法改正

【運送会社向けガイド】新制度インボイス(適格請求書)の義務化と対応策

要約

・2023年10月1日から、「適格請求書」の発行が義務付けられました。
・所管税務署へ「適格請求書発行事業者」の申請・登録が済んでいない場合は対応しましょう。
・適格請求書要件に基づいた請求書を発行できるようにしましょう。

概説

インボイス(適格請求書)とは、仕入税額控除のために、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

現行の「区分記載請求書」に以下の記載が追加されたデータのことです。
「登録番号」
「適用税率」
「消費税額等」

内容

・適格請求書発行のためには、所管の税務署へ届け出た上で、
適格請求発行事業者として登録をすることが必要です。

・売り手側(運送会社)は、買い手(荷主・親会社・一次受け会社等)から要求された場合、
インボイス(適格請求書)を発行し、写しを保存しなければなりません。

・買い手側(荷主・親会社・一次受け会社等)は、仕入れ額控除の適用を受けるために、
原則として、売り手である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。
※買い手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、インボイスに記載が必要な事項が記載され、
取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

・インボイスの記載内容
帳簿と区分請求書の記載例

国税庁「適格請求書等保存方式の概要」

問題点

適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者である必要があります。
そのため、自身が非課税事業者であっても、取引先よりインボイスの発行を求められた場合は、
適格請求書発行の課税事業者として登録を行う必要があります。

※ただし、制度新規開始に伴う猶予措置として、一定の要件を満たした事業者に対しては、
免税事業者からの仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置がとられています。

公正取引委員会 「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」

対策1

適格請求書発行事業者の登録
インボイスを発行するためには、所管の税務署へ適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要があります。

対策2

インボイスの発行対応

販売管理や請求管理システムを運用して請求業務を行っている場合は、
当該のシステムからインボイス対応の請求書を発行できるように改修しておく必要があります。
自社、相手先の適格請求者番号の管理やインボイスに必要な項目の請求書への追加などを行っておき、
制度が開始された2023年10月分以降の請求書に反映させる必要があります。

税率の記載

インボイスに対応した適格請求書においては、計上された金額についての税率がわかるようにした上で、「1つの適格請求書につき税率ごとに1回の端数処理」としなければなりません。

つまり原則として、「消費税の計算(端数処理)は1つの請求書内で税率ごとに1回ずつ」しか認められないことになります。

運送会社によっては、これまでは個別の運行1件単位で消費税を計算し最終的に合計を行うケースもあるかと思いますが、インボイス制度ではこういった計算は基本的に認められなくなります。
インボイス_請求書例

また、軽減税率(8%)対象の金額計上を行う運送会社は少ないかと思いますが、保税総合、海コン輸送など、非課税(0%)の金額計上が発生する場合は、それぞれどの税率を適用しているのか、金額ごとに明記する必要があります。

そのため、以下のいずれかの対応が必要となってきます。

・適格請求書の方式に則り、消費税の計算方法を変更する。
・運賃その他の項目をすべて内税表記で統一し、予め消費税を計上させてしまう。
・計上する金額は、税率が10%、8%、非課税のいずれなのかを請求書上で明記させる。
 また、それぞれの小計と税額を明記する。

高速代・駐車代などの請求

荷主に対して、高速代や駐車場代を請求している運送会社も多いかと思います。

運送会社ごとに荷主との取り決めによって、実費分全額なのか、指定区間・金額分などで固定なのかなどの違いはあるかと思いますが、運賃を計上した同一請求書の明細内の補助項目として、いつ、どの運行分の高速代・駐車代なのかを記載するのが、慣例上一般的かと思います。

適格請求書を発行する上で注意が必要となるのが、この高速代と駐車場代が関連する部分です。

従来の請求書では、実際の通行料やETC明細、レシートなどの金額=内税金額をそのまま記載していた会社も多いかと思います。

ですが、今後は運賃自体が外税表記の場合、適格請求書にはそのままの内税金額を表記し、消費税の計算を行わせることは原則できません。

そのため、あくまでも今後も同一請求書内で高速代・駐車場代の金額を計上し続ける場合、内税金額の消費税を割り戻すなどして、外税金額として請求書上では計上し、運賃その他の10%課税対象項目と小計を行った上で、最終的な消費税を計算させる必要があります。
高速代請求の例

