【物流関連2法改正対応マニュアル】運送事業者の知っておくべき対応を完全理解

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物流関連2法改正(1.流通業務総合効率化法、2.貨物自動車運送事業法)の法案が2024年4月に成立、5月に公布されました。

物流効率化を促進するために『流通業務総合効率化法』が改正され、荷主・物流事業者に対して新たな規制措置が設けられました。
物流の多重下請け構造対策として『貨物自動車運送事業法』が改正され、元請事業者が下請け事業者へ業務委託する際の適性化に関する新たな措置が設けられました。

本記事では、物流関連2法改正についての改正背景や求められる対応策などについて詳しく解説します。

物流関連2法改正


2024年4月26日に、「流通業務総合効率化法」「貨物自動車運送事業法」のいわゆる物流関連2法が成立し、同年5月15日に交付されました。
トラックドライバーの残業時間規制などにより、荷物が運べなくなり物流停滞が懸念されている「2024年問題」や軽トラック運送業における重大事故増加に対応するため、本改正が行われました。

流通業務総合効率化法

「流通業務総合効率化法」は物流効率化を目的とした法律です。
今回の改正で、物流事業者・荷主に対して新たに規制が設けられました。

物流事業者・荷主に対する施策

荷主・物流事業者に対し、より物流効率化を促進するための取り組むべき措置について努力義務が課されるようになりました。荷主・物流事業者に対する施策はそれぞれ下記になります。


※連鎖化事業者(フランチャイザー)=コンビニなど、フランチャイズチェーンの本部
適切な実施を確保する必要があると国が認めた場合は、荷主・物流事業者に対して国が指導・助言、調査・公表を行う場合があります。
【引用】:物資流通効率化法34条、52条、42条、61条

一定規模以上の物流事業者や荷主(特定事業者)についても、中長期計画の作成や物流統括管理者の選任などが義務付けられるようになりました。

取り組み状況が不十分だと認められた場合は、特定事業者に対して国が勧告や命令を行う場合があります。
【引用】:物資流通効率化法37条、45条、55条、64条

また、法改正により「流通業務総合効率化法」は、「物資の流通の効率化に関する法律」と名称が変更になりました。

貨物自動車事業法改正

「貨物自動車運送事業法」は、貨物自動車による輸送の安全と健全化を目的とした法律です。
トラック事業者間に対する施策、軽トラック事業者の2章にわけて詳しく説明します。

トラック事業者間の取引に対する規制的措置

物流の元請事業が下請事業者に対して、業務委託を行う際の適正化措置の実施として、下記施策が新たに設けられました。

    • 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け
    • 運送契約の締結などに際して、提供する役務の内容やその対価等(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む)について記載した書面による交付等を義務付け
    • 他の事業者の運送利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対して管理規定の作成や責任者の選任を義務付け

【引用】:改正貨物自動車運送事業法24条

トラック事業者に対する規制的措置

また、トラック運送業における重大事故を抑制するため、下記施策が新たに設けられました。

    • 事業の届け出を行った後、速やかに貨物軽自動車安全管理者を1人選任し、国土交通大臣に届け出提出の義務付け
    • 貨物軽自動車安全管理者に対し、定期講習の義務付け
    • 国交大臣への事故報告の義務付け

【引用】:改正貨物自動車運送事業法36条

法改正により、施行後3年以内に、荷待ち時間や荷役時間を年間125時間削減、輸送能力を16%増加させることが『2024年問題』に対応する中長期計画で示された政府目標において国の目標として掲げられています。

法改正の背景


トラックドライバーの残業時間規制により、物流停滞が懸念されている「2024年問題」、軽トラックの重大事故件数増加、運送業界の多重下請け構造の3つの背景から、物流関連2法が改正されました。
ここではそれぞれの問題について詳しく説明します。

「2024年問題」における物流停滞の懸念

2024年4月にトラックドライバーの残業時間規制が強化されました。

物流業界では人手不足が年々加速化しており、ドライバー1人当たりの時間外労働時間が長時間になっていることが問題視されています。
このことに加え、2024年4月にドライバーの労働時間に対する見直しがされました。ドライバーの時間外労働見直しにより、従来通りに荷物が運べなくなり物流停滞が懸念されていることが、いわゆる「2024年問題」です。
このまま何も対策を講じなかった場合、2024年には約14.2%、2030年には約34.1%の輸送能力が失われると言われています。

