結論から言うと、大型特殊免許は使い道が多い免許です。なぜならば、運転できる車両の種類が多いため、活躍できる現場の数が増えるからです。今回は、大型特殊免許を活かせる具体的な仕事の種類や、免許の取得方法、関連資格のけん引免許について解説します。
目次
大型特殊免許の使い道が多い!その理由とは?
大型特殊免許は、構造や性能が特殊な大型特殊車両を公道で走行できるようになる免許です。大型特殊車両ではブルドーザーやクレーン車など、誰もが知っている車両を運転できるようになります。 大型特殊免許はマイナーな免許ですが、取得する価値は大いにあるといえるでしょう。まずは、大型特殊免許でどのような車両が操作できるか紹介します。
運転できる車両の種類が多い
大型特殊免許の取得によって、全長12m以下×全高3.8m以下×全幅2.5m以下を満たした特殊車両が運転可能です。 また、上記の大型特殊車両に加えて、小型特殊車両や原動機付き自転車も走行させられるようになります。具体的な車両の名称を次に列挙しました。
- クレーン車
- ショベルカー
- ブルドーザー
- 除雪車
- 路面清掃車
- ロードローラー
- 大型・小型トラクター
- 大型・小型コンバイン
- フォークリフト
- ターレット
大型のクレーン車からフォークリフトまで、幅広い車両が対象となっているのが分かります。 一つ注意してほしいのは、大型特殊免許は業務での使用を約束するものではないことです。あくまでも、公道での走行を可能にするだけで、フォークリフトを操作したりクレーンで物を持ち上げたりはできません。
大型特殊免許を活かせる仕事
仕事に活かせるなら、大型特殊免許を取得したいと考える方もいるでしょう。大型特殊免許を活かせる仕事は少なくありません。例えば、 物流ならフォークリフトのオペレーター、農業ではトラクターやコンバインの操作員などが挙げられます。 また、除雪機の操作員として活躍できるのも魅力です。それぞれの仕事の詳細について解説します。
フォークリフトのオペレーター
フォークリフトを操作して、出荷製品を運搬して物流の流れに乗せることが可能です。物流業界はコロナ禍の巣ごもり需要で伸びた分野でもあり、フォークリフトを運転できれば就職・転職へ有利に働くでしょう。 ただし前述の通り、大型特殊免許のみでは業務で機体を操作できません。フォークリフトで物を運搬するための資格は、最大荷重によって異なります。 最大荷重1トン以上の車両を操作する場合は、フォークリフト運転技能講習の受講が必要で、1トン未満ではフォークリフトの運転に係る特別教育の受講が必要です。
農業従事者
大型特殊免許では農業では欠かせないトラクターを、大型・小型問わず運転できるようになります。農業用トラクターは農作業機を付属させたり、専用の機械をけん引したりすることで、肥料の散布や田んぼの耕運が可能です。 大型特殊免許には農業従事者向けに、農耕車限定免許が存在します。農耕車限定免許はその名の通り、農業用のトラクターやコンバインだけの運転が認められる免許です。 はじめから農業のために特殊免許の取得を目指している方であれば、クレーン車やフォークリフトも操作できる大型特殊免許はオーバースペックなので、こうした措置が取られています。
除雪機の操作員
大型の除雪機を動かすためには、大型特殊免許が必要です。除雪機は多くの種類に分かれますが、基本的には免許の取得に加えて、大型特殊自動車の運転経験も求められます。 除雪機の免許を持っていると、降雪地域で除雪機の操作員として働いたり、冬季限定の除雪の仕事に従事したりすることが可能です。 農家は冬場は仕事が無くなるため、除雪機の操作員と兼業するとリスクヘッジになります。ちなみに、家庭用除雪機の場合は、大型特殊免許を取得しなくても運転できます。
大型特殊免許を取得するには?
