物流業界を取り巻く環境は厳しく、働き方改革の波は否応なしに押し寄せてきます。2005年の創業以来著しい成長を続ける株式会社キョウエイファイン様もまた例外ではありません。物流業界がアナログ要素は必須である事を理解している坂元代表ですが、同時にDX推進にも積極的です。現場と経営両方の目を持つ代表がなぜトラッカーズマネージャーを選択したのか、その視点を伺いました。
【お話を伺った方】
株式会社キョウエイファイン 代表取締役社長 坂元 貞仁 様
車両台数:76台(2022年3月時点)
【目的
・車両情報の一元管理 / 共有をラクにしたい
・車両毎のコストのみえる化をしたい
【課題】
・車両の最新の情報がリアルタイムで更新されていない
・情報を確認するために、過去の書類を遡って探す手間が発生していた
【今後の活用予定】
・可視化したデータをもとにコストの削減などを進めてい
目次
物流業界において「車両管理」は大きな課題
株式会社キョウエイファイン 代表取締役社長 坂元貞仁 様
—— 本日はよろしくおねがいします。まずは「キョウエイファイン」という社名の由来について教えてください。
坂元:「共存共栄」という当社の経営理念の中から「共栄」の文字だけを取って、そこに「明るく・元気に・健やかに」という意味を込めて、キョウエイファインという社号を作りました。
社員さんが楽しく働いてくれるよう、社員さんの人生が当社を通してより豊かになるよう、そして当社に縁成す全てのお客様・ひいては社会が豊かになるよう、社号には願いを込めています。 当社が手掛ける事業は、貨物運送・倉庫業・物流システムの開発・提案・一般派遣・一般旅客自動車という6つの業態で構成されており、営業所・倉庫は全部で9ヶ所、社員数はおよそ121名、車両台数は合計76台となっております。
—— 事業展開の面で車両管理などを課題とする同業種の企業は少なくないと聞きます。このあたりはどのような形で対応されているのでしょうか。
坂元:当社ではAzoopさんの「トラッカーズマネージャー」という運送管理クラウドを使っています。それまでは基本的にExcelで車両管理をしていました。ただ、ルールの制定や運用に関しては、なかなか適材適所とはいきませんでした。実は車両が増えていたとか、協力会社に売却していたとか、マトリックスはあっても整合性が取れていない状況だったんです。
点検整備に関しても整備会社任せで、アバウトに「この車は3ヶ月前にやったから来月点検ですよ」みたいな形になっていたのが、トラッカーズマネージャーの「車両管理プラン」を使ってからは、車両の情報を見える化できるようになりました。現在はその中身の情報を蓄積している段階です。
—— 情報の蓄積について、もう少し詳しく教えてください。
坂元:直近で言うと、車両に関する情報を蓄積していけば、例えば「この車買い替えようかどうしようか」っていうタイミングでシステムをチェックすると、修理代がかかっているトラックが一目で分かります。車両情報のチェックがしやすいので、判断する側としてはありがたい機能です。
導入前は、最新情報がリアルタイムで更新されていない状況でしたから、例えばトラック協会に提出している情報と運輸局に提出している情報で、車両台数の違いが出ることもありました。そこがストレスでしたね。
—— 導入後の評判はいかがでしたか?
坂元:基本的には一般社員ではなく、幹部社員がチェックする情報として管理しています。車検のアラートメール機能や管理を楽にしてくれる機能は幹部にも評価されています。
トラッカーズマネージャーのシステムは、2回くらい説明を聞いただけで使い方がイメージできた
—— 導入のきっかけについてお聞きしたいのですが、どんなことが導入の決め手になる最重要課題だったのでしょうか。
坂元:きっかけとしては、車両に対してどれくらいの整備費がかかっているのか、そこを明確にしたくて導入しました。例えば車検、同じ車両で20万円のケースと40万円のケースがあったら、管理する側としては中身が知りたい。何でこの年は40万円かかっているのかを詳しく知りたいんですよ。でも2〜3年前の書類なんて倉庫行きですから、わざわざ引っ張り出すのは結構ストレスだったんです。
トラッカーズマネージャーなら、そういった情報が自動でデータ化されます。入力を代行してもらうとしても、結局トラックのことを知っている人でないと細かい情報は入力できませんし、そのためにパートさんを雇っても教育コストは発生します。そういった手間がかからないのは非常にありがたいです。
—— なるほど。トラッカーズマネージャー以外で検討されていたサービスなどはありましたか?
