目次
安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、道路交通法をはじめとした法令の遵守や交通違反・事故の防止を図るために、自動車を所有する事業者に対して選任が義務付けられた責任者です。
運送業・旅客業・運転代行業などの業種・業態に関わらず、一定の台数以上の事業用自動車を保有している事業者は、台数に応じて安全運転管理者や副安全運転管理者を選任しなければなりません。
なぜ安全運転管理者が必要なのか
安全運転管理者は、以下3点から欠かせない存在となっています。
事故予防
安全運転管理者は、運転中の事故を予防するために適切な方針や手順を策定し、従業員に遵守させます。これにより、交通事故の発生確率を低下させき、人身傷害や車両損害を減らすことができます。
法令順守
交通に関連する法令や規制は日々変化しています。安全運転管理者は、これらの法令を常に把握し、組織内での順守を確保します。法的コンプライアンスを維持することは、企業の信頼性を高める重要な要素の1つです。
コスト削減
事故や交通違反が発生した場合、対応にかかる人的コストや、保険料や修理費用といった経済的コストは企業にとって軽視できません。安全運転管理者は、安全運転の管理を通じてこうしたコスト削減に貢献しているといえます。
安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者の主な業務内容は下記9点です。
運転者の適正等の把握
自動車の運転についての運転者の適性、知識、技能や運転者が道路交通法等の規定を守っているか把握するための措置をとること。
運行計画の作成
運転者の過労運転の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成すること。
交替運転者の配置
長距離運転又は夜間運転となる場合、疲労等により安全な運転ができないおそれがあるときは交替するための運転者を配置すること。
異常気象時等の措置
異常な気象・天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、安全確保に必要な指示や措置を講ずること。
点呼と日常点検
運転しようとする従業員(運転者)に対して点呼等を行い、日常点検整備の実施及び飲酒、疲労、病気等により正常な運転ができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えること。
酒気帯びの有無の確認(令和4年4月1日施行)
運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視やアルコール検知器等で確認することにより、当該運転者の酒気帯びの有無を確認すること。
安全運転管理者が不在の場合などは、副安全運転管理者が確認を行い、酒気帯びが確認された場合は安全運手管理者に報告を行うこと。
酒気帯びの有無の確認の記録・保存(令和4年4月1日施行)
酒気帯びの有無の確認内容を記録し、当該記録を1年間保存すること。また、アルコール検知器を有効に保持すること。
運転日誌の備え付け
運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。
安全運転指導
運転者に対し、「交通安全教育指針」に基づく教育のほか、自動車の運転に関する技能・知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行うこと。
副安全運転管理者との違いについて
副安全運転管理者とは、主に安全運転管理者の補佐をする役割を担っています。
業務内容自体は安全運転管理者と同じですが、管轄する車両台数が安全運転管理者よりも少なくなっています。
保有車両台数が19台以下では副安全運転管理者の選任は不要ですが、20台以上になると選任が必要になります。
※20台ごとに1人の副安全運転管理者の選任が必須
安全運転管理者の選任方法
資格要件
安全運転管理者は、下記すべての要件を満たす必要があります。
・年齢20歳以上 ※副安全運転管理者を選任している場合は30歳以上
・過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等の解任命令(道路交通法第74条の3)を受けてない
・過去2年以内に以下の行為をしていない
・ひき逃げ
・無免許運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転
・無免許運転にかかわる車両の提供・無免許運転車両への同乗
・酒酔い・酒気帯び運転にかかわった車両・酒類を提供する行為
・酒酔い・酒気帯び運転車両への同乗
・酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反
・自動車使用制限命令違反
・妨害運転に係る罪
安全運転管理者を選任したら行うこと
安全運転管理者を選任後、安全運転管理者は公安委員会に対して15日以内に届け出を提出する必要があります。
届け出の際に下記書類を提出しなければなりません。
・届出書
・戸籍抄本又は本籍の記載のある住民票の写し
・運転免許証の写し
・運転記録証明(3年若しくは5年)
※届出書に関しては、各都道府県警のホームページからダウンロードできます
また、届け出については直接所轄の警察署に持参をするか、電子申請で対応可能です。詳しい方法は所轄の都道府県警ホームページなどご確認ください。
罰則について
未選任の安全運転管理者の罰則
安全運転管理者を未選任だった場合や、安全運転管理者等の是正措置命令について従わなかった場合は50万円以下の罰金が課せられます。
令和3年6月に発生した千葉県八街市の死傷事故後に法改正が行われ、従来の5万円以下の罰金から50万円以下の罰金へと罰則が厳罰化されました。
また、選任から15日以内に公安委員会に届け出をしなかった場合、5万以下の罰金が課される可能性があります。
安全運転管理者を未選任のままでいることは、組織や企業にとって重大な問題です。
交通安全を確保し、事故の予防に貢献するために、安全運転管理者を選任し、適切な権限を与え役割に従事させることが重要です。
未選任の場合、厳格な罰則が課せられることもあるため、法的要件を遵守しましょう。
運送会社やバス会社も選任が必要?
