過積載に許容範囲は認められていません。そのため、トラックやダンプカーなどを運転するときには、車両ごとに定められた最大積載量を超えないことが大切です。 ここでは、過積載の許容範囲が認められない理由や、各車両の最大積載量について解説します。
目次
過積載に許容範囲がない理由は?
「過積載には許容範囲があるのでは?」と考えている人もいるかもしれません。しかし、許容範囲などはありません。トラックなどの貨物自動車には、それぞれ最大積載量が定められているため、それらのルールをきちんと守って安全運転を心がける必要があります。 なぜ過積載に許容範囲がないのか、その理由をここでしっかり確認しておきましょう。
過積載は法律で定められている
過積載とは、貨物自動車の荷台部分に制限を超えた量の荷物を積んで、車両を運転することです。正式には「積載物重量制限超過」と呼ばれています。 車両の最大積載量は道路運送車両法で定められているため、法定積載量を超えて荷物を積むことは違法行為にあたります。法定積載量を少しでもオーバーすれば過積載となるため、走行時には注意が必要です。
重量の割合に応じて罰金や罰則を受ける
過積載は交通違反で検挙される対象です。 過積載で罰せられる場合には、重量の割合に応じて以下の措置が施されます。
過積載が10割を超えている場合 |
違反点数6点、6ヶ月以下の懲役もしくは10万円以下の罰金 |
過積載が5割~10割の場合 |
違反点数3点、反則金4万円 |
過積載が5割未満の場合 |
違反点数2点、反則金3万円 |
このほかにも、車両使用停止処分や事業停止処分などの厳しい罰則に処されることがあります。過積載はリスクが大きいので、きちんとルールを守って走行しましょう。
最大積載量の計算方法
最大積載量とは、トラックやバンなどの貨物自動車に積むことができる荷物の最大重量のことです。過積載を防止するには、車両ごとの最大積載量をきちんと把握しておかなければなりません。最大積載量は以下の式で算出できます。
車両総重量-(車両重量+乗車定員×55kg)=最大積載量
車検証には車両重量、車両総重量、最大積載量、乗車定員がすべて記載されているので、乗車前に確認して、過積載にならないように注意しましょう。
過積載は危険!許容範囲が認められない理由
過積載が禁止されている理由は、重大な事故につながる危険性があるからです。荷物を積みすぎたせいで、トラックが横転などの事故を起こすだけでなく、他の車を巻き込んでしまう可能性もあります。そのような危険を未然に防ぐために、過積載には許容範囲が認められていないのです。 過積載には具体的にどのような危険があるのか、ここで確認しておきましょう。
ブレーキが効きにくくなる
過積載の車両は、ブレーキを踏み込んでから車が停止するまでの制動距離が伸びます。これは車の重量が多くなり、走っている方向への力が加わった影響によるものです。車全体の重量が大きくなっているため、衝突事故を起こしたときの衝撃がより大きくなり、事故がさらに深刻になる可能性があります。
特に下り坂ではスピードが増すため、通常よりもブレーキを多く踏まなければなりません。ブレーキに負荷がかかった結果、加熱して効かなくなる可能性もあります。この現象を「フェード現象」と呼び、過積載はフェード現象による事故の可能性が高いです。
荷崩れの原因になる
トラックの最大積載量を超えて荷物を積み込むと、車両や荷台のバランスが崩れ、荷崩れを引き起こす可能性があります。荷崩れが発生すると、荷物に甚大な被害が出るだけでなく、走行している他の車にも被害を及ぼす危険性があります。 過積載だと通常よりも多くブレーキを踏むことになるため、再び発進するときに荷崩れを起こしやすくなり大変危険です。
車両の短命につながる
過積載は車軸に強い負担がかかるため、繰り返し過積載をすることによって破損する可能性があります。車軸だけではなく、タイヤにも負荷がかかるので、パンクなどのトラブルが起きる可能性が高いです。万が一高速道路でタイヤに異変が生じた場合は、横転事故などの重大事故につながる危険性があります。
トラックは頑丈に作られていますが、だからといって荷物をむやみやたらに積んでよいわけではありません。最大積載量を守って運転しないと、さまざまな場所に負荷がかかり、車両寿命が本来よりも短くなってしまいます。
道路が劣化する
過積載はアスファルトで舗装した道路にも影響が出ます。アスファルトの強度は決まっているため、過積載のトラックが通ると重さに耐えきれなくなり、路面の老朽化が進んでしまいます。 傷んだ道路は走行する車両の事故を引き起こすだけでなく、道路の陥没による水道管破裂といった大事故につながる可能性もあるので大変危険です。道路の安全を守るためにも、各車両が最大積載量を守って走行する必要があります。
過積載1割未満なら許容範囲?検挙されない?
