ドリー式フルトレーラーは前方に台車が備わっていることが特徴の牽引車です。連結箇所が複数あるため、他の自動車と比べて運転の難易度が高い車です。今回はドリー式フルトレーラーの仕組みやメリット、乗りこなすコツを解説します。
目次
ドリー式フルトレーラーとセンターアクスル式の違い
フルトレーラーは車軸の位置によって、ドリー式とセンターアクスル式に分類できます。ドリー式は前方と後方に車軸が分かれているのに対し、センターアクスル式は車軸が中央に集まっている点が特徴といえるでしょう。 タイヤの位置が異なるため、車体を横から眺めればそのフルトレーラーがどちらの方式なのか、即座に判断可能です。ここではドリー式とセンターアクスル式の違いを解説します。
ドリー式|前方に台車がついている
ドリー式は車両前方のトラクターに前輪台車(ドリー)が付いているのが特徴です。ドリーはトラクターに固定されているタイプと、切り離し可能な種類に分かれます。 また、ドリーの取り付け部分はターンテーブル式になっており、車両の回転に合わせて車軸も旋回するのが特徴です。ターンテーブルのおかげでトラクターとドリーの接続がスムーズになり、ハンドルの動きに車体がしっかりとついてきてくれます。
センターアクスル式|車軸が中央に集められている
センターアクスル式フルトレーラーはその名の通り、中央に車軸が集まった構造の車両です。ドリー式のようなターンテーブルを持っておらず、間に回転軸が存在しません。 トラクターとトレーラーに生まれる隙間が小さくなるため、かつ連結箇所が一つしかないので、ドリー式と比べて運転しやすいと考えられています。コントロールに適している反面、曲がるときの遠心力が大きくなりがちです。
ドリー式フルトレーラーの特徴4つ
ドリー式フルトレーラーは次の4つの特徴を持っています。 ルネットアイでドリーを連結して接続する ドリー分離式と非分離式に分かれる 連結部分が複数あるため運転が難しい 荷重が均等にかかるためタイヤへの負荷を抑えやすい 特に運転難易度の高さには注意が必要です。連結部分が複数あるため車体が蛇行しやすく、通常のトラックの運転に慣れている人ほど操作に戸惑うかもしれません。ここでは4つの特徴について1つずつ深掘りしていきます。
ルネットアイでドリーを連結する
ドリー式フルトレーラーは、ドリーの先端に付いた連結器ルネットアイとトラクターの連結器ピントルフックをつなげて連結します。また、万が一器具が外れても事故につながらないように、セーフティーチェーンもつなぎましょう。 ドリーと後方のトレーラーをつなぐ際に用いるのがキングピンです。キングピンはセミトレーラーとの連結にも使われます。
分離式と非分離式に分かれる
ドリー式フルトレーラーはドリーを取り外せるかどうかによって、分離式と非分離式に分かれます。取り外しができる分離式の場合、連結できる牽引車両の種類が豊富です。 このため、分離式のほうが使い勝手はよく、活躍の場も多いといえるでしょう。具体例としては、セミトレーラーとの付け替えが挙げられます。 セミトレーラーはフルトレーラーに比べて全長が短くなりやすい分、小回りが利き、扱いやすいです。例えば物流拠点間の貨物運搬時はフルトレーラーとして利用し、本店から支店など距離の短い移動ではセミトレーラーに付け替えると運転のストレスを減らせるでしょう。 非分離式はドリーも含めて常に4つの車輪が地面についているため、補助輪が存在しないのも特徴です。
連結部分が複数あるため運転が難しい
ドリー式フルトレーラーはトラクターとドリーの接続部、及びドリーとトレーラーの接続部、2つの連結箇所があるため、運転が難しくなります。ドリー式は全長が長く運転に気を遣うフルトレーラーの中でも特に操作が難しいといわれています。 連結部分を支点に一定の自由度をもって動くため、右左折時には車体が蛇行してしまいます。通常の車両と比べて、カーブの操作には慎重にならなくてはなりません。また、ドリー式フルトレーラーはバックや車庫入れの際も複雑な動きをするので注意が必要です。 運転の難易度を下げるには、ドリーのターンテーブルの固定化が有効です。挙動が複雑になるのは連結部が複数あるのが原因なので、運転を楽にするには連結箇所を1つにすればよいでしょう。回転テーブルの固定化によって、ドリーの動きを制御しやすくなり、トレーラーが必要以上に折れ曲がるリスクを減らせます。
