トイレットペーパーがしばらくなかった大きな理由

2月、突如として売店からトイレットペーパーが姿を消しました。
当時報道された通り、その直前に広く拡散された「マスクはトイレットペーパーからできている」や「トイレットペーパーは中国から輸入されており今後買えなくなる」といった情報は全くのデマで、それらの情報が流れた後にも、倉庫や製造工場には多くの在庫や原料の古紙が潤沢にありました。

それでもトイレットペーパーがしばらくなかった大きな理由の1つには、他でもない「配送」が追い付かなかったという事情があります。

ご存知の通り、日本の貨物輸送の9割以上を担うのはトラック。
しかし、定期便として輸送ルートがあらかじめ決められていること、そして何よりトラックドライバーの慢性的な人手不足により、こうしたデマ情報はトラック物流業界にとって大きな混乱を招く原因になります。

トラックがあっても、運ぶ商品があっても、それを運ぶ「人間(ドライバー)」がいなければ、物流は今回の騒動ように簡単に止まってしまう。
そうした単純でありながらもなかなか気付かれない裏事情に、「物流は経済を回す欠かせない存在でありながら非常に繊細」であると改めて感じずにはいられません。

トラックドライバーたちに聞くコロナの影響

こうして「国の血液」とも称されるトラックドライバーたちに、今回のトイレットペーパー騒動以外に生じているコロナの影響について聞いたところ、同じ運送業でも、「運んでいるモノ」によってその影響は大きく違ってくるため、その答えにはバラつきがありました。

「仕事が大幅に減った」と真っ先に答えが返ってきたのは、各イベントで使用する機材などを運ぶトラックドライバーと、中国をはじめとする海外からのコンテナを運ぶトレーラーのドライバーたち。

現在、「部品や製品が中国から入ってこないために作業が途中でストップしてしまい、納品できない」という状況が各所で生じていますが、こうした異変をいち早く感じ取ったのも、海上コンテナを運ぶトレーラーのドライバーでした。

また、国による大規模イベントの開催自粛要請は、演者や現場スタッフはもちろん、その機材を運ぶドライバーの仕事や収入をも奪っています。
ご存じの通り、トラックドライバーの多くは「日給月給」という給与体系で雇用されているため、仕事がなくなりその日が休みになれば、収入もそのまま吹っ飛んでしまいます。そのため、休みが増えるドライバーは生活が立ち行かなくなり、アルバイトを始めようとするケースも。が、こうした時世の中、都合よく仕事先も見つからないため、他業種や別路線を担う運送企業への転職を考える熟練ドライバーも出てきています。

その一方、二次輸送と言われる、いわゆる「宅配業務」は、各企業のテレワークの導入、国からの学校休校や不急不要の外出自粛の要請を受け、運ぶモノが多様化し、荷量も増えています。

大手宅配業者や大手ECサイトAmazonの配送員たちに話を聞いたところ、現在飛ぶように売れていると感じるのがレトルト食品、水、コメといった生活インフラのための備蓄品。
また、家で過ごす時間が増えるため、書籍のほか、トレーニングマシーンやダンベルといったジム用品なども多く運ぶ印象があるとのことでした。

冷蔵冷凍車のトラックドライバーからは、休校になり家で留守番をする子どもが増えたことで冷凍食品が大きく動いているという話が聞こえてきます。が、あくまでもそれは家庭用で、レストラン向けの冷凍食品は逆に5~6割減ったと感じるということでした。

トラックドライバーたちへの感謝の気持ち

そんな中、コロナ騒動以前にはなかった現象として挙げられるのが、「巣ごもり消費」です。
外出を避ける消費者からは、

「暇だからやることがネットショッピングしかない」
「何もできない歯痒さにネットショッピングでポチポチ」
「今は大人しくネットショッピングで経済を回します」
「コロナのせいで払い戻しなどがあり、ストレス発散も兼ねてネットショッピング。色々と届くため、ますます引き篭もりに拍車をかけている」

といった声が聞こえてきます。

しかし、3月と4月は元々、卒業や入学入社などによって贈り物が行き来し、引越し時期とも重なるため、業界は1年の中でも繁忙期。
仕事が減り、倒産寸前の同業者がいることを考えると、こうした巣ごもり消費は手を広げて歓迎したいところですが、今後こうした外出の自粛が続けば、荷量はさらに増加し、配達の遅延や物流のパンクなどが生じるのでは、と予想する経営者やドライバーもいます。

現場のトラックドライバーは、こうしたコロナによる騒動や混乱の中で在宅ワークが叫ばれる現在においても、そして今後においても、消費者の生活インフラを守るべく、第一線で日本中を走り回らねばなりません。

先が見えない不安によって、今後もデマの拡散や不要な買いだめは頻発するかもしれません。実際、トイレットペーパーのデマ騒動で少しは懲りたかと思いきや、一部地域に出された「週末の外出自粛」によって、消費者によるさらなる買占め・買いだめが勃発しました。 

在宅ワークもできず、第一線でインフラを支えるトラックドライバーたち。
そんなトラックドライバーたちに感謝せずにはいられません。

企業経営者自身も大変な時期ではあるかと思いますが、東日本大震災の際に得たそれぞれの教訓を思い出し、そして活かしながら、前へ進んでいっていただきたいと心から思っています。