大型特殊免許には取得条件が設定されており、これを守らなければ受講できません。しかし、条件をクリアすることは難しくなく、多くの人が基準を満たせます。 取得方法は「教習所の通学コース」「教習所の合宿コース」「一発試験」の3パターンです。ここでは取得条件の詳細や、各取得方法の費用や必要な期間などを解説します。
必要な条件
大型特殊免許の取得要件は次の通りです。
- 年齢が18歳以上
- 両目の視力が0.7、片目0.3以上
- 信号機の色(赤・青・黄色)を識別できる
- 10mの距離が離れても90デシベルの警報音を聞き取れる聴力
- 四肢や体幹に自動車の運転に支障を来たすレベルの障害が存しないこと
上記の内容は普通運転免許の条件とさほど変わりありません。健康な方であれば、18歳の成人年齢に達していれば、問題なく取得可能です。 また、教習所に通うための要件に、普通運転免許の保有を求めているところも存在します。利用を検討している教習所がどのような扱いを取っているか、事前に確認した方がよいでしょう。
取得方法は3パターン
教習所の通学コースを利用する場合、学科講習22時間・実技講習12時間の受講が必要です。 普通免許の保有者は学科講習が免除され、合計6時間の受講で済みます。通学コースのメリットは、自分の好きな時間に講習を受けやすいことです。ただし、教習開始から3ヵ月の受講期限が設けられているため注意しましょう。 教習所では合宿コースも準備されています。合宿コースは短時間で免許を取得できることがメリットだといえるでしょう。最短4日でカリキュラムを終わらせられるため、時間がない方や急ぎの方に向いた方法です。 一発試験は講習を受けずにいきなり試験に臨む方法で、運転免許センターで取り扱っています。一発試験は時間・費用ともに短縮化できる可能性がありますが、あくまでも少ない回数で合格した場合のメリットです。 講習を受けていない分、一発試験の難易度は高く、初受験で落ちる方は珍しくありません。
取得費用の目安
あくまでも目安ですが、普通免許を持っていれば、大型特殊免許の取得費用は10万円以下で済むでしょう。 コマ数が増える普通免許を持っていない方は相場がグッと上がり、15万〜20万円程度必要です。一発試験は最初の1回で合格できたと仮定すると、6,000円〜8,000円程度の負担が生じます。
取得期間の目安
大型特殊免許の取得期間は、一発試験が最短です。一発試験は早く免許を取得したい方を中心に人気がありましたが、法改正によって試験合格後、即免許交付とはいかなくなったため、受験者数が減少しました。 合格率との兼ね合いもあるので、大型特殊免許をスピーディーに取得したいなら教習所の合宿コースを使った方がよいかもしれません。 普通免許を持っているなら、通学コースでも短時間でカリキュラムを終わらせられます。
仕事の幅をさらに広げたいならけん引免許がおすすめ
特殊車両の運転のプロフェッショナルを目指したい方や、さらなるキャリアアップを検討中の方は、けん引免許の取得をおすすめします。 貨物トレーラーを運転できるようになるため、現場でさらに活躍できるようになるでしょう。ただし、けん引免許は取得条件が大型特殊免許と少し異なる点に注意が必要です。 本章では、けん引免許で運転可能な車両や取得条件、費用などを紹介します。
貨物トレーラーを運転できるようになる
けん引免許は総重量が750kgを超える車両をけん引する際に必要となる免許です。けん引免許によって、貨物トレーラーが運転できるようになります。 貨物トレーラーは一度に大量運搬が可能なため、物流現場ではけん引免許を持つ人材は非常に重宝されます。 トラクターに荷台がないセミトレーラー、荷台があるフルトレーラーのどちらも操作可能です。キャンピングカーを乗り回す際にも使えるため、仕事以外に趣味でも役立つ免許です。
取得条件
けん引免許の取得には、前提として普通自動車免許・中型自動車免許・大型自動車免許・大型特殊自動車免許のいずれかを持っている必要があります。 したがって、けん引免許を持ちたい場合は、まずこれらの免許を取得しましょう。また、けん引免許の場合は、視力の条件に注意が必要です。普通自動車や大型特殊免許では視力0.7(片目0.3)が求められましたが、けん引免許では両目0.8(片目0.5)以上と基準が上がります。
取得方法
けん引免許の取得方法は、大型特殊と同じく教習所に通学・合宿コースか、一発試験を受講する方法に分かれます。 けん引免許は一種と二種で試験内容が異なる点に注意が必要です。一種は技能講習・試験のみ行われ、学科は免除されます。 一方、二種免許は学科と実技の両方を通過する必要があります。けん引二輪の学科試験は難しいと評判なので、対策をきちんと取りましょう。
取得費用の目安
けん引免許の取得に要する費用は、10万〜15万円が目安のようです。通学も合宿もさほど費用に違いはありませんが、合宿は申し込みシーズンや部屋の種類によって、値段が変わることに注意が必要です。 一般的には、利用者が増える春休みや夏休み、相部屋より個室の方が費用が高額になる傾向があります。また、一発試験にかかる費用は1回あたり6,000円程度です。
大型特殊免許を取得してキャリアアップを図ろう
さまざまな特殊車両が運転できる大型特殊免許は、キャリアを広げる可能性を秘めた免許です。除雪車やクレーン車など、子どもの頃憧れた重機を運転できるのは魅力的です。 ただし大型特殊免許だけでは、基本的に業務で車両を扱えません。別途作業用の専門資格が必要になるため、運転したい車両で何が必要になるかリサーチしましょう。
参考:物流業界とは?楽しいといわれる理由や今後の動向を解説|career ticket