内税を外税に変換した場合の注意点

上記のように、高速代・駐車代を外税金額に割り戻す場合は、割り戻しの計算時に小数点以下の端数について、切上げ、切捨て、四捨五入のいずれかを行うため、従前の請求書での計算方法と比較すると差額が生じる場合があります。
内税→外税

外税換算した金額での請求に荷主の了解が得られれば問題ありませんが、荷主との取り決めなどによって予め請求の合計金額などが固定されてしまっている場合などは、差額分の金額を調整金のような形で計上して頂くなどの処理が必要となります。

この差額の取り扱いについては、国税庁などから統一的な指針も出ていないため、取引を行う荷主や、税理士、所管の税務署などと相談の上、運送会社様自身で対応方法について決定していただく必要があります。

仮に、高速代・駐車代の請求件数が10件を超えた場合、それぞれで1円単位での差額が発生したとすると、合計10円以上の差額となってしまうため、調整金を課税対象として計上する場合はさらに細かな調整が必要となります。

こちらについても、荷主や税理士、所管の税務署などとご相談の上、運送会社ごとにどのように対応するのか決定する必要があります。

値引き(適格返還請求書)

インボイス制度上では、請求書上で1万円以上の値引きを行う場合は、
適格返還請求書を発行する必要があります。

適格返還請求書には、以下の内容を記載する必要があります。
①売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日
 (適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期 間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
②売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
 (売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
③売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
④売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
国税庁「適格請求書保存方式(インボイス制度)の手引き」

国税庁「適格請求書保存方式(インボイス制度)の手引き」

販売(請求)後に値引きを行う場合は、請求書とは別に適格返還請求書を発行する必要がありますが、販売(請求)段階での値引きであれば、同一の請求書内で必要な項目を併記することで対応することができます。

終わりに

トラッカーズマネージャーの運行管理プランでは、インボイス制度に対応しております。
受注案件の管理~配車~請求処理までをインボイス制度に対応した形でシームレスに運用できますので、ぜひこの機会に導入をご検討ください。

運送会社必見!月60時間超の残業代割増賃金率の変更と対策方法

要約

・2023年4月より、月60時間を超える分の残業代(割増賃金)が50%へ引き上げられました。
・賃金規定を見直し、上記の割増賃金率を規定した給与体系を構築しましょう。
・適切な勤怠管理対策を行い、正確に残業時間を管理しましょう。
・適切な施策を行い、残業時間の抑制を行いましょう。

概説

2023年4月より、月60時間を超える分の残業代(割増賃金)が、中小企業対象の猶予期間満了により、従来の25%から50%へ引き上げられました。

大企業ではすでに実施されており、中小企業を対象として一定の猶予期間が設けられていましたが、
2023年4月より、中小企業も同様の割増賃金の対象となりました。

内容

つまり・・・、
基本給を東京都最低賃金1,113円(2023年10月時点)の計算の場合、
従来は60時間超過分でも、1,113円x25%の+268円割増で賄えていた分が、
割増賃金の適用により、1,113円x50%の+536円割増となります。

現行
改正

問題点

上記のように、単純に60時間を超えた分の割増率が上がった分、従来と同じ内容の業務・運行内容を続けていた場合は、超過時間x人数分が余計に人件費が発生することになります、

また、制度改正4月以降も上記の割増賃金を適用せずに旧来の25%のみで計算を行っている場合は、
従業員より残業代不払いの訴えを起こされることもあります。

対策1

社内規定の改定・36協定の締結
・従来の25%ベースの割増賃金の規定となっている場合は、社内の賃金規定などを見直し、上記の超過分割増を盛り込んだ賃金規定を作成しましょう。
・法定時間外の労働ははそもそも、36協定を結んではじめて行わせることができます。
仮に36協定を締結せずに、例えば週45時間以上の労働を行わせた場合などは、労基法違反で、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

万が一、労使間で36協定を締結していない場合は、早急に締結の上、所管の労働基準監督署まで届け出を行いましょう。

対策2

残業時間・残業代の適正な把握・管理
・勤怠ソフトなどを用い、正確に従業員の残業時間、残業代を把握できるようにしましょう。
・乗務員に関しては、デジタコや運行管理システムを導入・運用させることで、乗務員の事後の自己申告による、性善説に基づいた残業時間計算などを極力避け、正確な労働時間、残業時間の把握と適正な残業代支給を行えるようにしましょう。