結論から言えば、運送会社や旅客事業者のうち、運行管理者を選任している事業所では安全運転管理者を選任する必要はありません。
ただし、選任義務がないのは「事業所」な点に注意が必要です。
運送・旅客事業者においても、運行管理者を選任していない事業所で一定数以上の事業用車両を保有している場合、例えば、運行管理者が選任されていない営業所機能のない本社や事務所などに一定数以上の営業車が存在する場合、安全運転管理者の選任が必要と解することができます。
また、安全運転管理者を選任する義務がないからといって、決して安全運転管理者が行うべき義務をこれらの事業所自体から免除されているわけではありません。
安全運転管理者の義務となっている以上の内容が、運行管理者に対する義務として課されている以上、
安全運転管理者が行うべき内容を運行管理者が当然のこととして行うため、制度上は安全運転管理者の選任が義務付けられていない、と解することが妥当でしょう。
なお、これらの事業所に対して安全運転管理者の選任は義務付けられてはいませんが、事業所が自主的に安全運転管理者を選任することは妨げられてはいません。
運送会社・旅客事業者の運行管理者は、業務に使う事業用車両と乗務員(トラックやバスなどとその運転手)管理に注力することが多いはずですので、それら以外の営業車での事務職員の安全運転管理のために、安全運手管理者を選任して管理していくことも効果的です。
フォークリフトも対象になる
営業車の台数は少なくても、フォークリフトを数台所有している会社も多いかと思います。
フォークリフトだけで、あるいは営業車とフォークリフトを合わせて20台以上の保有がある事業者も、安全運行管理者の選任が必要なのでしょうか?
これは、保有しているフォークリフトの種類にも左右されます。
フォークリフトのうち、ナンバー無しのフォークリフトは道交法と安全運転管理者制度の対象外となります。
そのため、フォークリフトだけで、あるいは営業車とフォークリフトの合計が20台以上の保有の場合、
安全運転管理者の選任は必要ありません。
ただし、ナンバーの付いているフォークリフトは大型特殊車両もしくは小型特殊車両扱いとなるため、
道路交通法および安全運転管理者の対象となり、安全運転管理者の選任が必要ですので、ご注意ください。
安全運転管理者の業務負荷を減らすには?