坂元:あったんですけど、正直忘れちゃいました(笑)。やれることが多すぎるんです。多すぎても管理する側にとっては面倒なんですよ。他のサービスは画面も分かりにくかったし。トラッカーズマネージャーのシステムは、2回くらい説明を聞いただけで使い方がイメージできたので、それが大きかったですね。
—— 機能性・視認性の面で、もっとも優れていたのがトラッカーズマネージャーだと。
坂元:はい。触り始めてからすぐ、目的はある程度達成できてしまったので。率直に言うと難しかったんですよ、他のシステムは。調べたいことがすぐ見えない。
—— トラッカーズマネージャーは、説明を受けていたときのイメージと、実際に使ってみたときのイメージに齟齬がなかったんですね。
坂元:なかったですね。アフターケアもしっかりしていて、導入して間もない頃は2週間に1回くらいのペースでヒアリングしてくれました。それにレスポンスも早い。安心して使えますね。
—— 現場からの声も含めて、使用後の変化として特に大きかった部分は、やはり先ほどおっしゃっていた「車両の情報が確認できること」でしょうか。
坂元:そうですね。故障した車を修理して使うべきなのか、もう売却するべきなのかっていうところの判断が、システムでパッと見たときに分かりやすいですよね。
あとは、過去のエビデンスがしっかりと時系列で確認できます。「あれ1年前だったかな?2年前だったかな?」っていうアバウトな会議がなくなったというか。
また、データや請求書がPDFで残っているから、仮に入力内容に多少の違いがあっても原本がすぐに確認できる。これもありがたい。
—— 業界に精通している企業が提供しているサービスだから、どこに何があるのか一目瞭然なんですね。しかも、機能を分かりやすいように厳選している。
坂元:多分ですけど、ほとんどの同業者はそこを重視していると思いますよ。
—— 逆に、理想の車両管理という観点から考えたとき、これがあると嬉しいというか、追加して欲しい機能などはありますか?
坂元:理想の車両管理……例えば、本当にこれ理想ですよ。理想の理想なんですけど、システムで管理している車両情報にエビデンスが残っていれば、「このDPFの故障は日野さんの責任だよね」みたいにすぐ判断できますから、システム自体がエビデンスになるようなツールになってくれると嬉しいですね。
—— 故障・修理の観点から考えると、エビデンスの存在は大きいんですね。
坂元:そうなんです。我々が運用しているトラックというのは、運転手の運転の荒さだけじゃなくて、トラックメーカーの作りの荒さが問題になることもあります。故障する年代の車もあれば、故障しない年代の車もあるわけです。そういった情報をビッグデータとして固めて出してくれたら本当に助かりますし、当社としての期待度も高い部分です。
—— 導入前までは、車両をどうすべきか判断のタイミングが難しかったですか?
坂元:はい。基本的には修理してやっていきたいんだけど、3ヶ月に1回、例えば50万60万で修理している状況が見えていたら、そこで「もうこれは買い替えたほうがいいよね」っていうような判断ができるんです。
—— なるほど。コストと見合っているかどうか判断するには、確かな情報が必要なんですね。
坂元:そのあたりが、縦軸と横軸でしっかり見えるのは、大きなメリットだと思います。
—— 本サービスの利用をすることで、会社全体の営業利益にも変化があるものなのでしょうか。
坂元:まだ導入して間もないので現段階で断言はできませんが、採算性の観点からは良い結果が期待できそうです。3~5年運用すれば、成功体験を積み重ねる中で、社内独自のビッグデータというか、使える情報が集まると思います。
—— 新しい事業をスタートさせたり、経営方針を変化させたりする際にも、収集したデータが役立ちそうですね。もし、雇用と経費に関しても一元管理できたとしたら、経営方針にも変化が生まれそうでしょうか。
坂元:我々の商売というのは、トラックがあって、人がいて、それで売上が成立する商売です。お客様のご要望や売上という観点から、時にシビアな決断をしなければならない場面もあります。そういった事情もあって現状では何とも言えませんが、将来的には非常に重要なポイントになると思います。
—— お話を伺っている中で、株式会社キョウエイファインとして掲げているビジョンで未来が変わってくると感じます。今回のシステム導入でもそれが反映されている様ですね。
坂元:目指す未来はたくさんあります。売上増はもちろんですが、従業員の給料も20%くらい上げたいと思いますし、物流にこだわらず色々なことに挑戦したいですね。特に思うのは、社員さん一人ひとりが成長できる会社作りです。運転だけを仕事としてとらえるのではなく、人と人とが結びつく中で価値を提供できるようにしたい。そのためには自社のブランディングも必要だと考えています。
正確なデータで予算を管理すれば、2024年問題も乗り越えられる。
—— 昨今では法改正によって社員さんの働ける時間が限られるなど、雇用に関する事情も日々変わってきていると思います。例えば、2024年問題(自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制)についてはどのようにお考えですか?
