【運行管理】ドライバーの拘束時間が16時間を超えた場合罰則はある?改善基準告示の改正についても詳しく解説

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トラックドライバーの拘束時間とは、「始業から終業」までの時間です。また、トラックドライバーの休息期間とは、使用者の指揮監督下に置かれることなく自由に使える時間です。

拘束時間や休息期間についてはさまざまな規則があり、2024年に改正された内容もあります。

そこで今回は、拘束時間と休息期間などが定められた改善基準告示について、用語の意味や2024年に施行された改正内容などを解説します。

また、本記事は拘束時間や休息期間にフォーカスしていますが、まず改善基準告示そのものの内容を確認したい方は以下の記事をご覧ください。

関連記事:【2024年改正】改善基準告示:ドライバーの働き方改革に必要な知識と対応策

ドライバーの「拘束時間」とは?


トラックドライバーの拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの間、事業主などの使用者に拘束されている時間のことです。この拘束時間には、労働時間に仮眠時間や休憩時間を含めたすべての時間が含まれます。トラックドライバーの場合、労働時間には運転や整備の時間だけでなく、荷待ちなどの手待ち時間も含まれます。

2024年4月以降、改善基準告示の改正により、トラックドライバーの1日の拘束時間は原則13時間以内となりました。さらに、14時間を超える拘束時間が発生する場合は週に2回までを目安とする必要があります。また、1カ月の拘束時間は原則284時間以内、1年の拘束時間は3,300時間以内と定められました。

さらに、労使協定を結んでいる場合は拘束時間の上限を増やすことができますが、その場合でも1カ月あたり310時間、1年間で3,400時間と定められています。

参考:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」

2024年の改善基準告示とは?

改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)は、トラックドライバーの労働時間の改善を目的として、厚生労働大臣が告示したものです。この基準は、トラックドライバーの長時間労働を防ぎ、ドライバー自身の健康を守るだけでなく、交通事故の防止や住民の安全確保にも重要なものとなっています。

改善基準告示は1989年に策定され、1997年以降は改正されていませんでした。しかし、働き方改革関連法を踏まえて2022年12月に見直しが行われ、2024年に改正されました。この改正により、拘束時間の上限や休息期間について新たな基準が定められています。

なお、改善基準告示は法律ではないため、違反しても刑事上の罰則はありません。しかし、基準に違反すると、事業者に対して行政処分が下される可能性があります。

改正前の拘束時間の規制は?

改正前の改善基準告示では、1日の拘束時間は13時間以内が基本とされ、延長する場合でも最大16時間までです。また、15時間を超える拘束時間は週に2回までと定められ、1カ月の拘束時間は原則として293時間以内、特定の条件下では320時間まで延長が認められていました。

さらに、毎月の拘束時間の上限を定める労使協定を結ぶことで、1年間の拘束時間が3,516時間を超えない限り、1年のうち6カ月までは延長が可能とされていました。

【拘束時間の比較】

このように、2024年の改正により拘束時間の規制がより厳しくなり、トラックドライバーの労働環境の改善が図られています。

2024年の改正改善基準告示における休息期間とは


2024年の改善基準告示の改正では、拘束時間の上限だけでなく休息期間の基準も変わりました。休息期間について、詳しく解説します。

ドライバーの休息期間とは

休息期間とは、終業時刻から次の始業時刻までの間、使用者の拘束を受けない時間のことです。改正前の基準では、この期間は最低でも8時間以上確保する必要がありました。

また、仮眠時間を含む休憩時間は拘束時間に含まれます。休憩時間中はドライバーが指揮命令下にあるため、自由に使える時間とはみなされません。したがって、ドライバーが完全に自由に過ごせる時間が休息期間と定義されます。

さらに、休息期間と休日は別々に管理されるため、間に休日が含まれる場合は休息期間と休日を合わせて最低でも32時間(8時間の休息期間+24時間の休日)を確保しなければいけません。例えば、22時に終業し翌日が休みで、その次の日の0時から勤務を開始する場合、休息時間と休日の時間が合計26時間しかないため、基準に違反することになります。

2024年の改正基準後の休息期間

2024年の改正後の改善基準告示では、休息期間は継続して11時間以上与えるよう努めることが基本とされ、継続して9時間を下回らないようにする必要があると明記されました。

ただし、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は、以前と同じく継続して8時間以上(週2回まで)となります。そして、もし休息期間が9時間を下回った場合は、運行終了後に連続して12時間以上の休息を与えることが求められます。

このように、2024年の改正基準はドライバーの休息時間の確保をいっそう重視し、より具体的な基準が設けられました。

ドライバーの拘束期間と休息期間の特例


改善基準告示には、4つの特例が定められています。その特例について解説します。

2人乗務の特例

1台の自動車に同時に2人以上のドライバーが乗務する場合に適用される特例です。ドライバーが身体を伸ばして休息できる設備が車両にある場合、拘束時間は最大20時間まで延長でき、休息期間は4時間まで短縮できます。

