道路交通法の改正により、2022年4月1日からアルコールチェックの義務化対象が拡大されました。さらに、2023年12月からはアルコール検知器を使った飲酒確認が義務付けられています。
そこで今回は、アルコールチェックの義務化に関する概要、対象となる人々、事業所の準備事項、アルコールチェックの手順について詳しく解説します。
目次
アルコールチェックの義務化とは?
道路交通法施行規則の改正により、2022年4月1日からアルコールチェックの義務対象が拡大されました。業務で使用する自動車が自家用であっても、一定数以上の自動車を保有している場合、安全運転管理者が運転者の酒気帯びを目視で確認し、その記録を1年間保存する必要があります。
さらに、2023年12月1日からは、アルコール検知器を使った酒気帯び確認と、検知器について正常に動作し、故障がない状態を常に維持しておくことが義務付けられました。
つまり、営業用自動車(緑ナンバーの車両)だけでなく、自家用自動車(白ナンバーの車両)を一定数以上使用する事業者も、アルコール検知器を用いてアルコールチェックを実施しなければならないということです。
アルコールチェックが義務化された背景
道路交通法施行規則の改正は、業務で使用される自家用自動車に対する飲酒運転防止対策を強化する目的で行われました。この背景には、自家用自動車による悲惨な事故があります。
2021年6月28日、千葉県八街市で下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、5人が死傷しました。トラックの運転手は日常的に飲酒運転をしており、事故当日も飲酒をしていました。その影響で居眠り運転となり、小学生の列に気づかずに衝突してしまったのです。
このトラックはいわゆる白ナンバーで、業務用でありながら自家用自動車として使用されていたため、アルコールチェックが義務付けられておらず、チェックも行われていませんでした。
この事故を受けて、アルコールチェックの義務化対象が自家用自動車にも拡大されることになりました。
アルコールチェック義務化の対象
アルコールチェックが義務付けられているのは、次のような事業者です。
- 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用している事業者
- 乗車定員10人以下の自動車を5台以上使用している事業者
※自動車の使用の本拠ごとに、業務に使用する台数をカウントします。
※大型自動二輪車・普通自動二輪車は、1台を0.5台として計算します。
これらの条件に該当する事業者は、安全運転管理者を選任し、アルコールチェックを実施しましょう。
安全運転管理者を選任する必要のある事業所
安全運転管理者制度により、一定台数以上の自動車を使用する事業者は、事業所ごとに安全運転管理者を選任する必要があります。一定台数以上とは、「乗車定員が11人以上の自動車を1台以上」または「その他の自動車を5台以上」のことです。
さらに、自動車の台数が「20台以上40台未満」の場合は、副安全運転管理者を1人選任しなければなりません。「40台以上」の場合は、20台ごとに新たに1人の副安全運転管理者を選任する必要があります。
安全運転管理者については以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:【最新版】安全運転管理者の役割とは?
アルコールチェック義務化に対して準備する項目
アルコールチェック義務化に対して、事業者は事前にしっかりと準備をしておく必要があります。
ここでは、対象となる事業所がやるべきことについて解説します。
安全運転管理者・副安全運転管理者を選ぶ
まず、安全運転管理者を選任しましょう。使用する自動車の台数によっては、副安全運転管理者も選任する必要があります。安全運転管理者および副安全運転管理者を選任した後、選任日から15日以内に都道府県公安委員会に届け出を行わなければなりません。
【安全運転管理者・副安全運転管理者の要件】
※「酒酔い・酒気帯び運転などの違反行為をして2年経過していない者」といった欠格事項もあります。
アルコール検知器を準備する
アルコールチェックにはアルコール検知器の使用が必要です。アルコール検知器は、呼気中のアルコールを検出し、酒気帯びの有無やアルコール濃度を警告音、警告灯、数値などで知らせる機能があれば問題ありません。どの製品を選ぶか迷ったときは、アルコール検知器協議会のWebサイトで紹介されている、認定基準を満たした製品の性能を参考にするとよいでしょう。
また、アルコール検知器は正常に動作し、故障がない状態を常に維持しておくことが重要です。電源が確実に入るか、故障や損傷、不具合がないかを定期的に確認することが必要です。
アルコールチェックの記録作成や保管体制を整える
アルコールチェックの記録は1年間保存する必要があるため、事業所内で適切な記録作成と保管の体制を整えましょう。まず、記録すべき項目を決め、それにもとづいたフォーマットを作成します。さらに、ファイルの整理方法や保管場所などのルールも明確に定めておくとよいでしょう。
アルコールチェックに限らず、車両の台数が多い場合、記録や情報を紙で保存すると管理が非効率になりがちです。そのため、デジタル化やペーパーレス化を推進することをおすすめします。
運行管理におけるアルコールチェックの手順
