大型特殊免許を持っていると就ける仕事の幅が広がるため、需要がある資格です。免許を持っているドライバーは、企業にとって貴重な存在になることは間違いないでしょう。今回は大型特殊免許の需要や取得方法、取得費用、関連資格について解説します。
大型特殊免許で運転可能な車両や取得方法
大型特殊免許は、大型特殊自動車や小型特殊自動車を運転できるようになる免許です。取得方法は、教習所に通学、合宿コースの利用、一発試験を受験する3パターンに分かれます。 年齢や健康面で満たすべき条件はありますが、その内容は普通運転免許とほぼ同様です。ここでは大型特殊免許で運転可能な車両の種類や、詳しい取得方法と受験条件について解説します。
大型特殊自動車の公道での走行が可能に
大型特殊自動車は大型特殊車両の公道での走行が可能になる免許です。大型特殊車両とは、例えばクレーン車や除雪車、ショベルカーなどが該当します。 「特殊」と名が付いているのは、走行ではなく作業へ従事するために作られた車両だからです。また、大型特殊免許は大型特殊車両以外に、小型特殊車両も運転できるようになる点が特徴です。 幅広い車種の運転が可能な反面、認められるのは公道での走行にとどまるため注意が必要です。つまり、大型特殊免許を持っていても、土木現場や工事現場で作業を行うのは認められません。仕事で大型特殊車両を操作する人は、この違いを正しく把握しましょう。
運転免許センターで一発試験、教習所で取得
大型免許の取得方法は、教習所に通って取得する方法と運転免許センターで一発試験を受ける方法があります。 教習所の場合、最寄りの教習所に申し込み、全体のカリキュラムが終わるまで通学を繰り返します。また合宿コースを利用し、教習所に泊まり込みで短期取得を目指すことも可能です。 教習所では講習を受けて卒業検定に合格するという流れを踏みますが、運転免許センターの一発試験なら講習を受けずにいきなり試験に臨めます。非常に短期間で取得できる可能性がある反面、合格の難易度が高いスタイルです。
受験条件は普通運転免許とほぼ同じ
大型特殊車両の運転は危険が伴うケースが多いため、大型特殊免許は誰でも運転可能な免許ではありません。受験条件はいくつかありますが、内容は普通運転免許とほぼ同様です。 まず年齢要件があり、18歳以上の方しか免許を取得できません。年齢制限に上限はないため、理論上はお年寄りでも運転可能です。 ただし、受験条件には健康状態に関する内容もあり、お年寄りの人は引っかかるかもしれません。視力や聴力、色識別能力などが求められます。
大型特殊免許の需要はどれくらい?
人材市場において大型特殊免許の保有者には高い需要があると見込まれます。大型特殊免許を取得することによって、さまざまな車両を運転できるようになり、土木や運輸、農業等の分野で働ける可能性が広がるからです。 大型特殊免許の保有者が活躍できる仕事の代表例は、フォークリフトのオペレーターや農耕用トラクターの運転手などです
仕事の幅が広がるため需要あり
大型特殊免許では土木や建設、運輸などさまざまな業種で使われる業務用車両を運転可能です。したがって、大型特殊免許を持っている人は、仕事探しで有利に立つと考えられます。 その名の通り、特殊な作業に用いる車両を扱うため、キャリアの幅が広がるのは間違いありません。採用する企業の立場に立っても、大型特殊免許の有無が採用の判断に影響を与える可能性は大きいです。
就ける仕事1.フォークリフトの運転
多くの工場や倉庫で荷物の積載に利用されるフォークリフトは、需要の高い車両です。 フォークリフトは車両の規格に応じて大型特殊車両と小型特殊車両に分かれますが、大型特殊免許ならどちらの車両でも運転できます。 工場や倉庫等でフォークリフトを使った作業を行う場合は、別途専用の資格を取得する必要があります。積載荷重1トン以上のフォークリフトの運転では運転技能講習を受講し、技能講習修了証の交付を受けなければなりません。 専用の資格を持っていても、公道でフォークリフトに荷物の積載を行ったり、荷物を積んだ状態で公道を走行したりしてはいけません。
就ける仕事2.農業用トラクターの運転
大型特殊免許を取得すれば、農業用トラクターを運転できるようになります。農業従事者の高齢化によって担い手不足が問題視される中、大型特殊免許を取れば人材としての需要が高まるでしょう。 農耕トラクターはフォークリフトと同様、車両の規格によって大型特殊車両と小型特殊車両に分かれます。小型特殊車両に含まれるなら、普通自動車免許だけで運転が可能です。 大型特殊免許には農耕用車両だけを運転できる「農耕車限定」の区分があることも知っておきましょう。