2024年問題の詳細については、以下の記事も併せてご参照下さい。
物流業界のドライバーは不足している?2024年問題の影響や企業の取り組みも解説

軽トラック運送業の事故件数増加

下記の図にもある通り、コロナ渦を境にネット通販の利用数が日に日に増加傾向にあり、今後も増え続けると予測されています。その影響もあり、元来増加傾向にあった通販業界の市場規模は、2016年から2020年にかけて約4兆円拡大しました。
今後もネット通販の利用は右肩上がりで増えていくと予測されています。


参考:EC(電子商取引)化の進展で、2035年には宅配便は倍増 | 日本経済センター

ネット通販の利用が増えるにつれて運送事業者の運ぶ荷物の量も比例して増えており、軽トラックの死亡・重症など重大事故も近年増大しています。

このような重大事故の増大を踏まえ、さらなる安全対策強化が求められています。

運送業に根付いている多重下請け構造

運送業界では、荷主から依頼を受けた大手会社が下請会社へ、一次請けをした会社がさらに下請けの会社へ依頼するといった多重下請け構造が一般的となっています。
運送事業者の中には、トラックを所有していない元請事業者も多いです。
多重下請け構造により、適時適所で運送を効率化できるというメリットはありますが、下記のような問題も起こっています。

      • 下請事業者になればなるほど労働時間が長くなる
      • トラブルが発生した際の責任の所在が分かりづらく、下請け事業者に責任が押し付けられやすい
        (元請や一次請けが上の立場、下請けは立場が下などの上下関係になりやすい)
      • 下請事業者の業績が悪化して倒産した場合、売掛金の回収が困難になる

    参考:運送業の多重構造の問題点とは?多重下請け是正のための法改正について解説【お気楽コラム】 | 運送業専門行政書士の全国集団運送業専門行政書士に依頼できるサイト トラサポ

    物流関連2法改正に伴う各事業者の対応次項


    物流関連2法改正に伴い、各事業者に対して規制的な措置が設けられました。
    各事業者ごとにどのような対応が求められているか見ていきましょう。

    物流事業者・荷主の対応項目

    物流事業者・荷主に対して、努力義務として「物流業務の効率化・合理化に対する取り組み」、「物流統括管理者の選定」の2点が求められるようになりました。

    「物流業務の効率化・合理化に対する取り組み」の対応策

    物流業務の効率化とは、主に下記2点を指します。

        1. ドライバーの荷待ち時間の削減
        2. トラックの積載率向上

    物流業務効率化のために、どのような対応策があるのか具体的に見ていきましょう。

    ドライバーの荷待ち時間の削減

    ドライバーの荷待ち時間の削減に有効な対応策として挙げられるのが、トラック予約受付システムです。

    トラック予約受付システムとは、ドライバーが倉庫に到着する予定の時刻をスマホなどを使って予約できるシステムで、予定時間に合わせて受付を行えばよく、倉庫に到着してからの待機時間を削減できるので、予定時間まで他の業務を行えるなど、時間をうまく使えるようになるなどのメリットがあります。

    トラックの積載率向上

    トラックの積載率向上に有効な対応策として挙げられるのが、共同配送や運行管理システムの利用です。

    共同配送とは、複数の荷主企業が同一の配送先へ荷物を配送する手段のことを指します。
    通常の配送の場合、各企業ごとにドライバーとトラックの手配が必要となりますが、共同配送の場合は1人のドライバーと1台のトラックで対応できるため、効率的に荷物を配送することが可能です。

    運行管理システムはルート最適化に必要な情報を可視化します。積載率や実車率などのデータをリアルタイムで把握できるため、効率的な配送計画を作成することが可能です。
    運行管理業務の効率化を目指すなら、トラッカーズマネージャーをぜひご検討下さい。配車表をクラウド上で表示でき、配送状況を一目で把握できるため、トラックの積載率向上にもお役立ち頂けるでしょう。

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    「物流統括管理者の選定」に対する対応策

    物流統括管理者の選定が義務*として求められるようになりました。物流統括管理者がどのような対応を行うのか、具体的に見ていきましょう。

    *物流統括管理者の選定が義務化対象=特定荷主
    参考:物流統括責任者とは?設置背景や役割・資格要件や報告義務についても詳しく解説! | ハコブログ

    上記の表にあるように、物流統括管理者は中長期計画の策定や管理に加え、適切な運送事業が運営できるように売上や生産数を調整する他、運送業務の効率化のための取り組みを推進するなどの対応を行います。