トラック業界では「過積載が1割未満なら検挙されない」という噂が流れています。本来なら許容範囲はないはずですが、過積載1割未満だと検挙されにくいケースがあるのは事実です。これは警察官が見逃しているわけではなく、正確な計測が難しいといった理由が挙げられます。 ここでは、過積載1割未満が許容範囲になるかどうかを解説していきます。
1割未満の過積載は感知されづらい
法定積載量を1kgでもオーバーすると、違法行為にあたります。本来ならば検挙されて罰則を受けなければなりません。しかし、測定器の誤差などにより、1割未満の過積載は計測しづらいという背景があります。 トラックの重量を測定するためには高性能の測定器が必要ですが、全地域に設置されているわけではありません。そのため、1割程度の過積載では検挙率が低くなってしまうのです。
車両やタイヤの重さが異なる
トラックは車種やメーカーがそれぞれ異なるため、すべての車両が同じ重量になることはありません。トラックの重さの差だけでなく、タイヤの大きさや重さ、部品の重さなどに個体差があるため、積載量を正確に計測するのは事実上不可能でしょう。 例えば、電飾を付けているトラックとそうでないトラックの場合、同じ量の荷物を積んでいても電飾を付けているトラックのほうが重くなります。 しかし、それが過積載の重さなのか電飾の重さなのかを正確に判断することはできません。
このような細かな重さの違いによって、1割未満の過積載が検挙されにくい状況が生まれるのです。 ただし、事情があるとはいえ、1割未満が許容範囲になるわけではないので、しっかりルールを守って運転する必要があります。
過積載に許容範囲は不要!最大積載量を守ることが大事
トラックなどの貨物自動車には小型から大型まで、さまざまなサイズや形状があります。貨物自動車のメーカーによっても最大積載量が異なるので、過積載を防止して安全走行をするためにも、事前に各車両の目安を把握しておきましょう。 ここでは、トラック・ダンプカー・トレーラーそれぞれの一般的な最大積載量の目安を紹介します。
トラックの最大積載量
トラックには小型・中型・大型の主に3種類あります。
小型トラック(車両重量2〜3トン) |
最大積載量3トン未満 |
中型トラック(車両総重量5トン以上11トン未満) |
最大積載量3トン以上6.5トン未満 |
大型トラック(車両総重量11トン以上) |
最大積載量6.5トン以上 |
小型トラックは普通運転免許でも運転することができるトラックです。中型トラックはメーカーが売り出した最大積載量4~8トン程度のトラックを指すことが多いですが、道路交通法上では車両総重量5トン以上11トン未満が中型車になります。 大型トラックは形状によって最大積載量が異なります。
ダンプカーの最大積載量
ダンプカーは小型・中型・大型の大きく3つに分けられます。
小型ダンプカー |
最大積載量2トン程度 |
中型ダンプカー |
最大積載量3.5トン程度 |
大型ダンプカー |
最大積載量9トン程 |
ダンプカーは種類がさまざまなので、最大積載量もメーカーや車種によって異なります。よって、一概には言えないため、あくまでも目安として覚えておきましょう。
トレーラーの最大積載量
トレーラーは鉄道などの構造物や高層ビルの鉄骨などを運ぶため、最大積載量が100トンを超えるものもあります。 トレーラーで重量物を運ぶ場合、「特殊車両の通行許可」を取得するなど、あらかじめ必要な手続きを済ませておかなければなりません。かなり大きくて重い荷物を運ぶことになるため、運転には十分に注意しましょう。
過積載の責任を負うのは誰?
