運送業界で重視されている労務管理とは?課題やドライバーの管理を効率化する方法も解説

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運送・物流業界では、ドライバーの安全を守り、時間外労働の制限に対応するため、拘束時間や休息期間を適切に管理する必要があります。しかし、運送・物流業界の労務管理は多くの課題があり、対応に苦慮している方も少なくありません。

そこで今回は、2024年問題を中心に、運送・物流業界が抱える労務管理の問題点とその解決策についてわかりやすく解説します。

運送・物流業界で労務管理が重要視されている理由


近年、ECサービスの普及により荷物の配送が小口化し、配達回数が増加しています。この影響で、ここ20年で物流量が著しく増加しました。それに伴い配送ニーズが急速に高まっていますが、運送・物流業界の有効求人倍率は全職業平均の約2倍となっており、人手不足が深刻な問題となっています。その結果、ドライバー一人あたりの労働時間が長くなり、過剰労働が慢性化しているのが現状です。

こうした問題に対処するため、政府は働き方改革関連法を改正し、ドライバーの労働条件改善に取り組んでいます。企業もこの法改正に対応し、新しい労働基準に従うことが義務付けられています。

この背景から、ドライバーの労務管理は業界全体で一層重要視されるようになっています。

運送・物流業界における2024年問題とは?

物流業界における2024年問題とは、2024年4月から適用される時間外労働の年間960時間上限規制や、改正改善基準告示により、ドライバーの労働時間が短縮されることから生じる輸送効率の低下や業界全体のコスト増加といった問題を指します。

2024年4月以降、特別条項を設けた場合でも、ドライバーの時間外労働は年間960時間が上限となります。また、拘束時間も削減され、休息期間もこれまでより長く取ることが義務付けられるため、一人あたりの労働時間が短縮される企業が増える見通しです。この結果、業界全体で輸送能力が低下し、貨物の遅延や運賃の上昇が発生する可能性が懸念されています。

もし2024年問題に対して有効な対策を講じなかった場合、2024年には輸送能力が14.2%不足し、さらに2030年には34.1%の輸送能力が不足すると試算されています。加えて、労働時間の短縮によってドライバーが1日に運べる荷物の量が減少し、その結果、運送業者の売上や利益に影響が出る可能性があります。

運送・物流業界における2024年問題については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

関連記事:物流業界のドライバーは不足している?2024年問題の影響や企業の取り組みも解説

労務管理に関わる働き方改革関連法の改正による変更


働き方改革関連法の改正で、運送・物流業界に特に影響を与える労務管理の変更点について、解説します。

時間外労働の上限規制

労働基準法では、労働時間を1日8時間、1週間40時間以内とすることが原則です。労使間で36協定(労働基準法36条に基づく協定)を締結した場合、時間外労働は月45時間、年間360時間まで認められます。さらに特別条項付きの36協定を締結した場合でも、時間外労働は年間720時間までが上限です。

ただし、ドライバーについては特別な取り扱いがされています。2024年4月以降、特別条項付き36協定を締結する場合、ドライバーの年間時間外労働の上限は960時間(月平均80時間)となりました。この上限を超えて残業を命じた場合、6カ月の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

拘束時間・休息期間・連続運転時間の基準改正

2024年4月の改善基準告示の改正により、拘束時間・休息期間・連続運転時間の基準も改正されました。

【拘束時間】

【1日の休息期間】

※宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで継続8時間以上の休息を認められます。この場合においても、一の運行における休息期間のいずれかが9時間未満の場合、運行終了後に連続して12時間以上の休息を与える必要があります。

【連続運転時間】

1日の休息期間や拘束時間が延長されたため、ドライバーのスケジュール管理において新しい基準を守ることが重要です。

割増賃金率の引き上げ

働き方改革関連法により、中小企業に適用されていた割増賃金率引き上げの猶予期間が終了し、2023年4月からは中小企業も月60時間超の時間外労働に対して、50%以上の割増賃金を支払う必要があります。この背景には、長時間労働の抑制を図る狙いがあります。

また、月60時間超の時間外労働が深夜時間帯(22時から翌5時)に行われた場合、深夜割増(25%以上)が加算され、割増賃金率は75%以上となります。

長時間労働に伴う人件費の増加により、これまで以上に人材を確保し、一人あたりの労働時間を短縮することの重要性が増しています。

運行管理業務におけるドライバーの労務管理の内容


それでは、運行管理業務において、具体的にどのような労務管理が行われるのでしょうか。

労働時間の管理

労務管理では、勤務実態を把握し、労働時間を適切に管理することが重要です。

具体的には、タコグラフや運行日報を活用してドライバーの勤務状況を定期的に確認し、時間外労働の上限(年間960時間)を遵守します。また、拘束時間、休息期間、連続運転時間の基準を守るためにシフト調整や運行計画の見直しを行い、ドライバーの負担を軽減する対策を講じます。