荷重が均等にかかりタイヤへの負荷を抑えやすい
ドリー式フルトレーラーは車軸が前方と後方に分かれているため、貨物の荷重が全てのタイヤに分散されます。タイヤにかかる負荷を軽減できるほか、上から下への垂直荷重の影響を和らげられるため、多くの重量にも耐えられます。
ドリー式フルトレーラーの2つのメリット
ドリー式フルトレーラーを導入する主なメリットは、大量輸送の効率化と輸送コストの削減です。一度に大量の貨物を運搬できるため、輸送のコストパフォーマンスを高められます。 燃料費を抑えられるだけでなく、ドライバーの数を増やす必要性が薄れるため、人件費の削減にもつながるでしょう。ここでは、ドリー式フルトレーラーを導入する2つのメリットを深掘りしていきます
大量輸送時の作業効率化が期待できる
フルトレーラーを活用すれば、運搬トラックの台数やドライバーの人数確保が難しくても、大量輸送が可能です。特にドライバー不足が問題になっている昨今、フルトレーラーが切り札になり得ます。 フルトレーラーは2019年に全長規制が緩和され、最長25mのダブル連結トラックの稼動が認められました。ダブル連結トラックは1台で10トントラック2台分の貨物を運搬できるため、大量輸送時には頼れる存在です。 また、車両の効率的な活用は環境負荷を低減する効果もあります。地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出が抑えられるためです。このようにフルトレーラーの活用は単なる運搬作業の効率化にとどまりません。
輸送に要するコスト削減が狙える
稼動する運搬車両の台数を減らせるため、人件費や燃料費、車両購入費などを節約できます。フルトレーラーは物流拠点同士の移動のみならず、中継地点を経由する中継輸送にも利用できます。 港でトレーラーを切り離して海上輸送と併用することで、さらなる輸送コストの削減が可能です。フルトレーラーの導入コストは小さくないとはいえ、トラックを複数台保有するよりは維持費を抑えやすいでしょう。
ドリー式フルトレーラーの運転が特に難しい3つの理由
ドリー式フルトレーラーは運転の難易度が高いといわれており、その主な理由は次の3つです。 連結部が90度以上曲がるジャックナイフ現象が起きる 車体が蛇行するスネーキング運動が起きる バック時の操作が通常の車両とは異なる ジャックナイフ現象やスネーキング運動は事故に直結するため、特に注意が必要です。これらの減少の原因や対応法及び、バック時の挙動の特徴について解説します。
連結部が90度以上曲がるジャックナイフ現象が起きる
ジャックナイフ現象は急ブレーキや急ハンドルをきっかけに、トレーラーとの連結部分がくの字に折れ曲がってしまう現象です。折れ曲がった形がジャックナイフの形に似ていることから名づけられました。 ジャックナイフ現象に見舞われると操縦不能に陥る場合も多く、重大な事故を引き起こす要因にもなります。立ち直るためには一度車体をまっすぐに修正しなくてはならないため、高い運転技術が必要です。 ジャックナイフ現象が起きた状態は死角も増えていることもあり、事故のリスクが大きくなるのが怖いところでしょう。
車体が蛇行するスネーキング運動が起きる
車体の長さが原因で蛇のように蛇行するスネーキング運動が起きる危険もあります。スネーキング現象の原因はスピードの出しすぎや不適切な重量バランス、横風や追い越し時の風圧、不安定な運転、タイヤ空気圧の問題など多種多様です。 もしトレーラーの運転中に車体が不安定になり揺れを感じ始めたら、アクセルから足を離してスピードを落としましょう。道路が広く周囲に危険がない状況なら、直線走行を続けながらエンジンブレーキをかければ揺れを抑えられます。 道路が狭く周囲と衝突する危険がある場合、ゆっくりと踏んだり離したりしながら慎重にブレーキ操作を行うと、ゆれが収まる可能性が高いです。絶対にブレーキを強く踏んではいけません。力の逃げ場が無くなり、車体が横にずれてジャックナイフ現象が起きる可能性があるためです。