坂元:正直、潰れる会社は全体の1割くらい出てくると思います、孫請け・4次請け・5次請けになってくると、ボロボロのトラックでギリギリの利益で運営しているのが現実ですから。燃料費が上がって、車両単価も上がって、整備費用も上がって、オイルも上がって、かつ人の雇用ができないから求人単価も上がっていて。固定費が上がる一方なんですよ。感覚としては現在の1.1倍くらいの給与にしないと、人は残らないでしょうね。ただ、国に文句を言ってもしょうがないので、守るべき制度はきちんと守っていかないといけない。
—— なるほど。
坂元:それでも、国の方針と働きたい人との間で、考え方の違いが生じるのはどうしようもないです。「6時に帰って何しよう?」みたいな話も聞きますから。
—— 仕事にやりがいを感じている社員さんにとっては、逆につらい話ですよね。
坂元:それで副業OKにするんだったら、結局一緒なんですよ。ウチで10時間働いて、副業OKで3時間働いたら、結局13時間労働でしょう?残業4時間やってるのと一緒になってしまう。
—— そこで、トラックの車両管理含めデータの一元管理ができると適切なコスト管理によって福利厚生や給料に回せるお金が増えてくるわけですね。
坂元:そうですね。少なくとも車両に関するコスト、車検・点検・整備・タイヤも含めて1つの車両を維持するだけで年間いくらかかるのかは可視化できます。平均値が出れば、年間100万円のところ150万円かかっていたら「これってちょっとかかりすぎだから、1回見直した方がいいよね」と判断できますし。あるいは、80万円くらいで収まる車も見つかる。「何でこうなったの?」を考察するにあたり、判断材料となるデータが数値化できているので、判断はしやすくなります。
—— コストが削減できれば、予算をかけるべきところに振り分けられる。そのような方向性で離職率を減らせれば、2024年問題を乗り越えていける会社になれるんですね。
坂元:そうですね。
デジタルとアナログを融合させ、棺桶の中でも「この会社で働いて良かった」と思ってもらえる会社を創り上げたい。
—— 1点お伺いしたいのですが、トラッカーズマネージャーへの今後の期待として、「こんな機能が欲しい」とか「現在の機能をこんな風に改善して欲しい」といった要望などありましたら教えてください。
坂元:そうですね。車両に関することで言うと、やっぱり事故の話は切り離せないので、そこをもう少し掘り下げて欲しいというのがあります。どんな事故を起こした車両なのか、どういう修復歴があるのか。これまでの管理でも修復履歴までは確認できたんですけど、その前の段階「どうして事故が起こってしまったんだろう?」という部分にまでさかのぼって個別に確認できると、管理上は非常に楽です。
—— 「なぜ事故が起こったのか」を知ることで、どんなプロセスで問題を未然に防ぐのか、改善策・対策を立てやすくなりますよね。
坂元:事象が1本線でつながっていくんです。点と点が。それが当社でこれから作り上げていきたいプロセスです。
現在のところ【事故が起こる→事故が起こった原因を確認する→車両を修理する】というプロセスを経てからトラッカーズマネージャーの出番となります。しかし、その過去の事情をすべてシステム上で管理できるようになると、社員側のミスが何だったのか可視化できるんです。例えば「この事故を起こしてしまったのは、こういうミスがあったからで、ミスを起こすとこれだけの費用がかかる」というのを、当事者だけでなく他のドライバーにも説明できる。
運転手を教育する観点から考えると、ものの見方とデータ・数値は密接に結びついていくので、良い情報があれば説明の説得力も増します。すると、一人ひとりのコスト意識も変わってくる。1件の事故で会社がどう傾くのか、逆に無事故継続で会社がどう進化していくのかが具体的にイメージできると、研修内容も変わってきます。
現時点で考えている好影響は特に教育観点です。社風や古参社員の考え方も変わると思います。導入から間もないのでまだデータを蓄積している段階ですからはっきりとした兆しが見えているわけではありませんが、データがより多くたまったら自社向けに統計を発信できるのでトラッカーズマネージャーの仕組みが活きてくると思いますね。
—— サービスが一過性でなく、業界特化型で自社と伴走してくれるサービスというのは、利用する側としては安心できそうですね。
坂元:業界を知らないシステム会社に頼んでも、欲しい機能のニュアンスとか、業者側が何を求めているのか、あんまり分かってもらえないまま話が進んでいくと思います。
—— トラッカーズマネージャーは「頼もしいパートナー」的な存在なんですね。
坂元:実際、車両管理に関しては全部お願いするわけですから。そこに関しては将来的にも一括でお願いしたいところです。
—— 最後に今後取り組みたいこと、ビジョンについてお教えください。
坂元:新型コロナ禍の状況で、社会情勢が不透明な中、たくさんの人たちが頑張ってくれています。そのような中で我々経営陣も、トラッカーズマネージャーのような新しい仕組みを導入して、物流DXを軌道に乗せようと、もっともっとデジタル化を進めようとしている状況です。
ただ、物流はデジタル一辺倒でやっていける業界ではなく、社員さんとの人間関係構築や取引先との関係構築など、会社自体の成長にはアナログな部分も捨てられません。必要な部分はしっかり残しつつ、社員さん全員に「いい会社だね」って言ってもらえるように、これから2〜3年かけて土壌を作り上げることが目標です。当社で働いてくれている人が、60歳になっても、70歳になっても、棺桶の中でも「この会社で働いて良かった」と思ってもらえるような、そんな会社を創り上げていきたいと思います。
—— 本日はありがとうございました。
坂元:ありがとうございました。
(聞き手:Shovellインタビュアー “さしみ”)