10トントラックの燃費は、走行環境や運転方法の違いによって大きく左右します。燃費は会社の経営にも影響する重要なポイントであり、できるかぎり向上させたいところでしょう。 そこで今回は、10トントラックにおける走行シーン別の燃費目安や燃費向上の方法などを解説します。
目次
10トントラックにおける走行シーン別の燃費目安
10トントラックは、状況に応じて燃費が大きく異なります。燃費を向上させる方法を知る前に、まずは次の3つのシーンに分けて燃費目安について紹介しましょう。
- 空車時
- 実車時
- 高速道路
基本的には、乗用車と比較すると燃費は大きく低下し、車種などの違いによっても変化や誤差があります。おおよその燃費目安を把握するためにも、シーンごとに確認してみましょう。
空車時の走行
荷台に何も積んでいない状態を「空車」と呼びます。メーカーやグレードによって多少増減するものの、空車時の燃費はリッターあたり「約5km」が目安です。 10トントラックの燃料タンクは「約200〜400L」の給油が可能です。よって、空車時には一度の満タン給油で「約1,000〜2,000km」を走行できる計算となります。
実車時の走行
荷台に荷物を積載している状態を「実車」と呼びます。大型トラックに荷物を積んだ実車時の燃費は、リッターあたり「約3.5km」です。空車と実車で比較すると「74%程度」燃費が悪くなります。 もちろん、積載物の総重量によって燃費は大きく変わるため、目安となる数値として捉えておきましょう。
高速道路の走行
大型トラックも一般の乗用車と同様に、高速道路を走行すると燃費が向上します。一般道では信号の度に止まったり走ったりを繰り返すため、アクセルのオンオフの回数が増えて燃費が悪くなるのです。 一方、高速道路を走行する際は、アクセルの開度を一定に保つことでスピードも同じ速度を維持しやすくなります。そのため、高速道路の平均燃費はやや向上し、リッターあたり「約4.0km」が目安です。
10トントラックの燃費に関係する2つの要素
10トントラックの燃費に関係するのは「運転技術」と「車両の整備状態」の2つの要素です。日頃から丁寧な運転を心がけ、定期的に整備を実施することで燃費向上を目指せます。 ここでは、10トントラックの燃費に関係する各要素について、それぞれの内容を詳しく解説しますので、ぜひ燃費向上の参考にしてみてください。
運転技術
ドライバーの運転技術によって燃費は大きく変わります。例えば、一般道を走行する際は早めのシフトアップを心がけ、回転数をなるべく低く抑えて走行すると燃費は向上するでしょう。 また、高速道路では一定の速度に保つことが重要です。
長く続くような下り坂では、エンジンブレーキや排気ブレーキを活用してスピード調節すると燃費がよくなります。 さらに、スピードを出し過ぎないように意識するだけでも燃費は向上し、安全運転にもつながるでしょう。
車両の整備状態
10トントラック自体の整備状態も燃費に大きく影響を与えます。例えば、タイヤの空気圧が適正でなければ、燃費は低下します。このほかにも、エンジンオイルを交換しないままに走行していれば、燃費の悪化は避けられません。
長距離走行や重量物の積載など、過酷な環境で使用する10トントラックは、定期的な整備が欠かせない車両です。日常の乗車前点検や点検整備によって、燃費向上につなげましょう。
【運転技術】燃費を向上させる4つの方法
ここまで、10トントラックの平均的な燃費や関係する要素を確認しました。10トントラックの燃費を向上させる具体的な方法は次の4つです。
- 安全運転を心がける
- グリーンゾーンでのシフトアップを意識する
- 長時間のアイドリングを避ける
- エンジンブレーキや排気ブレーキを利用する
ここでは、それぞれの方法ごとの詳しい内容について解説します。
安全運転を心がける
燃費を向上させるには、安全運転を心がける必要があります。特に「急」が付く動作である「急発進」「急加速」「急ハンドル」はできるだけ避けましょう。また、スピードの出し過ぎも燃費悪化につながるため注意が必要です。 ほかにも、アイドリングを控えたり、定速走行を心がけたりと基本的な走行マナーを忠実に守ることが燃費向上につながります。乗車時には「安全運転を心がけると燃費がよくなる」ことを意識することが重要です。
グリーンゾーンでのシフトアップを意識する
乗車時はグリーンゾーンでのシフトアップを意識することによっても、燃費向上につながるでしょう。速度計の横にある回転数を表示するための「タコメーター」には赤と緑の枠があり、それぞれ「レッドゾーン」と「グリーンゾーン」と呼ばれています。 大型トラックのタコメーターは、回転数表示にグリーンゾーンを被せることでシフトアップのタイミングが視覚的に分かるようになっている点が特徴です。グリーンゾーンでのシフトアップは適切な回転数の維持につながり、結果として燃費の向上につながるでしょう。
