ポールトレーラーの最大積載量とは「荷台などに積める荷物の最大重量」のことです。最大積載量を超えて積載すると「過積載」となり、懲役や罰金が科される可能性もあります。 本記事では、ポールトレーラーにおける最大積載量の概要や確認方法などについてみていきましょう。
目次
ポールトレーラーにおける最大積載量の概要
最大積載量に関わる用語と最大積載量の概要について、次の3点を取り上げます。
- 最大積載量とは「車両に積める荷物の最大限度重量」
- 車両総重量とは「最大定員が乗車した状態の総重量」
- トレーラーの最大積載量の計算方法
特に、最大積載量と車両総重量の違いについて正しく理解しておく必要があります。さらに、車検証を確認せずとも最大積載量を計算できるようにしておくと、いざというときに便利です。ここでは、それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
最大積載量とは「車両に積める荷物の最大限度重量」
最大積載量とは、車両に積める荷物の最大限度重量を指します。最大積載量は車両によって異なり、限度を超える重量を積んでしまうと過積載になるため注意が必要です。
なお、車両の最大積載量は車検証に記載されており、簡単に確認ができます。自分が運転するポールトレーラーが、どの程度の荷物を積めるのかを事前に確認しておきましょう。
車両総重量とは「最大定員が乗車した状態の総重量」
車両総重量とは、最大定員が乗車した状態で最大積載量の荷物が積まれている状態を指します。最大積載量と間違えやすい理由は、いずれも重量に関係する言葉であるからです。
車両総重量を使えば、車検証が見当たらない際にでも最大積載量を求められます。計算方法は次の項目で詳しく説明していますので、確認してみてください。
トレーラーの最大積載量の計算方法
トレーラーの最大積載量の計算方法は以下のとおりです。
- 最大積載量=車両総重量-車両重量-(定員人数×55kg)
この計算を10tトレーラーで示した場合、
「車両総重量(20t)-車両重量(10t)=最大積載量(10t)」
となります。
10tは大型トレーラーに分類され、車両総重量は20t程度であるのが一般的です。定員の総重量を省いた計算にはなりますが、上記の計算方法で最大積載量は求められます。
ポールトレーラーの最大積載量を確認する方法
次に、ポールトレーラーの最大積載量を確認する方法と過積載が発覚した場合の処遇について解説します。ここでは、次の2点について取り上げました。
車検証を確認
過積載は取り締まりの対象 最大積載量は、車検証を確認すれば簡単に把握できるものです。しかし、最大積載量を守らず過積載の状態で走行するとそれは違法行為に該当します。確認方法とあわせて罰則の内容も確認していきましょう。 車検証を確認 ポールトレーラーの最大積載量は、車検証で確認が可能です。また、最大積載量の隣に書かれている数字を「第五輪荷重」と呼び、荷物を運搬する際に連結部のカプラーが耐えられる重さを表しています。 さらに、車検証には備考欄にトラクターやトレーラーの形式が記載されており、トラクターとトレーラーを連結する際には事前の確認が欠かせません。
過積載は取り締まりの対象
トレーラーに最大積載量を超える荷物を積んで走行した場合、過積載という違法行為で取り締まりの対象になります。過積載は道路の劣化に多大な影響を与えるだけでなく、事故につながる重大な過失行為となり得るからです。 罰則の対象は運転手だけでなく、過積載を許可した運送事業者や荷主にまで及ぶ場合もあります。違法行為となる過積載は絶対に行わないようにしましょう。
ポールトレーラーの過積載に関する概要
ポールトレーラーの過積載に関する概要として、次の3つが挙げられます。
- 最大積載量が定められている理由
- 過積載に対する罰則
- 違反点数や反則金の内容
過積載の基準を超えたポールトレーラーは事故や道路の損傷など、さまざまなリスクを持った状態にあります。そのため、明確な基準が定められており、違反した場合は違反点数や反則金、最悪の場合は罰則を科せられます。
自身の運転するポールトレーラーで過積載を犯さないためにも、概要ごとの詳しい内容についてみていきましょう。
最大積載量が定められている理由
最大積載量が定められている理由は、積載量を超える車両が道路の損傷や事故を招くリスクを高めるためです。