特に2023年4月分以降の賃金に関して、60時間超過分も従来のまま25%基準で残業代計算を行い、支給し続けている場合は、従業員より残業代未払いとして告訴される可能性もあります。

早急に対応をとるようにしましょう。

対策3

【労働時間の可視化】
残業時間を法律の上限内に抑えるためには、まず正確な労働時間と残業時間の詳細を把握が不可欠です。

ある程度の業務量や内容、勤務実態を実際で目で見て監督できる事務員とは違い、ドライバーの業務の詳細の把握や残業時間の発生事由の把握は通常の手段では困難です。

まずはドライバーひとりひとりについて、それぞれの業務・運行内容ごとの、拘束時間、労働時間、作業時間、待機時間、運転時間、休憩・休息時間、残業時間等を正確に把握しましょう。

それぞれの運行内容について、運転時間そのものもですが、どれだけの待機時間や積卸時間が発生してしまっているか詳細を勤怠ソフトや時間管理のシステム、デジタコなどの新規導入も含め、
現状どこをどう対策すればいいのかを明確に把握できるようにすることからはじめましょう。

対策4

【残業時間の抑制の実行】
残業時間を含む、労働時間増加の要因を絞り込めたら、それらを解消するための施策を実行していきましょう。

具体的には・・・

・配車担当レベルで、システムの導入やオペレーションの改善を実行し、残業時間を抑制できるような配車計画を組めるような社内体制を整える。
・ドライバーに残業時間上限についての説明を行い、配車担当とのコミュニケーションを通じて協力をしてもらうことで、トータルでの運行本数や運行内容の減少を抑えられる点を理解させ、会社の残業時間削減の施策に理解、協力を求める。
・待機時間が多く発生している積卸場・荷主に対しては交渉を行い、オペレーションの改善や予約システムの導入などを通じ、労働時間を抑制できるように協力を依頼する。
・積卸作業の時間が多くなってしまう運行に対しては、パレット輸送などを含めた効率的な作業に対する理解を促し、協力を依頼する。
・自社内、他社間を含む中継輸送を導入し、ドライバー1人当たりの労働時間を抑制する。

終わりに

利益率の低い運送会社にとっては、残業時間の割増賃金増加は死活問題になりかねません。
適切な管理を行うことによって、利益率を守れるようにしていきましょう。

【2024年改正】改善基準告示:ドライバーの働き方改革に必要な知識と対応策

要約

・2024年4月より、改正された改善基準告示が適用され、様々な制約が増えます。
・各種時間条件の減少に伴い、運行への影響を最小限度に抑えられるように適切な対応策をとりましょう!

概説

・交通事故防止とドライバーの労働条件改善をより行うために、2024年4月より改定された改善基準告示が施行されます。

・従来の告示と比べ、ほぼすべての面で時間的な制約が厳しくなっているため、運送会社・配車担当者はより適切な運行計画を策定し、運行業務を執り行うことが必要となります。

内容

拘束時間

現行


1日:原則13時間以内

上限は16時間以内、かつ15時間越えは最大週2回まで

今後

1日:原則13時間以内、上限は15時間以内。
14時間を超える日は週2回までとなるように努める。

※1週間の運行がすべて長距離運送かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場合は
当該1週間について2回まで16時間以内も可。
ただし、この場合も14時間を超える回数は週2回までとなるよう努める(努力義務)

現行

1カ月の拘束時間は293時間以内。
労使協定がある場合、1年のうち6カ月までは1年間についての拘束時間は
3,516時間を超えない範囲内で月320時間まで延長可能。

今後

原則として1カ月の拘束時間は284時間以内。

例外として労使協定がある場合、1年のうち6カ月までは1年間についての拘束時間が
3,400時間を超えない範囲内で月310時間まで延長可能。

ただし、1ヵ月の拘束時間が284時間を超える月が3ヵ月を超えて連続しないものとし、
1ヵ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めること(努力義務)。 

現行

1年の総拘束時間は3,516時間以内

今後

原則として1年の拘束時間は3,300時間以内。
例外として労使協定がある場合は3,400時間まで延長可能。

休息期間

現行

勤務終了後に最低継続8時間以上。

今後

勤務終了後に基本11時間、最低でも9時間以上。
※ドライバーの1週間における運行がすべて長距離貨物運送(450km以上)であり、
かつ一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合は、
当該1週間について2回に限り、継続8時間以上とすることができる。
この場合、一の勤務終了後に継続12時間以上の休息期間を与えるものとする。