    また、物流統括管理者は、改正流通業務総合効率化法において「特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならない」と定められています。
    この特定荷主が行う事業運営上の決定とは物流効率化に関する取り組みに関するもので、その実行には、物流だけでなく調達や販売にわたる全体的な連携が必要となります。
    よって部門間を渡り歩くような大きな権限を持ち、長中期的な意思決定が可能な、執行役員以上のポジションの人間が物流統括管理者として適任であるといえます。

    トラック事業者の対応項目

    トラック事業者に対して、「、実運送体制管理簿の作成」「運送契約締結時の書面交付等の義務付け」「下請け適正化の努力義務化・一定規模以上の事業者への義務付け」の3点が義務付けられるようになりました。

    実運送体制管理簿の作成

    実運送体制管理簿とは、実運送事業者の名称や、運送区間、請負階層などを記載した表です。
    運送業界は特に、元請事業者からの2次請け、3次請けなど、多重下請け構造が常態化しており、問題視されています。
    この多重下請け構造の是正のため、実運送体制管理簿の作成が義務付けられるようになりました。

    参考:実運送体制管理簿【記入例】 | 一般社団法人 愛媛県トラック協会

    実運送体制管理簿の記載にあたり、運送区間・貨物の内容・実運送トラック事業者の名称・請負階層の記載が義務付けられているので注意して記載するようにしましょう。

    運送契約締結時の書面交付等の義務付け

    トラック事業者は、運送業務の内容や附帯業務量などの対価を記載した書面を交付しなければなりません。また、運送業務の申し込み者に交付した書面については1年間保存する必要があります。

    【引用】:トラック事業における書面化の推進について | 国土交通省

    上記の例に倣って記載し、交付するようにしましょう。

    下請け適正化の努力義務化・一定規模以上の事業者への義務付け

    元請事業者が運送業務を下請け事業者に依頼を行う際は、下請け発注に関する一定の健全化措置を行うことが努力義務となりました。

        • その利用する運送に要する費用の概算額を把握した上で、当該概算額を勘案して利用の申込みをすること
        • 自らが引き受ける貨物の運送について荷主が提示する運賃又は料金が前号に規定する概算額を下回る場合にあっては、当該荷主に対し、運賃又は料金について交渉をしたい旨を申し出ること
        • 当該他の一般貨物自動車運送事業者が更に他の一般貨物自動車運送事業者の行う運送を利用する場合に関し二以上の段階にわたる委託の制限その他の条件を付すること

    【引用】:改正貨物自動車運送事業法24条1項

    物流関連2法に対応している運行管理システムとは?


    物流関連2法改正に伴い、より運送業務の管理体制強化が必要とされてきています。
    特に車両を保有している物流事業者は、運送事業をより効率化していくためにも今回の法改正内容は必ず念頭に入れておきましょう。
    運送業務の効率化を図るためにシステムを導入するにあたり、法改正に対応したものや適宜アップデートが行われるものを選ぶことが重要です。

    トラッカーズマネージャーとは?

    トラッカーズマネージャーとは、経営と現場をつなぐ運送業務支援サービスです。
    車両台帳や運転者台帳などの帳票管理から、配車・運行計画、請求書発行など、運送事業に必要なすべての機能を網羅しているサービスです。
    従来紙やExcelなどで行っていたアナログ管理からクラウド上での管理に移行されるので、管理がより楽になるほか、一元管理した情報を蓄積・グラフなどに可視化することも可能なので経営分析のサポートにもお役立て頂けます。

    トラッカーズマネージャー導入のメリット

    物流関連2法改正に伴い、トラッカーズマネージャーでも実運送体制管理簿の作成時に必要な実運送会社、請負階層を案件毎に記録することが可能となりました。
    また、上記のように日々登録した情報を出力することもできるので、実運送体制管理簿の作成も容易となります。

    トラッカーズマネージャーの運行管理プランでは、配車や運行計画から、請求書の発行・送付までクラウド上で一元管理が可能です。
    また、物流関連2法改正に伴い実運送会社・請負階層の管理や、実運送体制管理簿の出力なども対応しています。無料トライアルも可能なのでぜひご検討下さい。

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