道路や橋には、使用用途によって強度や形状の基準が設けられています。しかし、過積載状態のポールトレーラーが通行すると過荷重により道路や橋の劣化が進むため、最大積載量を定めて未然に防止しています。
また、過積載の状態で走行すると重量が重くなり、ブレーキの利きは悪くなります。結果として、横転事故や追突事故を招きかねません ポールトレーラーによる事故は多重事故にもつながります。公共物の保護や悲惨な事故を避けるために最大積載量が設定されており、遵守する必要があるのです。
過積載に対する罰則
トレーラーに最大積載量を超える荷物を積まないために、過積載に対する罰則が設けられています。過積載を行った場合は貨物自動車運送事業法や道路交通法に基づき、運転手だけでなく運行を許可した運送会社や荷主にも罰則が及びます。
さらに、車両使用停止処分に留まらず、最悪の場合は事業停止に追い込まれるケースも少なくありません。一時の甘い考えで行った過積載でさまざまな罰則に処される可能性があるため、ドライバーだけでなく企業側も意識する必要があります。
違反点数や反則金の内容
過積載の割合が5割未満であれば違反点数は「2点」、反則金は「3万円」です。また、過積載の割合が10割以上になると違反点数は「6点」、罰則は「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」に科せられます。
ただし、違反点数や反則金は一時の損失にすぎません。過積載によって事故が起これば、反則金以上の損害が出る場合もあります。
ポールトレーラーの最大積載量にも関連する規制
ポールトレーラーの最大積載量に関連する規制として、次の4つが挙げられます。
- 分割できない荷物を積める「単体物許可」
- 車両総重量を緩和させる「バラ積み緩和」
- 公道を走行するための「特殊車両の通行許可」
- トレーラー後部への「最大積載量の表示」
通常、最大積載量を超える荷物の運搬はできません。しかし、上記の方法を利用すると運搬が可能です。
国土交通省が用意している各制度はいずれも正攻法であり、より多くの荷物を運ぶために有効だといえます。ここでは、規則ごとの詳しい内容についてみていきましょう。
分割できない荷物を積める「単体物許可」
一般的に、セミトレーラーを含むトラックには分割ができない荷物は載せられません。例を挙げると、長い木材や鉄板などがこれに該当します。
しかし、国土交通省から「単体物許可」を得られれば、分割できない荷物でも積み込みは可能です。
単体物許可とは、分割のできない単体物を載せる車両として特別に許可するものです。許可さえもらえれば最大積載量の上限がなくなり、どんなものでも運べます。 ただし、単体物許可を得た場合は走行できる道路が限られる点には注意しましょう。
車両総重量を緩和させる「バラ積み緩和」
車両総重量を緩和させる方法に「バラ積み緩和」というものがあります。バラ積み緩和とは、単体物でない荷物を積み込む際に車両総重量を緩和させる方法です。
車両総重量を緩和させるには、台車の車軸数を増やして1つの軸にかかる加重を10t以下に減らす必要があります。1軸あたりにかかる加重が減らせるとより安定した走行が可能となり、結果として車両総重量を緩和できるのです。
バラ積み緩和はほとんどのセミトレーラーで利用されています。セミトレーラーでより多くの荷物を運ぶためにも、ぜひ活用したいところです。
公道を走行するための「特殊車両の通行許可」
一部のセミトレーラーが公道を走行するためには「特殊車両の通行許可」が必要になります。特殊車両に該当するのが、自動車運搬用などのセミトレーラーです。
そのため自動車運搬用のセミトレーラーは、通行許可がないと公道を走行できません。通行許可を得るには、道路管理者の窓口またはオンライン窓口による申請が必要です。申請に要する資料として、次の6つが挙げられます。
- 特殊車両通行許可申請書
- 車両説明書
- 経路説明書
- 目的地、出発地の略図
- 車両内訳、諸元表
- 自動車検査証のコピー
これらの資料を提出し、通行許可を得られれば公道の走行が可能になります。
トレーラー後部への「最大積載量の表示」
セミトレーラーには最大積載量の表示義務があり、トレーラーの後部に設置する必要があります。最大積載量の表示は法律で決められており、表示義務を守っていない場合は車検に通りません。
さらに、法律に違反する行為であるため、高額な罰金を科せられる可能性があります。そのため、ポールトレーラーの運転前にはトレーラー後部に表示があるかを確認する習慣をつけることをおすすめします。