運転時間

現行

運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内。
2週平均で1週間あたり44時間以内。

今後

変更なし

連続運転時間

現行

連続運転時間は4時間以内。
4時間経過するまでに1回が連続10分以上、合計30分以上になるように運転の中断が必要。

今後

連続運転時間は4時間を超えないものとする。
運転の中断は原則として休憩でなければならない。
※運転の中断はおおむね10分以上とし、合計30分以上の中断が必要です。
10分未満の運転の中断が3回以上連続しないこととする。

※また、SA・PAなどに駐車できないなどやむを得ない場合は、最大4時間30分まで延長が可能。

分割休息の特例

現行

勤務終了後に継続して8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は、一定期間における全勤務回数の2分の1を限度に拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して休息を与えることができる。
分割された休息は1回4時間以上合計10時間以上とし、一定期間は原則2週間から4週間程度。
業務上やむをえない場合でも2カ月でなければいけません。

今後

勤務終了後に継続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は、
一定期間における全勤務回数の2分の1を限度に、拘束時間途中および拘束時間の経過直後に分割して休息を与えることができる。
この場合、1回継続3時間以上合計10時間以上の分割した休息期間でなければならず、
一定期間とは1カ月程度を限度とする。

また、分割は2分割に限らず3分割も認められるが、3分割された休息期間は1日合計12時間以上でなければならない。3分割される日が連続しないよう努める。

2人乗務の特例

現行

2人乗務の場合、車両内で身体を伸ばして休息できる設備があるときは
拘束時間は最大20時間まで延長でき、休息期間は4時間まで短縮することができます。

今後

2人乗務の場合、車両内で身体を伸ばして休息できる設備があるときは
拘束時間は最大20時間まで延長でき、休息期間は4時間まで短縮することができる。
ただし、車両内の設備が次のいずれにも該当する車両内ベッド等であるときは拘束時間を最大24時間まで延長できる。

・車両内ベッドは長さ198センチ以上かつ幅80センチ以上の連続した平面である
・車両内ベッドはクッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものである

隔日勤務の特例

現行

2暦日における拘束時間は21時間を超えてはならず、
勤務終了後に継続20時間以上の休息期間を与えなければいけません。
仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠を与える場合は、2暦日の拘束時間を24時間まで延長可。
(2週間に3回まで)
2週間の拘束時間は126時間(21時間×6勤務)を超えることができません。

今後

変更なし

フェリー乗船の特例

現行

フェリーに乗船している時間は時間の長短を問わず、原則として休息期間として扱うことができ、乗船中の休息期間は与えるべき休息期間から差し引くことができます。
フェリー乗船時間が8時間を超える場合は下船した時刻から次の勤務が始まるものとして扱います。
下船後の休息期間はフェリー下船時刻から勤務終了までの間の時間の倍以上でなければいけません。

今後

変更なし

予期しえない事象

新設

事故、故障、災害など通常予期しえない事象に遭った場合でタコグラフなど客観的な記録が確認できる場合は、下記規制についてその対応に要した時間を除くことができる。

・1日の拘束時間
・運転時間(2日平均)
・連続運転時間

予期しえない事象の具体例は以下、

・運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
・運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合
・運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合や道路が渋滞した場合
・警報発表を伴う異常気象に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

休日労働

現行

休日労働は2週に1回を超えてはならない。
休日労働によって拘束時間上限を超えてはならない。

今後

変更なし

厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」

問題点

・どの項目や対象期間を見ても、拘束時間の上限が従来よりも厳しくなっており、輸送の質・量を維持するためには、より効率的な配送計画の作成や拘束時間管理、オペレーションの改善を含めたシステムの改修が必要となります。

・また、例外条件などに関する規定がより細かくなったことも踏まえ、より徹底した時間管理に基づく運行計画が必要となります。

対策1

現状の把握・可視化

・対策を行っていくうえでまず重要なのが、現状の正確な把握です。
現在の運行内容を確認してみて、待機時間・作業時間が目立つ運行はないか、売上は高くとも利益の低いあるいは赤字路線はないか、拘束時間を削減するために適切な配車が組めているかどうかなど、
全てを確認する上で正確に現状のデータを収集し、把握していくことが何よりも重要になります。

・複数営業所間で同一荷主の配車をやりくりしていたり、複数荷主に請求がまたがるような車両があったりすると、単純な請求上の金額からでは全体像が確認しにくいことも多いです。

