橋本愛喜が本音で語るトラックドライバーのマナー問題

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媒体によって「書き分け」をしているというフリーライターの橋本愛喜氏。それには「トラックドライバーの地位向上」という深い目的があるのだそうだ。今回はそんな同氏の思いと、トラックドライバーのマナー問題について語ってもらった。

媒体で「書き分け」る理由

いきなり個人的なお話で恐縮ですが、運送業界やトラックドライバーについて執筆する際、実は業界向けの媒体と業界外向けの媒体で「真逆」になることがあります。それは「当事者目線」です。

ネットニュースや大衆誌など、業界外の媒体で発言・意見する時は、基本的にトラックドライバーの裏事情や、彼らがマナー違反せざるを得ない実態などを書き、業界やトラックドライバーへの理解や関心を高めてもらおうと意識しています。一方、この『トラッカーズ通信』のようなオウンドメディアへの寄稿や、業界紙にコメントを求められた時は、トラックドライバーのマナー違反や業界の欠点、悪しき習慣などを指摘することが多いです。

言い換えれば、「外向け」の媒体ではトラックやドライバー目線で世間に説明し、「内向け」の媒体では世間目線でトラックドライバーの悪マナーの改善を促すよう、“書き分け”をしています。

中立公平を重んじる身として、こうした“書き分け”をすることはあまり良いことではないのですが、事実、マナー違反を指摘されても仕方ないトラックドライバーが一定数存在すること、そして、世間がそのごく少数の悪素行を「トラックドライバー全体のイメージ」として捉えていることに鑑みると、こうしたギャップを埋めつつドライバーの地位を向上させるためには、ある程度致し方ないのかなと思っているところです。

しかし、こうした書き分けをし、ネットニュースでいくらトラックの擁護や事情を説明しても、毎度私の元にはトラックを批判する声が非常に多く集まります。正直、その中には「ごもっとも」と言う他ない指摘も多くあり、ネットニュースで取り上げるとマナーを守るトラックドライバーたちにまで影響を及ぼしかねないものばかりです。

今後もこうしたネットニュースでは扱いにくい「世間の声」を多く紹介していけたらと思っていますが、今回はその中から最近取材中にいただいた、「ある施設からの声」をご紹介します。

ガソリンスタンドから聞こえてきた要望

昨年末から世界中を大混乱に陥れている新型コロナウイルス。日本全国を走るトラックドライバーも例に違わず影響を受けており、荷量の極端な増減や、「コロナ運ぶな」といった誹謗中傷など、各地から様々な報告が寄せられます。中でも以前書いた「ガソリンスタンドのシャワールーム使用停止」は、1次輸送を担うドライバーにとって、かなりの痛手でした。

ガソリンスタンドは、言わずもがな運送業界とは「持ちつ持たれつ」の関係。こうした現場からの意見を汲んでくれてか、結果的に1週間程度で各ガソリンスタンドはシャワールームの再開を決定してくださり、大きな混乱は起きず私も胸をなで下ろしたのですが、この取材をする中で、とあるガソリンスタンドの広報担当者から「ガソリンスタンドの現場店員から聞くコロナ禍におけるトラックドライバーへのお願いとクレーム」を聞かされ、ハッとさせられました。 そのお願いとは、「トラックドライバーの皆さんには、是非車内でもマスクをしていてほしい」というものでした。

以前、トラックドライバーに「コロナ禍の中、終日マスクをしているか」というアンケートを取ったことがあります。その結果、 終始着けている…11.9% 運転中はしていないが構内業務時には着けている…31.4% 終日着けていない…49.8% と、約半数のドライバーがマスクを1日中着けていないことが分かりました。

乗用車と違い、日頃からフルサービスを受けることの多いトラックですが、そうするとガソリンスタンドの店員は必然的に多くのトラックドライバーと接触することになります。しかも彼らは、車高の高いトラックに乗ったドライバーを見上げ、上からしゃべりかけられる状態に。飛沫は無論、上から下へと落ちていくので、マスクをしていないトラックドライバーとの接触は、感染リスクが非常に高くなるのです。 1人で行動されるドライバーさんは、運転中にマスクを着ける必要はもちろんありません。が、ふらっと立ち寄るコンビニや給油をお願いするガソリンスタンドでは、こうした配慮を忘れないようにしたいところです。

一方、そのガソリンスタンドの広報が「クレーム」として聞かせてくれたのが、「ゴミの分別」です。 コロナ禍により多くのガソリンスタンドでは、今まで実施していた「店員による車内ゴミの預かり」を一時的に取り止めるところが増えました。が、中には利用客からの声に応えて、各自でゴミを捨ててもらうよう、ゴミ箱を撤去せずに置いてくれているところもあります。

しかしその際、コンビニの袋に缶コーヒーと弁当容器をひとまとめにして捨てるなど、ゴミの分別がされていないことが多いといいます。無論それは、分別が面倒だからというわけではなく、分別をすることで結局感染リスクが高まるからとのこと。せっかく「車内ゴミの預かり」を取り止め感染リスクを減らそうと対策しても、ゴミが分別されていなければ、結局店員がゴミ袋に手を突っ込むことになり、全くもって意味がないのです。

ドライバーのマナー違反「最大の被害者」とは

「ゴミを分別せずに捨てているのはトラックドライバーだけではない」という意見もあると思います。が、ゴミを分別せずに捨てているトラックドライバーがいるのもまた事実です。 一方、現役のトラックドライバーから時々、「ドライバーの地位を向上するためには、世間の指摘を真摯に受け止め、1人ひとりが身を正す必要がある」という真っ当な意見をいただくことがあります。しかし皮肉なことに、こうした世間からの声に耳を傾けるドライバーは、やはり元々マナーがいい人がほとんどで、本来こうしたクレームを聞かねばならない悪マナーのドライバーにはなかなか届かないのが現状です。

一部のドライバーの悪マナーが、他業種の人々に多大な迷惑をかけているのはもちろんですが、実は一番迷惑を被っているのは、普段からマナーを守り、トラックドライバーとしての誇りを持って日々走ってらっしゃる同業のトラックドライバーさん自身なのかもしれません。運送企業経営者さまには是非、「こんな常識を教えないといけないのか」とせず、日々の社員教育・指導を徹底してほしいと思います。