安全運転管理者の業務効率化
安全運転管理者は、交通安全に関する責任を担う重要な役割を担っています。安全運転管理者の業務は多岐に渡り業務負荷が高い上、年々罰則が強化されています。
多くの企業にとって、安全運転管理者のみ単体でのスタッフを置くことは難しく、選任されたスタッフは他の業務の傍らに、安全管理者としての職責を全うしなければなりません。
こうした中で、罰則に備えるだけではなく、日々の業務の適正化と業務負荷削減による効率化を両立するためにも、日常点検などを一元化したデジタルツールの活用を行うことがおすすめです。
上記の条件を満たしつつ、使いやすいツールが「トラッカーズマネージャーの車両管理システム」です。
トラッカーズマネージャーとは
トラッカーズマネージャーとは、運送事業に必要なすべての機能を網羅したクラウドシステムです。
修理整備履歴の可視化や事故情報の管理など様々な業務をカバーできます。
トラッカーズマネージャーの機能一覧
ドライバー情報の一元管理
運転免許期限や健康診断受診日が一覧で把握可能となっており、並び替えや検索も簡単にできます。
また、詳細画面では緊急時の連絡先から講習受講履歴、事故・違反歴など全情報を網羅的に見ることができ、台帳形式での印刷も可能です。
事故記録の可視化
事故を万一起こしてしまった際に、保管が必要な「貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2」に必要な情報を保存可能となっています。
また、事故記録についてはボタン1つでグラフ化することが可能で、自己分析や安全対策マネジメントにも活用することができます。
車両にまつわる情報の集約
車検証、車両台帳、各仕様のほか、リース情報や各種保険情報、車検・三ヶ月点検・修理整備記録・消耗品の交換記録についても、詳細に記録しておくことができ、原価情報として集計できます。
また、車両一台ずつ入力するのが手間な場合は、CSVによる一括の取り込みにも対応しております。
燃料情報の可視化
給油量・単価・燃料費を燃料会社ごとに管理&グラフ化することが可能です。
また、燃料情報の登録についてはCSVによる一括の取り込みにも対応しております。
点検・整備・修理履歴
車検と3ヶ月点検については、点検期限をスケジュール管理でき、期限間近の車両を一目で把握できるほか、期限の前月にはメールで警告が飛ぶようになっています。
また、タイヤやエンジンオイルについても同様に、走行距離や経過日数に応じて交換期限管理が可能となっています。
そのほかあらゆる修理・整備の記録を、かかった費用も含めて、車両ごと・営業所ごと・特定の期間ごとにボタン一つで検索・集計ができますので、さまざまな軸で分析に活かせるはずです。
終わりに
本記事では、安全運転管理者の業務内容や要件、そして業務内容を効率的にサポートする方法についてご紹介致しました。
車両管理システムの導入により、安全運転管理者の業務負荷を抑えるだけでなく安全体制の基盤を整えることができます。
トラッカーズマネージャーの車両管理・ドライバー管理機能は運送会社様に限らず、多くの会社様から事業用自動車の管理システムとしても導入いただいております。
業務が属人化していたり、紙やExcelなど非効率的な方法で管理されている場合は、これを機に車両管理システムの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
編集長(元・運送会社配車担当)のつぶやき
運行管理者が選任されている運送会社などの事業所では、運行管理者が同等以上の義務を負っていることから安全運転管理者の専任は義務付けられていませんが、その他一般の企業全般においては選任・届出が義務付けられています。
(名前が似ていてややこしいですが、貨物自動車運送事業法に基づく「安全統括管理者」とは異なる制度です。
安全統括管理者の選任と届出はすべての乗合バスや特定旅客事業者と、200台以上の車両を保有するすべての貨物運送事業者・旅客運送事業者の義務ですので、お忘れなく。)
現に、新たに安全運転管理者の義務にも盛り込まれるたアルコールチェック厳罰化のきっかけとなった、令和3年6月の千葉県八街市の死傷事故においては、当該企業は千葉県警へ安全運転管理者の選任と届出を行っていなかったとして、親会社の社長に対して略式起訴の上、罰金刑が課される事案となりました。
多くの運送会社では定期的な安全教育を行っているかと思います。
自社で発生した事故をドライブレコーダーの映像を用いて確認させ、どうして事故が起こってしまったのか、どこに気を付け、どうすれば防げたのかをドライバーに考えさせたり、自社に限らず、近隣の幹線道路での事故事例の共有などの状況を展開し、ドライバーの安全意識を醸成している会社も多いかと思います。
運送会社以外の一般の事業者においても、同程度の教育内容を定例的に行うことは難しいかもしれません。
ですが、まずはしっかりと安全運転管理者の選任を行い社用車を利用する従業員へ可能な限りの基礎的な安全教育からはじめることで、こういった痛ましい事故を未然に防いでいくべきではないでしょうか。