・逆に細かな点に目を向けると、車両単位・従業員単位で運行内容収支を把握したい場合は、燃料代・有料代・人件費まで考慮して検討するとなると、システムを導入していない場合は集計作業に多大な労力を時間を要します。

・現場担当者や役職者が日次で使用・入力しているデータから、自動で集計作業を行えるようなシステムの導入も検討しましょう。

対策2

課題点の洗い出しと原因の究明

・自社の実情を把握できたら、その中から問題となる点を洗い出します。
拘束時間や残業時間、連続運転時間などが超過しているドライバーがいた場合や、赤字となってしまっている車両・乗務員・運行・荷主があれば、それぞれの項目ごとに1日単位、一運行単位まで深掘りしていき、どのような原因で問題が発生しているのかを特定します。

対策3

対応策の施策、実行、確認、改善(PDCA)

PDCA

PLAN

具体的な対応策を検討、計画します。(個別な対応策は後述)
まず目標を定め、それを実現するための手法や評価方法などを決定します。
5W1Hを明確に、かつ現実的な目標設定にします。

DO

計画を実行します。
事後のプロセスの指標となるため、実行している際のデータはしっかりと収集しましょう。

CHECK

実行した計画を振り返り、評価を行います。
可能な限り数値を用いて評価を行いましょう。

ACTION

検証結果を振り返り、今後のさらなる改善策を検討します。
改善策を決定したら、再度PLANのフェーズへ戻り、同じサイクルを繰り返していきます。

具体的な対応策について

荷待ち時間・荷役時間の削減

パレットの活用

手積み、手卸しなどの荷役作業でドライバーの拘束時間が延び、また肉体的負担が増えてしまっている場合には、荷主や積卸先に理解を求め、協力をお願いしパレット輸送などを効率的に導入できるようにしましょう。

荷役を手積手卸からパレット輸送に変更することで、荷役時間の短縮によるリードタイムの削減、1台当たりの運送回転回数の増加、場合によっては荷役料名目での運賃値下げの可能性など、荷主側にも利益が生まれる点を伝え、荷主側に理解を求めていくのも効果的です。

荷待ち時間の短縮

現在、30分以上の待機時間が発生する場合は日報への記載必須項目となっていますので、
しっかりとドライバーに記録するよう指導し、管理者側でも集計をとれる体制を整えましょう。

荷待ちに擁している時間や、積卸先での現場状況などを取りまとめて、荷主、積卸先と交渉を重ね、オペレーションの改善などを通じてドライバーの拘束時間削減に協力を依頼していくことが必要です。

トラック予約システムの導入・活用

上述の荷待ち時間削減対策の一つとして、トラック予約システムの導入も効果的です。
荷主側としても、効率的な積卸先の車両管理が行える点などを説明した上で導入を依頼していくのも効果的です。

荷待ち時間の削減

拘束時間や残業時間が多くなってしまっているドライバー、荷主、運行内容を確認していくと積卸先での待機時間が多く発生している場合があります。
上記のようなトラック予約システムの導入などを通じて改善する方法やドライバーからヒアリングを行い、積卸地や荷主を巻き込んだオペレーション改善等を通じ、荷待ち時間の削減、ひいては拘束時間と残業時間の削減につなげましょう。

中継輸送の検討

日々の拘束時間業減が少なくなるということは、単純に1日あたりで運行できる距離が短くなるということです。
1泊2日で対応できていた運行が2泊3日かかるようになってしまったりすると、トータルで見た場合のドライバーの拘束時間や出勤日数の増加や、運行可能本数の減少などによる売上、利益減につながりかねません。

打開策として、徐々に浸透し始めているのが中継輸送です。
1つの運行を車両1台、ドライバー1人だけで運行するのではなく、中間地点に近い営業所やサービスエリア等で搭乗ドライバーを後退させたり、シャーシを入れ替えて運行をさせることで、限られた時間内で効率的な配送を行うことができます。

車両の乗り換えを嫌がるドライバーが多いことや運行管理が煩雑になりがちなので忌避される運用ではありますが、将来を見据えすでに運用を始めている運送会社も増えてきています。