バック時の操作が通常の車両とは異なる
通常の車両ではバック時にハンドルを逆に切るのに対し、ドリー式フルトレーラーは同じ方向にハンドルを動かします。連結部分が2箇所あるため、うねりが生まれるからです。 連結箇所が1つしかないセンターアクスル式フルトレーラーやセミトレーラーとも異なる、ドリー式フルトレーラー固有の特徴です。このため、セミトレーラーの運転経験が長い人ほど、ドリー式フルトレーラーのバック時に戸惑う可能性が高いでしょう。
ドリー式フルトレーラーを乗りこなすための3つのコツ
連結箇所が複数あるため操作が難しく、ジャックナイフ現象やスネーキング運動など危険な事象に見舞われるリスクもあるドリー式フルトレーラー。乗りこなすためには、次に紹介する3つのコツを意識しましょう。 バック時はハンドル操作で小刻みに修正を加える 模型を使って車両の動きをシミュレーションしておく 広い安全な場所で車庫入れの練習をしておく ドリー式フルトレーラーは後方部の確認が難しく、予期せぬ動きをする可能性もあるバックや車庫入れが鬼門です。運転技術を上達させるには人通りのない広い場所で練習をするほか、模型を使ったシミュレーションも有効です。ここでは紹介した3つのコツの具体的な内容を解説します。
バック時はハンドル操作で小刻みに修正を加える
ドリー式フルトレーラーでバックを行う際は、ハンドル操作で小刻みに修正を加えていく必要があります。車体が長いために直進バックを行っているつもりでも、後方部が徐々にずれていくためです。 まず目視をしっかりと行い、後方部が右に振れ始めたらハンドルを右にきり、逆に左に傾いているなら左に動かすという具合に、細やかな調整が必要です。
模型を使って車両の動きをシミュレーションしておく
フルトレーラーの運転を上達させるには模型を使ったシミュレーションも有効です。大きさは違えども物の動かし方は一緒なので、曲がったときの軌跡や追従の動きを把握できます。 模型でシミュレーションを行えば、ドリー式フルトレーラーの運転で特に難しいバックや車庫入れの感覚も掴むことが可能です。紙や段ボールなどで簡易的な車庫を用意し、トレーラーの模型を手で動かし、ハンドルの切るタイミングや曲がり方を練習できます。 実技では練習場所がなかなか準備できない可能性もあるため、在宅で運転技術の上達が見込める模型によるシミュレーションがおすすめです。
広い安全な場所で車庫入れの練習をしておく
大きくて長いフルトレーラーで車庫入れの練習をしたければ、広くて人通りが少ない場所を選択する必要があります。例えば、運送会社の空いている駐車スペースや自動車教習所の敷地などが考えられるでしょう。 大変危険なので、バックや右左折など車庫入れとは異なる練習であっても、公道を活用するのは避けてください。フルトレーラーの車庫入れで最初に行うべき動作は、周囲の安全確認です。人が出入りする可能性はないか、近くに障害物は存在しないかなど入念に確認を行いましょう。
ドリー式フルトレーラーは台車が前方に設置された牽引車
ドリー式フルトレーラーはドリーと呼ばれる前輪台車を使って、トラクターとトレーラーをつなげた牽引車両です。トラクターとドリーの取り付け部分はターンテーブル式になっており、ハンドルを切って車体を回転させるとドリーに設置された前輪も旋回します。 また連結箇所が2つあるため、ハンドル操作で車体の動きを制御しにくく、運転が難しいことも特徴です。車両が長く大きいため、特にバックや車庫入れの難易度が高いです。 事故を起こさないためには、公道に出る前に運転の練習や模型によるシミュレーションを通じて、動き方をある程度把握しておくのが必要です。