大型特殊免許の取得費用
免許取得の際に気になるのがどの程度の費用が生じるのかという点です。大型特殊免許の取得費用は、普通免許を保有しているかどうかで費用感がかなり変わってきます。 また、教育訓練給付金という制度を使えば、取得費用の一部を削減可能です。本章では、大型特殊免許の取得費用について詳しく解説します。
普通免許を保有しているかどうかで費用は異なる
普通免許の保有者は持っていない人と比較して、取得費用を抑えられます。なぜならば、普通免許を持っていると必要な講習のコマ数が大幅に削減されるためです。 基本は学科講習22時間・実技講習12時間をクリアする必要がありますが、普通免許の保有者は実技6時間だけで済みます。 具体的な費用感は、普通免許を持っていない方は15〜20万円程度であることに対し、免許保持者は10〜15万円程度にまでコストカットが可能です。
教育訓練給付金が利用できる場合も
大型特殊免許の受講費用については、国から補助金の支給を受けられる場合があります。利用できるのは、雇用保険の教育訓練給付金という制度です。 原則、雇用保険に1年以上加入している人が対象で、最大10万円を限度に、受講に要した費用の20%の助成を受けられます。現在離職中の人は退職から1年未満であれば、この制度を利用できます。 教育訓練給付金は労働者のキャリアアップの形成支援が主たる目的の制度です。条件に該当しているなら、遠慮せずに恩恵を受けましょう。
一発試験での合格が費用を抑えやすい
大型特殊免許の取得にかかる費用を最大限節約したければ、一発試験での合格を狙うのがよいでしょう。一発試験の場合、免許の交付費用も含めて6,000〜8,000円程度の費用負担で済みます。 1回当たりの費用が安い一発試験ですが、何度も受験するようでは節約の効果が薄れてしまいます。2015年のデータによると一発試験の合格率は約50%。受験者の半数が落ちているため、一発での合格を目指す場合はきちんとした対策が必要です。
大型特殊に加えて持っていると有利な資格
大型特殊免許は、公道での走行が可能になるメリットしか有していないため、単体では効果が薄いと感じるかもしれません。しかし、関連免許も合わせて取得することで、強力な武器となる可能性も秘めています。 大型特殊免許に加えて持っておくとよいのが「けん引免許」「フォークリフト運転技能者」「運行管理者」の3種類です。
けん引免許
けん引免許は、車両の総重量が750kg以下の車両をけん引する際に必要な免許です。けん引免許は、車両のけん引に対して付与されるものであるため、この免許を取っても車両の運転は認められません。 したがって車両を運転するためには、普通免許や中型免許、大型免許など規格に応じた自動車免許が必要です。けん引免許を持てば貨物トレーラーが運転できるようになるため、職場での活躍の場が広がるでしょう。
フォークリフト運転技能者
先程も紹介したフォークリフトの業務での使用を認める免許です。この資格を持てば、フォークリフトを操作してパレットに荷物を積んだり、積み下ろしたりといった作業ができます。 食品や小さな部品などを運ぶドライバーに転職する際、有利になるでしょう。フォークリフト運転技能者の受験要件は満18歳以上で、35時間の講習を受ければ試験なしで修了証の交付を受けられます。
運行管理者
ドライバーが将来的なキャリアアップを視野に入れて、取得を考えてほしい資格が「運行管理者」です。 運行管理者を取得すると、1人29台までトラックを配車・管理できるようになります。資格取得の条件には運行管理の実務経験が求められることに注意が必要です。 マネジメントの道を進むのがキャリアアップの定石ですが、運行管理者の資格はそのプランの実現を助けてくれるものです。
大型特殊免許は需要があるおすすめ資格
大型特殊免許はあまり知名度がなく地味でありながら、需要が高いおすすめの免許です。さまざまな車両の運転が認められるため、土木や建築、農業など多彩な領域で活躍の可能性が広がります。 決して取得が難しい免許ではなく、きちんと教習を受けていれば合格できる可能性が高いでしょう。また、普通免許の保有者には学科免除の特典があるのも嬉しいポイントです。