【2025年 物流業界10大ニュース】 実務担当者が押さえておきたい最新動向

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2025 年は物流業界にとって制度改正・取引環境の見直しが大きく進む一年でした。
特に「2024 年問題」に続く影響や、新制度の施行によって、運送会社の管理部門には“対応漏れが生産性や収益に直結する”局面が増えています。

この記事では、「2025 年の物流業界 10 大ニュース」をもとに、実務で押さえるべきポイントに絞ってわかりやすく整理しました。

ランキング10位~6位

10位:ドライバーの賃金上昇

ドライバー賃金は平均月収が40万円を超えるなど大幅に上昇し、待遇改善が進んでいますが、業界全体で人材が増えたわけではなく“既存ドライバーの移動が活発化しただけ”という側面があります。賃上げは人材確保の必須条件である一方、運送会社のコスト増にも直結するため、今後は労働環境・キャリア制度などを含めた総合的な魅力づくりが求められます。

 9位:ブリヂストン物流のM&A

SBSホールディングスがブリヂストン物流を子会社化したことは、メーカーが物流を自社で抱える時代から、専門物流企業のネットワークを活用する時代への転換点を象徴しています。今後は物流会社同士の統合も進み、ネットワークの大型化と寡占化が進む可能性が高く、競争力の差がより鮮明になると考えられます。

8位:軽油価格カルテル疑惑

公正取引委員会が石油元売り各社を立ち入り検査した“軽油価格カルテル疑惑”は、物流業のコストを左右する燃料価格が人為的に操作されていた可能性を示す重大な事案です。燃料費高騰に苦しむ運送会社にとって、公正な取引環境の確保は経営の健全性に直結するため、今後はより透明な価格形成メカニズムの整備が求められます。

7位:運送会社倒産数の急増

2024年度の運送会社倒産件数はリーマンショック時に迫る高水準となり、背景には時間外労働規制や燃料・車両価格の高騰といった構造的な原価上昇があります。生き残りには売上最大化(荷主開拓・運賃交渉)とコスト最適化(整備費用や運行効率の改善)を同時に進める必要があり、人材確保のための賃上げとも両立させる“経営力の強化”が不可欠です。

6位:特定技能外国人ドライバー採用

特定技能制度の対象に「自動車運送業」が追加され注目されたものの、現場では言語・文化の違いや受入体制の不足、手続きの複雑さなどから採用は思うように進んでいません。外国人労働者側にとってもドライバー職の魅力が十分とはいえない現状があり、日本人・外国人を問わず「選ばれる職業」にするためには、賃金・待遇の底上げと働きやすい環境整備が必要です。

5位:置き配の標準化検討

国交省が「置き配の標準化」を検討し始めたことで、宅配の現場では“対面手渡しが常識”という従来の商習慣に大きな転換点が訪れようとしています。置き配が一般化すれば再配達が減り、ラストマイル領域の人手不足緩和につながる一方、物流全体に占める宅配の割合は約10%とされ、業界全体へのインパクトには限界があります。むしろ、運行管理者としては「ラストワンマイルより前の工程、つまりBtoB輸送の効率化」が今後の本丸である点を押さえておく必要があります。置き配に象徴される“効率化”の流れは、今後、幹線輸送・支線輸送・集荷配達などBtoB領域にも及ぶ可能性が高いため、データ管理や運行体制の見直しに備えておくことが重要です。

4位:公正取引委員会による荷主調査・注意喚起

公正取引委員会が646社の荷主に対して注意喚起を行ったことで、長年黙認されてきた“荷主による不当な取引慣行”が一気に表面化しました。特に「不当な荷待ち」が独占禁止法上の問題になる可能性が示された点は、現場にとって大きな転換点です。これまで曖昧な慣習で行われてきた指示や待機も、契約内容に明記されていなければ違法性を問われかねない時代になったといえます。
運行管理者にとっては、①運送契約書の整備、②作業内容と対価の明確化、③荷待ち時間の記録管理など、日常業務のレベルで取引の“証跡”を残すことが今後さらに重要になります。また、2026年以降はCLO制度が本格化し、「荷主・元請・下請」の関係が見直される流れの中で、運送会社側から契約条件を改善要求しやすい環境が整っていきます。変化を追うだけでなく、“実務でどう証跡を残すか”が生き残りの鍵です。

3位:日本郵便のコンプライアンス違反

日本郵便が点呼違反により約2,500台の事業許可を取り消された件は、業界全体に「安全管理の基本を徹底せよ」という強烈なメッセージを投げかけています。点呼の未実施、飲酒チェックの不備は大手であっても見逃されないという象徴的な事例であり、運行管理者にとっては“日々の点呼・記録管理の重要性”を改めて突きつけられた形です。
さらに同社は業務の58%を外部委託する方針を示し、大規模な外注化が進むため、これに伴う仕事量の変動をはじめ「委託先の増加」「輸送網の再編」など、業界全体に波及する動きも想定されます。安全管理違反が自社だけの問題に留まらず、委託側・元請側にも影響する時代になったため、点呼・アルコールチェックの厳格化、記録の電子化、安全教育の実効性確認がより重視されることになります。業界全体がコンプライアンスモードに入った一年と言えるでしょう。