また、トラックに多く採用されているディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンのように高回転によって馬力やトルクを得る構造ではありません。ガソリンエンジンほどの回転数を上げなくても、十分な馬力やトルクを得られます。 早めのシフトアップを心がけることで、ディーゼルエンジンの最適な使用にもつながるのです。
長時間のアイドリングを避ける
長時間のアイドリングは避けましょう。アイドリングは燃費を低下させる大きな原因です。 トラックの配送業務は長時間になることも多く、休憩や仮眠によってアイドリングのまま停車させる時間も増えます。 燃費を向上させるためには、車内の室温など快適に保てるようなアイテムを活用し、可能な限り長時間のアイドリングを減らす工夫をしましょう。
エンジンブレーキや排気ブレーキを利用する
エンジンブレーキや排気ブレーキを利用せず急停車すると燃費の低下につながるだけでなく、積載物にも無用な衝撃を与えます。 減速の際はアクセルペダルから足を離し、エンジンブレーキによって徐々に減速して、最後にブレーキを使うことで燃費の向上を期待できるでしょう。
また、排気管内のバルブが閉じて、排気ガスの流れを悪くする排気ブレーキの使用も燃費を向上します。 特に、フットブレーキを多用しなければならない下り坂や高速道路などでは、エンジンブレーキや排気ブレーキを積極的に使用してみてください。
【車両の整備状態】燃費を向上させる4つの方法
燃費を向上させるには、運転技術の向上に併せて日々の車両整備が欠かせません。ここでは、燃費を向上させる方法として次の4つを紹介します。
- 定期的にエンジンオイルを交換する
- タイヤの空気圧を適正化する
- エアクリーナーを清掃する
- 低燃費タイヤに交換する
乗車前の点検や定期的なメンテナンスなどの参考にもしてみてください。
定期的にエンジンオイルを交換する
定期的なエンジンオイルの交換は、燃費向上に直結します。エンジン内部はさまざまな部品が動くことで常に摩擦が生じており、エンジンオイルを交換していないと摩擦によるダメージが大きくなります。 しかし、エンジンオイルを定期的に交換することで粘度の低いオイルが循環し、劣化を軽減することが可能です。
また、定期的なエンジンオイル交換はエンジンの冷却力や密閉力を高めるだけでなく内部の洗浄にも繋がり、エンジンを最適な状態で維持できます。 10トントラックのエンジンオイル交換は「1年」、もしくは「20,000km」のいずれか早いほうを目安としましょう。
タイヤの空気圧を適正化する
燃費向上には定期的な空気圧のチェックと適正化が欠かせません。トラックの大きさによって適正な空気圧は変化しますが、10トントラックの目安としては「8.5kg/cm²〜10.0kg/cm²」です。 空気圧が適正でないとタイヤの接地面積が大きくなり、負荷が増加して燃費を悪化させます。
また、燃費以外にも「タイヤにヨレが生じる」「ハンドルの操作性が下がる」「高速走行時に劣化が進みやすくなる」といった事態を引き起こしかねません。 ただし、適正値以上に空気圧を高くし過ぎると乗り心地が悪くなったり、積載物へ衝撃が伝わりやすくなったりするため注意が必要です。
エアクリーナーを清掃する
定期的なエアクリーナーの清掃も燃費向上につながります。エンジン内部で燃料を燃やすために必要な空気内の異物を取り除くためにエアクリーナーが取り付けられています。 エアフィルターに目詰まりが生じると空気をエンジンに送り込めず、より多くの燃料を消費するのです。
燃費が悪いと感じた場合は、エアクリーナーの汚れや目詰まりを確認してみてください。 エアクリーナーの清掃は、エアコンプレッサーなどで砂や塵などを飛ばせば完了します。ただし、清掃しても綺麗にならない場合は交換時期かもしれません。交換頻度の目安は「約4万km」です。
低燃費タイヤに交換する
低燃費タイヤへの交換も有効な手段の1つです。一般的な自動車では普及している低燃費タイヤは、大型トラック向けのラインナップも増えつつあります。 低燃費タイヤは主な素材となる「天然ゴム」と「カーボン」の結合性を高め、余分な発熱を低減するため転がり性能が向上し燃費が良くなります。大手メーカーが販売している低燃費タイヤの例を挙げると、ブリヂストンの「エコピア」シリーズやダンロップの「エナセーブ」などが有名です。
燃費性能を高めることは可能!
10トントラックの燃費はリッターあたり「約3.5〜5km」と一般的な自動車と比べて低い傾向にあります。燃費の向上を実現するためには、運転技術の向上や定期的な整備が欠かせません。 運転技術であれば「グリーンゾーンでのシフトアップ」や「エンジンブレーキや排気ブレーキの利用」などが効果的です。
一方、整備面では「定期的なエンジンオイルの交換」や「タイヤの空気圧を適正化」などが挙げられます。今回紹介した内容を参考に、ぜひ燃費性能の向上につなげてみてください。