健康状態の管理

ドライバーの労務管理では、ドライバーが安全に運転業務を遂行できるよう、健康状態も適切に管理することが求められます。

そのための重要な業務の1つが点呼の実施です。点呼では、ドライバーからの報告をもとに健康状態や精神的な疲労、コンディションを把握し、疾病や疲労、睡眠不足、酒気帯びなど、安全運転に支障をきたす恐れがある場合には乗務を控えてもらうなどの対応を取ります。

また、運転速度の管理や適切な休憩時間の指示など、安全確保に必要な指導を行うことも不可欠です。さらに、ドライバーが十分な睡眠や休息を取れるよう、休憩施設を快適に維持することも大切な業務の一環となります。

運行管理業務におけるドライバーの労務管理でよくある課題


運行管理では、ドライバーの労務管理が重要であることは多くの企業で認識されています。しかし、実際に適切な労務管理を行うことは簡単ではなく、さまざまな課題が生じることがあります。ここでは、ドライバーの労務管理に関するよくある課題についてご紹介します。

労働時間が正確に把握できない

労務管理でよく見られる課題の1つが、管理者がドライバーの労働時間を正確に把握できないことです。この背景には、勤怠情報の取得をドライバーの自己申告に依存している点があります。

また、ドライバーは日をまたぐ勤務や直行直帰、早朝や深夜勤務など勤務時間が不規則であるため営業所外にいることが多く、管理者が直接労働時間や休憩時間を把握しづらい状況にあります。

特に、長距離輸送や日をまたぐ勤務では、自己申告にもとづいて勤怠管理を行わざるを得ない企業も多く、これが労働時間の正確な把握を困難にしている一因となっています。

管理と集計が煩雑になる

ドライバーごとに雇用形態や勤務時間、賃金体系が異なる場合、手作業で勤怠情報を管理・集計するのは時間と労力がかかります。ドライバーが増えるほど、その手間はさらに増大するでしょう。

こうした状況で手作業による管理を続けると、計算ミスや集計ミスといったヒューマンエラーが発生するリスクが高まるため、注意が必要です。

このような問題を解決するためには、管理業務を簡略化・自動化できる勤怠管理システムの導入が効果的です。

手書きによる書類作成でミスが生じやすい

労務管理のための書類がドライバーによる手書きの場合、ミスが発生しやすいという問題もあります。手書きでは、記入漏れや記憶違いなど、ヒューマンエラーを避けるのは難しいです。

さらに、紙ベースの書類は紛失のリスクも伴います。例えば、「疲れて記録をつける前に寝てしまった」「業務が立て込んで終了時間を記録し忘れた」などの理由で、運転日報が曖昧に処理されることもあるでしょう。

ドライバーの労働時間の記録が不正確であれば、管理者が実態を正確に把握し、適切に管理するのは困難になります。

労務管理でよくある課題の解決策


ドライバーの労務管理においてよく直面する課題には、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、具体的な解決策を2つご紹介します。

改正労働基準法を見据えた労務管理を徹底する

時間外労働の上限規制や改正改善基準告示の内容を理解し、それに合わせた労務対応を進めましょう。

まずは、正確に時間外労働や拘束時間、休息期間を把握するため、スマートフォンなどを利用した始業・終業時間の打刻が可能なクラウドサービスの導入を検討することが有効です。また、業務時間の適正化と効率化を図るために、車両管理システムや予約受付システムの導入を推奨します。

さらに、走行距離の減少に伴う収入減少が懸念されるドライバーには、手当の見直しや福利厚生の充実を図るなどを行い、従業員の満足度を向上させる対応も求められる可能性があります。

一元管理できるシステムを導入する

労務管理機能を有する一元管理システムを導入することも、課題解決に非常に効果的です。

多くのシステムは、他システムとのデータ連携ができないか、連携できても複雑な工程を必要とします。だからこそ、業種に特化し、必要な機能をすべて備えた一元管理システムの導入により、業務効率を大幅に向上させることが可能です。

例えば運送業向けの管理システムとして、トラッカーズマネージャーがあります。トラッカーズマネージャーは車両やドライバー、運行に関連する各種情報を一元管理できるため、業務全体を効率化できます。

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2024年問題を見据えて労務管理を正確に実施しよう


2024年問題とは、時間外労働の上限規制と改正改善基準告示によって、ドライバーの労働時間が短縮されることに伴い発生する問題です。適切な対策を講じない場合、運送能力が不足するだけでなく、企業内での人材不足も深刻化する恐れがあります。

こうした労務課題に対応するためには、システム導入による業務効率化や、ドライバーの収入減少を防ぐための手当や福利厚生の充実が重要です。2024年問題を見据え、適切な対応を進めましょう。

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