高速道路の有効活用

一般道と高速道路を利用した場合の終業時間、残業時間、拘束時間と有料代金や燃料代の多寡を比較検討し、最適な運行ルートや方法で配車割を行う必要があります。

終わりに

ひとくちに「2024年問題」といっても、それぞれの運送会社ごとで抱えている事情や対応策はバラバラです。
まず必要となるのは自社の現状を細かく知ることや各種の上限が厳しくなることによって、どのような影響をどの程度受けるのかしっかり把握することです。
そうした課題をしっかりと把握したうえで、必要な改善策をとっていけるようにしましょう。

【車検証IC化】新たな車検証の特徴と車両データの適切な管理方法

要約

・2023年1月から、ICチップを内蔵した電子車検証に変更されました。

・車検証有効期限や所有者・使用者情報は印字されず、ICカードを読み取ってアプリ上で表示されます。

・記載がなくなった項目を正確に把握できるよう、管理体制を変更しましょう。

概説

2023年1月の発行分より、車検証の電子化が進められています。

国土交通省によると、自動車ユーザーや自動車関係の事業者のさらなる利便性向上のため、 自動車登録手続きのデジタル化進めています。

例えば、現在は車検証の交付を受けるためには運輸支局等への出頭が必要ですが、 車検証を電子化し、整備事業者等の事業所等において車検証の有効期間を更新する仕組みを新たに導入することで、 車検時の運輸支局等への出頭を不要とする制度とシステムが導入されます。

国土交通省車 電子車検証特設サイト

内容

サイズの変更

従来のA4サイズから、電子車検証はA6サイズ相当の厚紙にICタグを貼付したものになります。 自動車検査証

国土交通省車 電子車検証特設サイト

記載情報の変更

電子車検証では、変更登録等による記載事項の変更を伴わない基礎的情報のみの記載となります。

その他の車検証情報はICタグに格納されます。ICタグに格納された情報は、 汎用のICカードリーダや読み取り機能付きスマートフォンで参照可能です。

二次元コードは券面に印字しますが、従来二次元コードから取得可能であった情報のうち、 「自動車検査証の有効期間」のみ確認することはできません。 ※車検証閲覧アプリの読み込みに二次元コードを使うことは出来ません。(ICタグを読み取る必要があります。)

券面記載情報・ICタグ格納情報

■ 以下の情報は車検証(紙面)に記載されています。

  • 自動車登録番号/車両番号
  • 車台番号
  • 交付年月日
  • 使用者の氏名又は名称
  • 車名・型式
  • 型式
  • 自動車の種別
  • 長さ/幅/高さ
  • 車体の形状
  • 原動機の型式
  • 燃料の種類式
  • 総排気量又は定格出力
  • 自家用・事業用の別
  • 用途
  • 乗車定員/最大積載量
  • 車両重量/車両総重量
  • 軸重(前前・前後・後前・後後)
  • 初度登録年月/初度検査年月
  • 車両識別符号(車両ID)

※車両ごとに不変の番号として電子化に伴い付与

■ <券面非表示事項(ICタグのみ)>

以下の情報は紙面には印字されません。ICタグを読み取ってのシステム上での表示のみとなります。

  • 自動車検査証の有効期間
  • 所有者の氏名
  • 住所
  • 帳票タイプ
  • 使用者の住所
  • 使用の本拠の位置

問題点

従来は紙面から簡単に確認できた情報がアプリを介してしか確認できなくなるため、 確認・管理作業にひと手間が発生する場合があります。

特に、有効期間がアプリ上からの確認のみとなってしまっているため、 車検・点検漏れが発生しないよう別途手書きで書き込む、リスト上で管理するなど、処理漏れを発生させないための対策が必要です。

また、従来の車検証とはサイズが異なってしまうため、 保管にあたってはファイルを分けるなどの細かな手間が発生する場合があります。

対策

車両データの管理

IC車検証では、車両の所有者情報に加え、 次回車検実施期限となる有効期限の確認も紙面からはとれません。

そのため、車検証のコピーを一覧保存しているだけでは車検期限をすぐに確認することができずに、 最悪の場合は期限切れとなってしまう場合もありえます。

車両更新、車検証発行後の段階ですぐに期限やその他の情報をすぐに確認できるよう、 車検証コピーに手書きで記入する、別なリストを作って期限管理するなどの対策が必要となります。

