーラーの免許取得は、今後の運送業界で活躍するために不可欠だといえます。免許取得に挑戦して、ドライバーとしてのキャリアアップを実現しましょう。