前述のように、一定数以上の車両を使用する事業者(安全運転管理者を選任している事業者)にはアルコールチェックの実施が義務付けられています。では、具体的にアルコールチェックはどのように行えばよいのでしょうか。
ここでは、アルコールチェックの手順と運用管理のポイントを紹介します。
運転の事前事後にアルコールチェッカーを使って確認する
運転前後に安全運転管理者が立ち合い、ドライバーが酒気を帯びていないかを目視などで確認します。ドライバーの顔色や呼気のにおい、声の調子、体の動きなどを観察する目視確認の後、アルコール検知器を使ってアルコールの有無や濃度を測定します。
通常、アルコールチェックは対面で行う必要がありますが、ドライバーが直行直帰する場合などは、携帯型アルコール検知器を持たせて、以下のような方法での確認も認められています。
- カメラやモニターなどによりドライバーの顔色などを確認し、アルコール検知器による測定結果を確認する方法(IT点呼型)
- 携帯電話や業務無線などの運転者と直接対話できる方法により応答の声の調子などを確認し、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法(電話点呼型) など
※安全運転管理者による確認が難しい場合は、副安全運転管理者やその補助者がアルコールチェックを行います。
確認内容を記録する
アルコールチェックを行ったときは、以下の事項を記録しましょう。
- 確認者名
- 運転者
- 確認日時
- 確認方法
- アルコール検知器使用の有無
- 対面でない場合は具体的な方法
- 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
以下は、国土交通省が公開している記録簿の記入例となります。
法律で決められた書類様式はないため、自社で様式を用意することも可能です。国土交通省などでモデル様式をダウンロードできるため、はじめて作成する場合の参考にすることをおすすめします。
記録内容を保存する
安全運転管理者は記録内容を確認し、必要に応じて修正を依頼します。記録に問題がなければ、その記録は1年間保存されます(1年間の保存は義務です)。記録は紙媒体でもデータでも保存可能です。
運行管理におけるアルコールチェック実施時に押さえておきたいポイント
アルコールチェックを実施するうえで、気をつけておきたいポイントを解説します。
業務目的で運転するドライバーが対象となる
アルコールチェックの対象者は、業務で運転する人です。そのため、一定数以上の車を保有している事業所(安全運転管理者を選任している事業所)では、事業所のトラックで自社の荷物を運んだり、社用車で取引先を訪問したりする場合に、アルコールチェックを実施する必要があります。
また、社用車ではなく自分の車を業務で使用する場合も、アルコールチェックの対象となります
運転前後の2回検査する
アルコールチェックは、運転前だけでなく運転後にも行います。運転の直前や直後に毎回行う必要はありませんが、業務の開始前や出勤時、業務の終了後や退勤時に実施すれば問題ありません。
原則として安全運転管理者が対面で行う
アルコールチェックは通常、安全運転管理者が対面で行います。しかし、常に安全運転管理者がチェックを行うのは難しい場合があります。
そのような場合、副安全運転管理者や安全運転管理者の補助者がチェックを行うことができます。
もし安全運転管理者以外の者がアルコールチェックを行い、酒気帯びが確認された場合は、すぐにその事実を安全運転管理者に報告してください。その後、必要な対応について指示を仰ぐか、安全運転管理者から運転者に運行中止の指示をしてもらいましょう。
直行直帰により対面が難しい場合の対処法
運転者が直接現場に向かう場合や遠隔地にいる場合、携帯型アルコール検知器を持たせて対面での確認と同等の方法で検査を行います。
具体的には、スマートフォンなどでビデオ通話を行い、運転者の顔色を確認します。または、携帯電話でアルコール検査の結果を報告させ、声の調子を確認する方法もあります。この場合、アルコール検知器の結果画面を撮影した写真を運転者から送ってもらうのもよいでしょう。
アルコールチェックを怠った場合の罰則
アルコールチェックを怠った場合、直接的な罰則はないものの、安全運転管理者の業務違反に該当します。公安委員会により安全運転管理者を解任されたり、命令違反に対して罰則が科せられたりするおそれがあります。なお、過去2年以内に公安委員会から解任命令を受けた方は、安全運転管理者や副安全運転管理者に選任できません。
また従業員が飲酒を行って運転をした場合、運転者と車両提供者の企業は下記の罰則を受けます。
- 酒酔い運転:5年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金
- 酒気帯び運転:3年以下の懲役あるいは50万円以下の罰金
酒類の提供者や車両の同乗者にも罰則があります。加えて、運転者が酒気を帯びていると知りながら運転を指示した場合、使用者・管理者は刑事責任を負う可能性もあります。
運行管理においてアルコールチェックは必須事項
道路交通法の改正により、営業用・自家用のナンバープレートに関係なく、一定台数以上の自動車を使用する事業者は、アルコールチェックを義務化されることになりました。
従業員による飲酒運転の罰則を避けるために、運転者のアルコールチェックとその記録を適切に行いましょう。
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