終わりに

・トラッカーズマネージャーの車両管理プランなら、

→車台番号など、いくつかの項目を入力するだけで、その他の情報も自動でデータ取得、参照し登録できます。

→車検・点検のアラート機能により、車両の点検整備実施漏れを防げます。

【2024年改正】電子帳簿保存法:運送業の請求書管理に必要な知識と対応策

概説

・2022年1月より、改正された電子帳簿保存法が施行され、従来は紙で保存しなければならなかった帳簿書類について一定の条件下でスキャン文書等の電子データによる保存が認められるようになりました。
・他方、従来は紙ベースでの保存が可能であった電子メールを介したPDF書類に関しても、より厳格な電子データでの保存が必要になります。
・2023年現在は「宥恕期間」として、いわば対応が難しい企業は事情を斟酌してくれている期間ですが、2024年1月からは対応が必須となります。

内容

改正内容

原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について、
一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とし、
及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を国税庁が定めています。

保存方法

電子帳簿等保存

電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存する方法。自社で作成した帳簿・書類の控えも含まれる。

スキャナ保存

紙で受領した書類を画像データ化して保存する方法。相手から受領した取引関係書類の保存も含まれる。

電子取引

電子的に受領した取引情報をデータ保存する方法。相手から受領した取引関係書類の保存も含まれる。
(EDI取引、インターネット取引、電子メール取引 等)

※電子取引データは保存要件が厳格化し、
書類を電子データで受け取った場合、データで保存することが義務となりました。
➡ PDFの請求書をメールで受け取った場合は、
紙での出力・保存は不可となり、電子データとして所定要件での保存が義務となります。

必要要件

真実性

以下のいずれかを満たす必要があります。
① タイムスタンプの付与
② 訂正・削除ができないシステムの構築
③ 事務処理規定の策定(訂正や削除についての社内ルール決め)

可視性

取引日・取引先・取引金額などの条件を指定し、
すぐに対象のデータを検索できるようにすることが求められます。

具体的には、以下を満たしている必要があります。
・PCやシステム、プログラム等を設置し、速やかに画面や書類等に出力できるようにすること
・システムの概要書(マニュアル)を備えること
・指定された検索条件(上記)での検索機能を確保すること

国税庁 「電子帳簿保存法が改正されました」

問題点

・前述の通り、従来は出力してまとめておけばよかった類の帳票も、今後は電子データとして保存しておく必要が発生します。

・タイムスタンプ
要件を満たすタイムスタンプを付与する場合は、
時刻認証業務認定事業者(TSA)のサービスや対応したシステムを利用する必要があります。
1件あたり約数十円かかる場合もあり、必要書類にすべてに付与すると大幅なコスト増となります。

※必ずしもシステムを導入しなければ対応できない内容ではないですが、
そのためには、より一層のミスを防ぐための社内ルールの策定と厳格な運用が求められます。

対策1

社内規定の改定・策定と厳格な運用
まずは、対象となる社員全般に制度についての理解させることが重要です。
自身の業務内に対応が必要な部分があるのか、取引先への周知や依頼が必要になるのかなど、
社内での必要情報を確認しましょう。

また、タイムスタンプ付与のタイミングや担当者などを決めるとともに、
書類に関する取扱い規定を旧来の紙ベースの保管に準じたものから改定するなど、
制度を運用する上で必要な措置を行いましょう。

対策2

対応したシステム・サービスを導入する
上記のルールなどの策定とあわせて、
現在使用しているシステムなどを電子帳簿保存法に対応したものへ変更する必要があります。

請求業務を電子化している場合などは、
必要な要件が定められていますので、対応したシステムを導入、
または既存システムの改修が必要となります。

加えて、多くの運送会社で商習慣として定着している
作成した請求書をメールで相手方に送る」という行為も、
今回の電子帳簿保存法改正により、保存対象となります。

以前は印刷して紙ベースでの保管で問題ありませんでしたが、
今後は、タイムスタンプを付与したうえで、適切にデータとして保管しておく必要があります。

終わりに

上記にように、多くの運送会社では請求書のやり取りをメールで介して行っている会社が多く見受けられます。
宥恕期間が終わるまでの間に、社内の体制をしっかりと整備しておきましょう。

【ドライバーの働き方改革】2024年からの残業時間制限とは?

