セミトレーラーは形状に応じて用途が分かれるのが特徴です。目的や荷物に合わせて購入する車種を決めた方が良いでしょう。今回は特例8種と呼ばれるセミトレーラーの種類や、それぞれの用途、フルトレーラーとの違い、必要な免許、寸法について解説します。
目次
セミトレーラーの代表的な8つの種類
セミトレーラーは積載物や目的に応じて、さまざまな種類の架装を施せることが特徴です。特に積載物が落下しにくい構造を持つ車種が特例8車種と呼ばれ、ユニークな形状を持っています。 ここでは特例8車種の種類やそれぞれの構造、積載物などについて解説します。
バン型
箱型タイプの基本的なトレーラーです。側面が上に向かって大きく開くウイングタイプと、側面や後部に扉が付いたバンタイプに分かれます。ウイングタイプは全面的に開放されるため、搬入時に多くの作業員が同時に出入りすることが可能です。 またバンタイプは主に冷凍・冷蔵品の運搬で頻繁に使用されます。バン型はオーソドックスなトレーラーですが、中には海上コンテナ用のトレーラーを改造し、バントレーラーとして扱う場合もあります。
タンク型
荷台にタンクを搭載したタイプで、液体燃料の運搬に使用されるタンクローリータイプと、粉粒体を扱うバルク車に分けることが可能です。 タンクローリータイプの積み荷の代表格は、ガソリンや灯油といった石油類です。他にも、化学薬品や食品、水など幅広い種類の液体を運んでいます。 バルク車では単純な粉粒体の輸送にとどまらず、平ボディ車で運ばれたフレコンを詰め替えて、顧客の元へ届けるという運用を行っている場合もあります。
コンテナ用
コンテナをがっちり固定するために、シャーシの四隅にツイストロック装置が備わったタイプ。海上コンテナの輸送で頻繁に用いられています。 20ft(フィート)専用の短尺車と、40ft(フィート)コンテナ用の長尺車があります。40ft用の長尺車では、20フィートコンテナを積めるタイプも存在します。 車軸の数は一軸・二軸・三軸に分かれ、通常の場合、一軸車は空積コンテナ用です。
自動車の運搬用
その名の通り、車両運搬を目的にしたトレーラーで、乗用車を運んでいます。自動車を多く積むために、トラクター側に車載用の特殊構造が施されている場合もあります。 例えば、積載部が二階建てのトレーラーは、上下それぞれ3台ずつ、合計6台の運搬が可能です。乗用車の効率的な輸送に大きく寄与する車両と言えるでしょう。構造的な特徴として、積載の作業効率を向上させるため、1階部分の地上高が低めに抑えられています。
幌枠型
平ボディタイプに、骨組み付きの幌(ほろ)を被せたトレーラーです。荷台に屋根が付いているため、貨物を雨風から守ることが可能です。 また楽器のアコーディオンのように、幌を伸び縮みさせても問題ありません。貨物の量や種類に応じて、カバー範囲を変えられるため、非常に便利なタイプだと言えます。 ベースはあおり付きの平ボディですが、天井・側面を完全にガードできるため、外的要因から貨物をしっかりと守ってくれます。
あおり型
トラックの荷台を囲うあおりが付いたトレーラーです。あおりは主に荷台の側面および後方部に取り付けられ、下部の蝶番によって開閉できます。 別名チャンネル車とも呼ばれ、大きく固縛(固めに縛ること)を前提にしたタイプと、固縛を伴わないものに分かれるのが特徴です。固縛前提のトレーラーは主に雑貨や瓦の運搬に用いられます。 固縛が伴わない車両は、スクラップの運搬に使用されることが多いです。
スタンション型
スタンション型は荷台が平坦なフラットトレーラーを基本に、荷崩れ防止用の棒(スタンション)やワイヤーフックなどが設置された車種です。 まな板トレーラーと呼ばれる場合もあります。スタンションは、車両の最大積載量や重心の高さに応じて、高さや数が異なってきます。スタンション型のトレーラーは鋼材や原木、コンクリート製品の運搬に使われることが多いです。
船底型
荷台の中心部分がまるで船底のようにくぼんだ構造を持つトレーラーです。フラットトレーラーをベースに、中心がV状にカットされた仕様で、映画や漫画で出てくる海賊船の船底と瓜二つになっています。 この構造によって荷物を積んだときの安定性が増し、落下防止に役立ちます。コイルをはじめ、円筒状の荷物を運搬する際に、使われる場合が多いです。
フルトレーラーとセミトレーラーの違い
一般的に広く使われているトレーラーには、セミトレーラー以外にフルトレーラーもあります。両者の大きな違いは車体の長さです。 セミトレーラーの連結全長の上限は18mであるのに対して、フルトレーラーは25mまでとなっています。またフルトレーラーは荷台部分に前輪があり、トレーラー単体で自立可能な構造です。 逆にセミトレーラーは後輪しかないため、単体では自立できません。フルトレーラーは前方のトラクター部分が荷台を有しており、トラックとして走行可能なことも特徴です。
