クレーン免許を取得することで仕事の幅が広がり、収入アップを狙えます。しかし、クレーン免許という特殊な資格は、取得が難しいのではないかと心配になりますよね。本記事では、クレーン免許の取得は難しいのか、難易度や合格率とあわせて解説します。
目次
クレーン・デリック運転士免許は3種類
クレーンを操縦できれば、今より多くの現場で活躍できることでしょう。しかし、クレーンは誰でも操縦できる重機ではありません。クレーンを扱うにあたっては、専門の運転士免許の取得が必要です。また、ひと言で「クレーン免許」といってもその種類は3つあり、それぞれ扱える車両が異なります。
限定なしの免許
クレーン免許のなかでも、全てのクレーンやデリックを扱えるものが「限定なし」とされる免許です。そもそもクレーンとデリックは、それぞれ異なる重機です。クレーンは動力を用いて荷物を吊り上げる重機であることに対し、デリックは原動機を別に備え、ワイヤーを用いて荷物を引き上げる重機を指します。 限定なしとされている免許を取得した場合は、上記のどちらも操縦できます。
クレーン限定の免許
同じクレーン・デリック免許と呼ばれる資格であっても、クレーンのみしか使えない免許もあります。平成18年の法改正によって誕生した免許であり、従来の「旧クレーン免許」のみを保有していた人は、自動的に「クレーン限定免許」へ切り替わります。 もちろん、クレーンのみであっても、多くの現場で活躍できることに違いはありません。
床上運転式クレーン限定の免許
床上運転式クレーンに限った免許もあります。免許を取得することで、吊り上げる荷物は5t以上である「床上運転式クレーン」を操縦できます。 床上運転式クレーンとは、運転手は床上で重機を操縦しながら、クレーン走行とともに移動するクレーンのことを指します。車体とコントローラーが繋がった「ラジコン」のような仕組みをイメージするとわかりやすいでしょう。
クレーン運転士は難しい資格?
クレーン運転士免許を取得する難易度は、どのくらいなのでしょうか。また、免許取得にかかる費用や特別措置なども気になるところですよね。本章ではクレーン・デリック運転士免許について、試験内容や資格取得の費用や免除科目・特別措置の詳細を解説します。
試験内容
クレーン・デリック運転士免許を取得する方法は、クレーン教習所(または学校)に通うか、一発試験を受けるかのどちらかになります。前者の場合は、学科試験のみで免許を取得できます。学校に通う期間は7〜10日程度と短期間で終了するため、最も確実に免許が取得できる方法といわれています。以下で、学科試験と実技試験の内容について解説します。
学科試験
教習所(学校)に通う場合でも、一発試験で免許取得を目指す場合でも「学科試験」はクリアしなければなりません。学科試験で出題される科目は、以下の4つです。 クレーン(およびデリック)に関する知識 原動機(および電気)に関する知識 クレーン操縦に必要な力学に関する知識 関連法令 それぞれの科目で、10問ずつ出題されます。
実技試験
前述したように、一発試験で免許取得を目指す方は、実技試験もクリアしなければなりません。実技試験の内容は「クレーンの運転」と「運転に関する合図」です。 基本的なクレーンの操縦や、安全に関わる合図などをしっかりと身につけているか、実技試験でチェックされます。
資格取得にかかる費用
資格取得には相応の費用がかかります。そして、必要な費用は、後ほど紹介する免除資格の有無や受講の時間帯(昼間・夜間)によって異なります。詳しくは、以下の一覧を参考にしてください。
昼間 | 夜間 | |
免除科目がない場合 | 164,050円 | 193,750円 |
力学免除の場合 | 153,875円 | 182,695 |
すでに学科試験に合格している場合 | 112,325円 | 138,725円 |
免除科目・特別措置
クレーン・デリック運転士免許は、条件を満たしていることで、免除される科目がいくつかあります。次章では、その一例(クレーン・デリック運転士免許/限定なし)を解説します。 クレーン限定または、クレーン運転技術教習を終了している方は「実技試験」の全てが免除されます。また、床上運転式クレーンを用いたクレーン運転実技教習を修了した方は、実技試験における「運転の合図」が免除されます。 すでにクレーン限定などの「クレーン・デリック免許」を保有している方は、学科試験のうち「電動機及び電気に関する知識」と「力学」が免除されます。
クレーン免許の取得は難しい?