また、最大積載量が確認できれば手書きでも構わないため、誰が見ても最大積載量がわかるよう、大きく記載するようにしましょう。
ポールトレーラーの過積載が発生する3つの原因
ポールトレーラーの過積載が発生する主な原因として、次の3つが考えられます。
- コンプライアンスに対する意識
- 同業他社との競争激化
- グレーゾーンの影響
過積載が発生するのは、安全性よりも事業の利益を優先した結果といえます。業界内でコンプライアンスが守られていない状況も競争を激化させ、グレーゾーンでの営業に拍車をかけているといえるでしょう。 過積載は一時の利益をもたらすかも知れませんが、損失が出るときは甚大な被害をもたらします。
過積載の発生を未然に防ぐためにも、ここでは原因ごとの詳しい内容について解説します。
コンプライアンスに対する意識
依頼主や現場のコンプライアンスに対する意識の低さが、過積載を発生させている原因の1つといえます。
建築業界や産廃業者の一部では、日常的に過積載が行われているのが実情です。特に、大きな作業現場ではトレーラーが頻繁に出入りし、次々と土砂を積み込んでいきます。 その際に運転手が積載量について意見をいう機会は少なく、そのまま過積載を発生させた状況で公道を走っているといったケースも多いのです。
一方、コンプライアンスの遵守が求められる公共工事の現場では、緑ナンバーのトレーラーが最大積載量を守って運行している傾向にあります。
とはいえ、最大積載量を常に守っていると運搬効率が低下し、過積載で走行するよりも生産性は確実に落ちます。
街中でも見かける山盛りに土砂を積んだトレーラーの多くは、過積載の状態であることは理解しながらも、そのまま走行している可能性が高いでしょう。
同業他社との競争激化
時代を経て、同業他社の競争が激化していることも、過積載が発生する原因と考えられます。
1990年に貨物自動車運送事業法が施行され、2001年以降の小泉内閣による構造改革で運送業会は大きな転換点を迎えました。新規参入の条件が緩和し、業界内の競争が激化したことで、運賃の低下を招いたのです。
運搬重量に対して運賃が支払われる重量精算制の場合、1台のトレーラーにできるだけ多くの荷物を積んだほうが運賃収入は上がります。そのため、最大積載量を超えた荷物を積ませて運賃の値下げに応じた会社が多くありました。
さらに、荷主はできるだけ多く荷物を積ませて運賃収入を上げたいため、過積載が多発するようになったと考えられます。同業他社で競争が激化する中で、コストを抑制し収入を上げる方法として過積載が発生したのでしょう。
グレーゾーンの影響
運送業者には他人の荷物を運ぶ証明として、緑ナンバーをつけるよう義務付けられています。緑ナンバーの設置は、貨物自動車運送事業法で定められたルールです。
しかし、土砂の販売業者という体裁であれば自家用の白ナンバーでも営業が可能になります。これが運送業界のグレーゾーンの影響です。
緑ナンバーの場合は運行管理者を置き、点呼や運転台長の作成など安全管理を徹底しておかなければなりません。また、緑ナンバーでは違反行為をすると業務停止など厳しいペナルティを受けてしまいます。 しかし、白ナンバーには緑ナンバーのように安全管理や厳しいペナルティはありません。グレーゾーンが存在することで業界の不健全さが進んだ点も、過積載の原因となっています。
ポールトレーラーに対する最大積載量の規制は強化されている
ポールトレーラーの最大積載量とは車両に積める荷物の最大限度重量を意味します。
最大定員が乗車した状態で最大積載量の荷物が積まれている状態を指す「車両総重量」とは意味が異なるため注意が必要です。 最大積載量を超えてしまうと過積載として、取り締まりの対象となります。貨物自動車運送事業法や道路交通法に基づき、運転手だけでなく運行を許可した運送会社や荷主にも罰則が及びます。 過積載は道路の損傷や事故を招くリスクを高める大きな原因の1つです。業界内でコンプライアンスが揺らぎ、グレーゾーンでの営業と競争が激化したことで増えてしまったという背景があります。
過積載の割合によっては厳しい罰則を科せられるため、法令に則ったクリーンな営業を心がける必要があるでしょう。最大積載量を超える荷物でも、単体物許可やバラ積み緩和などの制度を利用することで運搬は可能です。 運送業者として大切な商品をお客様へ大切に届けるためにも、正しい手段で運搬できる仕組みづくりが企業には求められます。