クレーン免許の種類はいくつか存在し、操作するクレーンの機構や吊り重量などによって内容が異なります。ただし、2006年に免許の統合があったため、免許ごとの違いがわかりづらいと感じる方も多いでしょう。そこで、本記事では各クレーン免許の種類を紹介します。
目次
運転士免許を要する5つのクレーン資格
さまざまな種類があるクレーン資格の中でも「運転士免許」が必要なものは次の5つです。
- クレーン・デリック運転士免許(※限定なし)
- クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
- クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)
- 移動式クレーン運転士免許
- 揚貨装置運転士免許
これらのうち、移動式クレーン運転士免許の場合は「大型特殊自動車第一種免許」と「大型自動車第一種免許」を取得しなければいけません。ここでは、クレーン資格ごとの詳しい内容をみていきましょう。
クレーン・デリック運転士免許(※限定なし)
「クレーン・デリック運転士免許(限定なし)」は、労働安全衛生法で定められている免許の1つです。クレーン・デリック運転士免許(限定なし)を取得していれば、吊りあげ荷重「5トン以上」のクレーンを運転できます。 元々は「クレーン運転士(限定なし)」と呼ばれていましたが、2006年4月に「デリック運転士」と合併し、現在の名称となりました。2006年3月以前にデリック運転士免許を取得していた方は「デリック運転士(限定あり)」となり、クレーンの運転はできません。
クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
「クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)」も限定なしと同じく、吊りあげ荷重「5トン以上」のクレーンを運転できます。限定なしとクレーン限定の大きな違いは、デリックの運転や操作ができるかどうかです。 クレーン限定の場合は、デリックの運転や操作はできません。これから免許取得を目指す場合は特に注意しましょう。
クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)
床下運転式クレーンの操作をするには、「クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)」が必要です。床上運転式クレーンとは、5トン以上の荷物を床上から操作するクレーンのことで、工場などで多く利用されています。 5トン以上の場合は免許が必要ですが、5トン未満の場合はクレーン運転の特別教育を修了すれば操作可能です。
移動式クレーン運転士免許
移動式クレーン運転士免許とは、トラックやキャタピラーなどに取り付けられているクレーンを操作・運転するための免許です。移動式クレーン運転士免許は他の免許とは異なり、走行のための免許が必要となり、次の2種類が該当します。
- 大型特殊自動車第一種免許
- 大型自動車第一種免許
それぞれどのような違いがあるのか詳しく解説します。
大型特殊自動車第一種免許
「大型特殊自動車第一種免許」とは、フォークリフトやショベルローダーなどの特殊な構造を持つ車両を運転するための免許です。また、特殊作業に使用する自動車の中でも「小型特殊自動車」に該当しないという条件もあります。 移動式クレーンの1種であるラフテレーンクレーンを運転する場合、大型特殊自動車第一種免許があれば重量に関係なく、公道を走行できます。なお、この免許を取得する場合は、公安委員認定の自動車学校に通うのが一般的です。
大型自動車第一種免許
「大型自動車第一種免許」とは、大型自動車に分類されている車を運転できる免許です。乗車定員は30人以上、車両総重量は11トン以上、最大積載量は6.5トン以上の自動車が該当します。 トラックやダンプカーなどが条件に該当し、これらを公道で運転する場合は大型自動車第一種免許の取得が必須です。走行用台車とクレーン旋回体が分かれるオールテレーンクレーンでは、走行用台車を公道で走行する際に大型自動車第一種免許を必要とします。
揚貨装置運転士免許