2位:トラック事業適正化関連法

2025年6月に成立した「トラック事業適正化関連法」は、物流業界の“多重下請け構造”や“不透明な運賃体系”を国が本気で立て直しに来たことを示す法律です。運送会社にとって重要なのは、

  • 5年ごとの許可更新制
  • 適正原価を下回らない運賃の確保
  • 委託次数(再委託)が2回以内に制限
  • 白トラック荷主の取り締まり強化

これらはすべて現場の運行管理・事務手続きに直結します。特に「委託次数の把握」は実務で最も厄介になる部分で、荷主・元請の委託階層が見える化されなければ守りようがありません。
運行管理者が今から備えるべきポイントは、運送契約・請求内容の整理、委託階層を把握するための台帳管理、実運送者の確認フローの整備です。
2026年以降段階的に本格施行されることから、今後は“グレーな取引”が急速に整理されていくと想定され、運送会社は取引先に対して適正運賃を主張しやすくなる環境が整っていきます。

1位:改正物流二法

2025年4月から段階的に施行されている「流通業務総合効率化法」と「貨物自動車運送事業法」の改正は、これまでの物流構造そのものを作り変えるレベルの大改革です。

  • 付帯作業(荷役・梱包等)の無償提供
  • 多重下請け構造
  • 不透明な契約・取引慣行

上記を正面から是正し、適正運賃を確保するための仕組みが制度として整えられました。運行管理者・事務担当者にとって重要なのは、

  • 付帯作業の契約明記義務
  • 対価を請求するルール化
  • 実運送体制管理簿の義務化
  • 物流統括管理者(CLO)の導入

特に、付帯作業の契約明記は“無償荷役”をなくす大きな転換点であり、実運送体制管理簿は日常業務の工数に直結するため、早期に運用ルールを整える必要があります。またCLO制度によって、荷主〜元請〜下請のサプライチェーン全体が見える化され、労務・運行・契約のすべてで“透明性”が求められる時代になります。

「運ぶだけ」からの脱却と、管理部門の真価が問われる分岐点

2025年の10大ニュースを振り返ると、共通して浮かび上がるキーワードは「曖昧さの排除」と「透明化」です。改正物流二法 やトラック事業適正化関連法 、そして公取委による厳しい監視 は、これまで現場の努力や我慢で成り立っていたグレーな商習慣が通用しなくなったことを示しています。

この変化の中で、運行管理者や事務担当者の役割は劇的に変化しています。これまでの業務は「荷物を運ぶためのサポート」と見られがちでしたが、今後は「契約内容を適正化し、会社の利益と安全を守る防波堤」としての機能が求められます。 日々の点呼記録、運送台帳の整備、契約書に基づいた付帯作業の請求管理ーこれらの一つひとつが、万が一の監査から会社を守り、適正運賃を獲得するための強力な武器になります 。

倒産リスクが高まる中で生き残る運送会社とは 、単にトラックを走らせる会社ではなく、「コンプライアンスと収益性をデータ(証跡)で管理できる会社」です。2026年は、管理部門の実務が経営の質そのものを決定づける、「物流管理のプロフェッショナル」へと進化する一年になるでしょう。

2025年の変化を乗り切るための「仕組み」づくり

今回のランキングでも触れた通り、2025年以降の物流業界では「法令遵守」と「収益確保」の両立がよりシビアに求められます。しかし、増え続ける管理業務や採用活動を、既存の人員とアナログな手法だけでカバーするのは限界を迎えつつあります。今後の実務においては、こうした課題を解決する業界特化型のデジタルツールを上手く取り入れ、業務プロセスそのものを見直すことが、結果として会社と従業員を守ることにつながります。

今回は、記事で挙げた課題解決の一助となるサービスを2つご紹介します。

1. 収支の見える化と事務負担の軽減に|クラウド業務支援システム【トラッカーズマネージャー】

「改正物流2法」への対応や適正運賃の交渉には、正確な原価・収支データの裏付けが不可欠です。トラッカーズマネージャーは、車両ごとの収支管理から、台帳管理、請求業務までをクラウドで一元化。煩雑な事務作業を効率化しながら、経営判断に必要なデータを可視化し、利益体質の会社作りをサポートします。

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2. ドライバー不足時代の採用戦略に|物流・運送業界専門求人サイト【トラッカーズジョブ】

賃上げや待遇改善が進む中で、求職者に自社の魅力を正しく伝え、ミスマッチのない採用を行うことが重要になっています。トラッカーズジョブは、運送業界に特化した求人プラットフォームです。一般求人サイトでは出会いにくい、経験豊富な即戦力ドライバーや意欲的な人材とのマッチングを支援します。

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