さらに、車両内に長さ198cm以上、幅80cm以上の平面ベッドがあり、クッション材などで走行中の衝撃が緩和される設備が備わっている場合、拘束時間は24時間まで延長可能です。さらに、8時間以上の仮眠時間が確保できる場合には、拘束時間は28時間まで延ばすことができます。

分割休息の特例

継続して9時間の休息期間を確保することが難しい場合、以下の条件で休息期間を分割することが許される特例です。

・分割休息は1回3時間以上とする。
・休息期間の合計は分割回数に応じて、以下のとおりとする。
 ・2分割:10時間以上
 ・3分割:12時間以上
・3分割の休息期間が連続しないよう努力する。
・分割休息は一定期間内(1カ月程度)において全勤務回数の1/2を限度とする。

午前中と夜間に業務が分かれる場合などに適用されやすいですが、トラックドライバーの健康を維持するための配慮が必要です。

隔日勤務の特例

業務上やむを得ない場合、以下の条件で隔日勤務を認める特例です。

2暦日の拘束時間は21時間とし、勤務終了後の休息期間は20時間とする。

例外として、仮眠施設で夜間に4時間以上の仮眠を取れる場合は、2日間の拘束時間を24時間まで延長できます(2週間に3回が限度)。ただし、2週間の拘束時間は126時間を超えてはなりません。

フェリー乗船時の特例

フェリーに乗船している時間を休息期間として認める特例です。フェリーの乗船時間が8時間を超える場合、下船時刻を勤務開始時刻とみなします。

さらに、フェリー乗船時間を除いたあとの休息期間は、フェリーの下船時刻から勤務終了時刻までの時間の半分以上でなければなりません。例えば、フェリー下船後に6時間の拘束時間がある場合、最低でもその後の休息期間は3時間以上確保する必要があります。

以上が、ドライバーの拘束期間と休息期間に関する4つの特例となります。

ドライバーの拘束時間の管理をするときに作成すべき書類


改善基準告示により定められたドライバーの拘束時間の上限や休息期間の基準を守るためにも、運行管理業務にて作成しておくべき書類があります。その書類について解説します。

運転日報

運転日報とは、業務で自動車を使用した際に、業務中の運転状況を把握することを目的として、ドライバーの氏名や運転日時、走行距離といった情報を記録した書類です。運転日報は、「トラック運送などの貨物自動車運送事業を営む企業」や「事業で使用する車両が一定数を超える企業」であれば、法律により書類の記録・保管が義務づけられています。

参考:道路交通法施行規則 第九条の十 e-GOV 法令検索
参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第八条 e-GOV 法令検索

また、一定数以上の自動車を使用する事業者は、安全運転管理者を選任する必要がありますが、運転日報の備え付けと業務を終了したドライバーに情報を記録させることは、安全運転管理者の必須業務のひとつです。

運行指示書

運行指示書とは、運行予定時刻や経由地、休憩時間、到着時間といったドライバーの運行計画が記載された書類です。主に長距離輸送を行うトラック運送事業者に必要となる書類で、貨物自動車運送事業輸送安全規則により一般貨物自動車運送事業者などを対象に作成が義務づけられています。

自動車運送事業では、法令により点呼の実施が義務づけられています。基本的に点呼は乗務前・乗務後ともに対面で実施しますが、宿泊を伴った長距離貨物運送の場合は対面で点呼ができません。そのような場合には、運行指示書を運行管理者が作成し、業務途中で中間点呼を行う必要があります。

参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第九条の三 e-GOV 法令検索

タコグラフ

タコグラフとは自動車に搭載された運行記録用計器で、運行時間や運行距離、速度変化、瞬間速度などをグラフ化し、自動車の稼働状況を把握できます。「車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用車両」は、タコグラフの搭載と、記録の保管が国土交通省令で義務づけられています。

また、タコグラフのチャート紙に、必須記載事項を記入すると運転日報代わりにすることが可能です。

参考: 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第九条 e-GOV 法令検索

乗務基準

起点から終点までの距離が100キロメートル超の特別積合せを行う事業者は、乗務基準を作成し、その遵守のための指導・監督をしなければなりません。

特別積合せとは、不特定多数の荷主の貨物を1台の車両にまとめて積載し、定期的に幹線輸送する形態を指します。特別積合せの運行は夜間や長距離となることが多く、過労になりやすいという危険性があります。したがって、事業者は運行系統ごと(起点から終点までの距離が100キロメートル超のものに限る)に乗務基準を作成することが必要です。

そして、作成した乗務基準に基づいてドライバーを乗務させるよう、指導・監督することが義務づけられています。

参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第三条8 e-GOV 法令検索

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ドライバーの拘束時間や休息期間を踏まえて業務を進めよう


働き方改革関連法を踏まえて、2024年に改善基準告示が改正されました。それにより、拘束時間や休息時間などの基準が大きく変わっています。

改善基準告示は法律ではないため違反しても罰則はありませんが、国土交通省から行政処分が下される可能性があります。したがって、行政処分を受けないためにも、トラックドライバーの健康確保や国民の安全確保のためにも、運行管理業務を十分に行って改善基準告示を遵守するようにしましょう。