揚貨装置運転士(ようかそうちうんてんし)免許は、船舶に取り付けられるデリッククレーンを操作するために必要な免許です。おもに港湾荷役の作業に携わる方が取得します。 揚貨装置運転士免許を取得することで、5トン以上の荷重がある荷物の積み下ろしなどが可能です。取得難易度はそれほど難しくはなく、近年の合格率は学科で約76%、実技が約92%となっています。
技能講習を要する3つのクレーン資格
ここでは、技能講習を要するクレーン資格について紹介します。主な資格は次の3つです。
- 小型移動式クレーン資格
- 床上操作式クレーン資格
- 玉掛資格(1トン以上)
小型移動式クレーンや床上操作式クレーン資格の存在は知っている方でも、玉掛資格については知らない方も少なくありません。ここでは、それぞれの詳しい特徴についてみていきましょう。
小型移動式クレーン資格
「小型移動式クレーン資格」は、吊りあげ荷重が5トン未満の移動式クレーンを操作・運転できる資格です。土木や建設、工場などのさまざまな現場や職種で活用できます。 また、講習は全国各地で行われており、取得場所に困ることはありません。ただし、時期によってはキャンセル待ちになる場合もあり、取得する際は早めに申し込みましょう。
床上操作式クレーン資格
「床上操作式クレーン資格」は、床上操作式クレーンを操作できる資格です。床上操作式クレーンは前述のとおり、工場などの天井に設置されるクレーンを指します。 ペンダントスイッチで操作できるクレーンで、操作者が床の上でコントロールすることから床上操作式と呼ばれています。また、床上操作式クレーンのロープから荷をかけたり、外したりする場合は、後述の「玉掛免許(1トン以上)」も必要です。
玉掛資格(1トン以上)
「玉掛資格(1トン以上)」は、クレーンのフックに荷をかけたり、外したりする作業を行うために必要な資格です。玉掛はクレーン作業に欠かせない作業であり、玉掛者がワイヤーロープなどで掛けた荷が崩れたり、落下したりすれば大事故につながる可能性もあります。 そのため、1トン以上の重量物に関する玉掛けは、技能講習を受けた有資格者しかできないようになっているのです。
特別教育で取得できる2つのクレーン資格
特別教育で取得できる主なクレーン資格として、次の2つが挙げられます。
- デリック特別教育
- 跨線テルハ
特別教育とは、特定の危険性や有害をともなう作業を行う場合に必要となる専門的な教育のことです。ここで紹介する2つの資格は、いずれも専門的な作業に要するものであり、取得する方の職種や業種は限定的であるといえます。それぞれの詳しい内容をみていきましょう。
デリック特別教育
「デリック特別教育」はその名の通り、デリックの操作や運転に要するクレーン資格です。デリックとは、エンジンの他にマストやブームといった部分が装備されているもので、エンジンによってワイヤーを操作します。 また、ブームとワイヤーロープ操作に必要なエンジンは別々に設置されている点もデリックの特徴です。デリックには荷を水平に動かせるものと動かせないものの2種類があり、吊りあげ荷重は0.5トン以上となっています。 デリックとクレーンの違いは「操作性」です。クレーンは油圧シリンダーなどでブームを操作し、デリックはワイヤーをウインチで操作します。 クレーンとデリックの安全規則は全く異なるものが定義されており、デリックの操作や運転には特別教育による資格取得が必須です。
跨線テルハ
「跨線テルハ」とは、荷物を積載した車両などを吊りあげ、線路を超えて運搬するためのクレーンのことです。国鉄時代には線路での荷物輸送が頻繁に行われていたこともあり、荷物の取り扱いが多かった主要駅には、荷物用エレベーターとともに荷物を積載した車を吊りあげる路線テルハが装備されています。 路線テルハを操作・運転するには、デリック特別教育と同じく特別教育により資格取得が必要です。ただし、路線テルハ自体は現在のところ撤去されており、他のクレーンのように操作する機会はないといえるでしょう。
クレーンの操作は高い技術を要する
クレーン免許には「クレーン・デリック運転士免許」「移動式クレーン運転士免許」「揚貨装置運転士免許」など、さまざまな種類が存在します。クレーン操作は種類ごとに操作が異なり、いずれも高い技術を要します。 さらに、大きな重量物などを扱うクレーン作業において安全に対する知識なども欠かせません。大きな事故を起こさないためにも、免許取得を通じて正しい知識と技能を身につけることが重要です。 これからクレーン免許の取得を目指す場合は、対応する作業や現場、職種などに応じて取得するクレーン免許を選んでみてください。