過積載によって厳しい罰則を受けるのは、荷物を運んだ運転手だけではありません。近年は荷主に対する対応が厳格化しており、悪質な荷主による過積載の防止が強化されています。荷物の運搬を指示した会社にも厳しい処分が下されるので、きちんとルールを守らなければなりません。 ここでは、罰則を受ける対象者について詳しく解説します。
運転手
運転手への罰則は違反の回数で異なります。初めての検挙であっても車両使用停止処分となるため、厳しい罰則が下されます。過積載は危険性が高いため、運転手への罰則は想定しているよりも厳しいものです。 再度違反した場合は、過積載の量で罰則が変わります。5割未満の過積載を3年間で4回行った場合は事業の停止、これ以上の場合は事業の許可の取り消し処分です。違反点数も引かれて、最悪の場合は懲役を受けてしまいます。
また、2015年の法改正によって、最大積載量が2倍以上の運転手には「即時告発」が実施されるようになりました。即時告発を受けると、100万円以下の罰金となります。過積載をするリスクは非常に大きいため、日々健全な運行を心掛けましょう。
会社
運転手だけでなく、運送会社側にも厳しい処分が下されます。運行管理者の業務について定めた法令があるため、過積載も処分の対象となります。 1回目に違反をした場合は、違反したトラックの車両使用停止処分の罰則が与えられます。 何度も違反した場合は、事業停止処分や事業許可取り消しなどの重い処分が課せられます。
このような厳しい処罰が定められているのは、過積載が人の命を奪う危険性があるからです。非常に大きなリスクが伴うことをしっかり自覚して、事業を運営する必要があります。
荷主
道路交通法では、荷主が過積載であることをわかっていながら、荷物を引き渡すことを禁じています。実際に荷物を運ばなくても罰則の対象になるため、法定積載量を超える荷物を引き渡すことはできません。 荷主が再び違反する恐れがあると認められた場合は、警察署長から再発防止命令が下されます。
再発防止命令を発した後も違反した場合は、6月以下の懲役または10万円以下の罰金刑が課せられます。 悪質な行為をした荷主には厳しい処罰があるので、運送会社などに対して無理難題を申し付けることは避けましょう。
過積載に許容範囲はない!最大積載量を守って安全運転を心がけよう
過積載に許容範囲はありません。車両の最大積載量は法律で定められているので、きちんとルールを守って荷物を運ぶ必要があります。違反した場合は、車両使用停止処分や事業許可取り消しなど、厳しい罰則を受けてしまいます。 過積載1割未満なら許容範囲というわけではありません。測定器の誤差などにより、1割未満の過積載は検挙しにくいのは事実ですが、法定積載量を1kgでもオーバーすると違法行為にあたります。
なぜ許容範囲がないかというと、重大事故につながる可能性があるからです。ブレーキが効かなくなったり、荷崩れを起こしたりして、他の車を巻き込んだ大きな事故につながる危険性があります。過積載を繰り返しているとトラックの寿命も短くなるため良いことは何一つありません。 過積載は人の命に関わる大事な問題なので、運転手だけでなく、運送会社や荷主それぞれが問題意識を持って事故を防ぐ努力が必要です。
荷物を運ぶときは、事前に最大積載量を確認しましょう。メーカーによって最大積載量は異なるので、車両ごとにしっかり確認して、ルールの範囲内で安全に荷物を運ぶ必要があります。過積載にならない努力を日々怠らず、安全な走行を心がけましょう。