セミトレーラーの運転に必要な免許
セミトレーラーは運転席と荷台が分離するけん引自動車に分類されているため、原則、運転免許以外に、けん引免許も必要です。 例外として、被けん引車両の総重量が750kgに満たない場合は、けん引免許が無くてもオッケーです。ここでは、セミトレーラーの運転に必要な免許とその取得条件を解説します。
大型免許
セミトレーラーの運転には大型一種免許の取得が必要になると考えましょう。運転免許は大きく第一種免許と第二種免許に分かれますが、二種免許は特定の業種に限って必要な免許です。 セミトレーラーの場合、一般的な第一種免許の取得で問題ありません。また運転免許は車両の総重量や最大積載量に応じて大型・中型・小型などに分かれ、大型免許の場合、車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上の車両が対象です。 セミトレーラーは上記の範囲に収まる場合が多いため、大型一種免許の取得だけで済む可能性もあります。
取得条件
大型免許の取得条件は「19歳以上で普通免許の保有歴が1年以上の人」です。 従前は「普通自動車免許・準中型免許・中型免許・大型特殊免許のいずれかを取得し、通算の運転経験を3年以上有する満21歳以上の人」という条件でしたが、法改正の影響で2022年5月13日から基準が変更になったのでご注意ください。 また別途、以下の身体条件も満たす必要があります。
- 視力:両目0.8以上、片目0.5以上
- 信号機の赤色・黄色・青色を識別できること
- 10mの距離で警報器(90dB)の音が聞こえること
- 運転に支障をきたす身体障害がないこと
けん引免許
トラクター単体であればトラクターの車両区分の運転免許だけで運転できますが、非けん引車両(トレーラー)が伴う場合は、けん引免許の取得も必要になります。 ただし、車両総重量が750kgに満たないトレーラーをけん引する場合、けん引免許を持っていなくても問題ありません。運送業務で用いる際は車両総重量が750kgを超える方が一般的なので、基本的にはけん引免許が必要だと考えた方が良いかもしれません。
取得条件
けん引免許は通常の運転免許に付随する性質のものなので、前提としてベーシックな免許の保有が求められます。まず普通・中型・準中型・大型のいずれかの免許を保有している必要があります。 年齢要件は18歳なので、大型免許を持っている人ならば問題ありません。その他、視力や聴力、運転に支障を来たす身体障害がないことなどは大型免許と同様の条件です。
セミトレーラーの寸法は?
セミトレーラーをはじめ、特殊車両は規格・寸法が決められ、基準を超える車両は走行させることができません。 寸法の遵守はもちろんですが、運転の難易度が高いトレーラーの場合、それだけでは対策不足だと言えるかもしれません。事故を起こさずに安全に運転したいなら、軌跡図の作成を推奨します。
基本的な寸法
セミトレーラーの寸法は、全幅2.5m以下、全高3.8m以下、トレーラー連結時の全長が18m以下となっています。従来までは連結時の全長は17mまででしたが、2015年の「道路運送車両の保安基準改正」によって、上限が緩和されました。 一度に運べる貨物量が増えたため、大量輸送による業務効率化の進展が期待されています。 またバン型等の特例8車種に関しては、連結ピンから車両最後端までの長さが13m以内と、規定されています。 参考:全日本トラック協会/トレーラーの大型化による輸送効率化促進ハンドブック
軌跡図とは
軌跡図は安全走行や事故防止に効果的な図面です。車体が長大なセミトレーラーは、運転時の操作が難しいという特徴を有します。バック時の後方確認が上手くいきにくく、内輪差による巻き込み事故のリスクも高くなっています。 軌跡図では車両規格・寸法をもとに、バック走行や右左折時に生じる内輪差を、専用ソフトを用いて算出します。緻密な計算のもと、信頼できるデータが得られるため、いきなり走り出すよりも事故のリスクを抑えられるでしょう。
用途に応じて適した車種を選択しよう
液体燃料を運搬するならタンクローリータイプ、冷凍・冷蔵品を運ぶ場合はバンタイプというように、目的や積載物に応じて、適切な車種の選択が求められます。 セミトレーラーの運転には、大型免許とけん引免許が必要です。この2つの免許があれば、さまざまな種類のトレーラーを操れるので、業務の幅が広がることでしょう。