クレーン・デリック運転士免許を取得することは、どの程度難しいのでしょうか?また、特別な受験資格が定められているのかどうかも、これから受験を考えている方にとっては気になるところですよね。 本章では、クレーン・デリック運転士免許の受験資格や合格基準、難易度、過去試験の合格率を解説します。国家資格のなかでは、比較的取得しやすい免許なため、ぜひ前向きに検討してください。
受験資格と合格基準
クレーン・デリック運転士免許に、特別な受験資格はありません。本人確認証明書さえあれば、誰でも受験できます。 試験の合格基準は、学科試験と実技試験とで異なります。学科試験の場合は、全体の60%以上を正解し、さらに各科目で40%以上得点していることが、合格の基準となります。実技試験の場合では、減点の合計が40点以下であれば合格となります。
難易度や合格率
学科試験の合格率は、2013年は65.8%であり、2014年は65.6%となっています。そのため国家資格のなかでは、比較的取得しやすい免許といえます。 繰り返しになりますが、一発試験で且つ、免除条件を満たしていない方は、免許取得を目指すのであれば、実技試験も受験しなければなりません。実技試験の合格率の平均は48.8%と、学科試験よりもやや難易度が上がります。免許が必要ない5トン以下のクレーンを操縦するなどによって、実務経験を積んでいなければ、簡単には合格できません。
クレーン運転士とは
クレーン・デリック運転士免許については、おわかりいただけたでしょう。免許を取得することで、晴れて「クレーン運転士」として、現場で活躍できます。ではクレーン運転士になると、どのような職業に就けるのでしょうか。また年収や適正、転職市場における需要も気になりますよね。本章にてクレーン運転士とは、どんな仕事なのか解説していきます。
職業例と平均年収
クレーン運転士が活躍する現場は多岐に渡ります。建設現場がメインとなりますが、他にも工場内での作業をするケースもあります。クレーン運転士の平均年収は、男性が460万円前後、女性が450万円前後です。 一般的なサラリーマンの年収は、420万円が平均であることを鑑みると「高収入」とされる職業といえるでしょう。
向いている人の特徴
一見、肉体労働に感じるクレーン運転士ですが、実は繊細で細かな作業が多い仕事です。そのため、体力よりも精神力(集中力)などが求められます。逆にいえば、体力に自信がない方でも働ける仕事だといえるでしょう。ただし、高い安全管理能力が必要となります。 細かな作業も集中して取り組むことができ、安全確認を怠らない、いわゆる「慎重な人」に向いている職業といえます。
現在の需要は?
国家資格が必要なことからも、クレーン運転士の需要は高い傾向にあります。活躍できる現場が多くありながらも、専門的な知識や技術力が必要となることから、十分な人手を確保できているとはいえません。平均年収が上昇傾向にあることからも、需要の高い職業といえるでしょう。
将来性は?
需要が高まっていることから、クレーン運転士は、将来性も期待できます。また前述したとおり、体力よりも精神力が求められる職業であるため、年齢が上がっても働き続けることが可能です。専門知識が必要な分、定年まで安定した収入を得られる職業といえるでしょう。 また、年収の落差が少ないことも、クレーン運転士という仕事の特徴です。必要な知識や技術力を身につければ、誰でも一定の年収を確保できるでしょう。
技能講習が必要なクレーン資格
5トン未満のクレーンの場合は、国家資格がなくても、操縦できる重機もあります。しかし中には、操縦の際に特別な「技能講習」を受けなければならないクレーンがあります。 労働安全衛生法に沿った技能講習が必要なクレーンは「小型移動式クレーン」「床上操作式クレーン」「(1トン以上の)玉掛け」の3種です。2〜3万円の費用で受講できるため、クレーン・デリック運転士免許を取得するほどの時間や費用がないという方は、ぜひ検討してください。
クレーン免許は難しい資格ではない!
クレーン・デリック運転士免許について解説しました。5トン以上の荷物を吊るすクレーン(デリック)を操縦する場合は「限定なし」「クレーン限定」「床上運転式クレーン限定」といった3種類のうち、いずれかの免許を取得しなければなりません。いずれの資格も、国家資格であるため、合格率が60%以上であっても気を抜かず、しっかりと試験の対策をしておきましょう。