要約

・ドライバーの残業時間が、24年4月から月平均80時間以内、年間960時間以内に制限されます。
・労働させられる時間が少なくなる分、運行距離や本数が少なくなってしまう場合もあります。
・労働実態や時間の把握 → 時間削減策の検討 → 実行を通じ、24年4月以降も適正な労働時間を守ったうえで、適正な運行を行えるようにしましょう。

概説

労働基準法第36条で定められている通り、労働者の労働時間は1日8時間、週40時間までに制限されています。
また、法律に定められた休日を週に1日以上与えなければなりません。

上記の時間を超える労働に従事させる場合は、労働基準法第36条に規定のある通り、事前に労使間において、使用者と労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者との間でいわゆる「36協定」を締結し、残業に関する取り決めと労働基準監督署への提出が義務付けられています。

2018年6月に働き方改革関連法が成立し、改正労働基準法が2019年4月から大企業に、2020年4月からは中小企業に施行されました。
時間外労働の上限は原則として、下記のように制限されました。
・⽉45時間・年360時間
・36協定締結後の時間外労働は年720時間以内
・時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
・時間外労働と休⽇労働の合計について「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」が全てひと月当たり80時間以内
・時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは年6ヵ月が限度

運送会社のドライバー等に関しては一定期間の猶予が与えられていましたが、
大企業2020年~、中小企業2023年~で既に適用が始められています。
※ ドライバー以外の事務職員などはこの制度が適用されるため、 協定内容や勤務実態が上記に反している場合は早急に是正が必要となります。

内容

自動車の運転職の時間外労働については、2024年4月以降、以下となります。

時間外労働は年960時間(休日労働含まない)
月平均80時間(休日労働を含まない)
・将来的には、一般中小企業と同じ規定の適用を目指す
・運行管理者、事務職、整備・技能職、倉庫作業職等(ドライバー以外)は通常の時間外労働の上限(最大720時間)と同じ規定に従う

問題点

運転職、事務職とも、残業時間上限が少なく設定されたことにより、一人当たりの社員がこなすことができる仕事量が以前よりも制限されるようになります。

結果として、従来通りの業務の割り振りを続けてしまうと、
最悪の場合、配車担当や事務員が行っている膨大・煩雑な事務作業は時間外業務でカバーしきれず、
運転手に関しては、運ぶことができる荷物の量や距離が従来よりも減ってしまいます。

対策1

【36協定の締結】
法定時間外の労働はそもそも、36協定を結んではじめて行わせることができます。
36協定を締結していなかったり、締結していても内容に違反したりすると
労基法違反で、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

万が一、労使間で36協定を締結していない場合は早急に締結の上、所管の労働基準監督署まで届け出を行いましょう。

対策2

【労働時間の可視化】
残業時間を法律の上限内に抑えるためには、まず正確な労働時間と残業時間の詳細な把握が不可欠です。

ある程度の業務量や内容、勤務実態を実際で目で見て監督できる事務員とは違い、
ドライバーの業務の詳細の把握や残業時間の発生事由の把握は通常の手段では困難です。

まずは、ドライバー個々について、それぞれの業務・運行内容ごとの拘束時間、労働時間、作業時間、待機時間、運転時間、休憩・休息時間、残業時間等を正確に把握しましょう。

それぞれの運行内容について、運転時間そのものですが、どれだけの待機時間や積卸時間が発生してしまっているかの詳細を勤怠ソフトや時間管理のシステム、デジタコなどの新規導入も含め、現状どこをどう対策すればいいのかを明確に把握できるようにすることからはじめましょう。

対策3

【残業時間の抑制の実行】
残業時間を含む、労働時間増加の要因を絞り込めたのなら、それらを解消するための施策を実行していきましょう。

具体的には・・・、

・配車担当レベルでシステムの導入やオペレーションの改善を実行し、 残業時間を抑制できるような配車計画を組めるような体制を整える。
・ドライバーに残業時間上限についての説明を行い、配車担当とのコミュニケーションを通じて協力をしてもらうことで、トータルでの運行本数や運行内容の減少を抑えられる点を理解させ、 会社の残業時間削減の施策に理解や協力を求める。
・待機時間が多く発生している積卸場・荷主に対しては交渉を行い、オペレーションの改善や予約システムの導入などを通じ、労働時間を抑制できるように協力を依頼する。
・積卸作業の時間が多くなってしまう運行に対しては、パレット輸送などを含めた効率的な作業に対する理解を促し、協力を依頼する。
・自社内、他社間を含む中継輸送を導入し、 ドライバー1人当たりの労働時間を抑制する。

終わりに

まだ手を付けていないのであれば、ドライバーの残業時間を削減することを通じて相対的に利益を増やすことは可能です。
まずは現在の終業時間・拘束時間・残業時間を正確に把握して改善点を見つけていきましょう。