高所作業車とは、高い場所で作業するために人が乗り込んだカゴが昇降する機能を持つ車両のことです。厚生労働省の定める「労働衛生安全規則」が適用される特殊車両に該当します。本記事では、高所作業車の主な種類や運転に必要な資格、人気メーカーなどを紹介します。 参考:厚生労働省高所作業車構造規格
目次
高所作業車とは?
「高所作業車」とは、リフト車とも呼ばれ、建設現場をはじめ高い場所で人が作業できるように、作業床を昇降できる装置が備わった車のことです。作業床とは人が作業を行うための足場となる床をさします。 作業床が常時水平に保たれるように作業床平衡装置やジャッキ自動水平装置と呼ばれる特有の装置が備わっている点も特徴です。
高所作業車における定義
高所作業車は高所作業車構造の規格によって明確に定義されています。
- 場所の制限なく自走が可能なこと
- 作業床の昇降に人力以外の動力が使用されていること
- 作業員を乗せた状態で、2m以上の高さまで上昇可能な作業床付きの昇降装置ならびに走行装置が備わっていること
高所作業車として認められるためには、上記3項目を満たす必要があります。
高所作業車の主な用途
高所作業車は高所での作業が必要な様々な現場で使用されています。また、使用場所は屋外が主流ですが、動力源や重量などに配慮した屋内用の高所作業車も存在しており、用途に応じて使い分けることも可能です。 代表的な使用シーンとしては以下が挙げられます。
- 電気などの設備整備
- 空調といった設備の保守点検
- 広告の設置
- 高層住宅の引越し
- テント設営
- 倉庫の在庫確認
このように、建設現場に限らず高所作業車の使用シーンは非常に幅広いのが特徴です。
高所作業車の主な種類
高所作業車の主な種類としては次の2つが挙げられます。
- 3つの走行装置
- 4つの作業装置
いずれも、高所作業車を構成している大事な装置ばかりです。装置の種類や組み合わせによって、高所作業車にはさまざまな種類があり、利用に適したシーンが異なります。上手く使い分けられるように、ここでは各種類について詳しくみていきましょう。
3つの走行装置
高所作業車の走行装置としては、次の3つが挙げられます。
- トラック式:貨物トラックの荷台に昇降装置を取り付け、トラックを走行装置として使用しているタイプ
- ホイール式:専用台車に自動車と同じく4つのタイヤを装着しているタイプ
- クローラ式:タイヤの代わりに「キャタピラ」を装着し、2つのクローラベルトで駆動・走行するタイプ
このうち、公道走行できるのはナンバープレートが付いているトラック式のみです。
4つの作業装置
高所作業車の作業装置としては次の4つが挙げられます。
- 伸縮ブーム型:ブームがアンテナのように伸び縮みするタイプで普及率が最も高い
- 屈折ブーム型:ブームが折れ曲がるタイプで、障害物をかわせる
- 混合ブーム型:伸縮・屈折ブーム両方の特性を持っており、作業床の移動可能範囲が広い
- 垂直昇降型:作業床を垂直に上下させられるタイプで、狭小現場と相性がよい
このように装置ごとに様々なタイプがあるため、使用シーンによって上手く使い分けなければなりません。 なお、高所作業車の詳しい種類については次のページでも解説しています。ぜひ参考にしてみてください。 「高所作業車の種類を構成する3つの装置とは?装置ごとの特徴も紹介」
高所作業車の運転に必要な資格は2種類
高所作業車の運転に必要な資格として次の2種類が挙げられます。
- 高所作業車運転技能講習
- 高所作業車運転特別教育
いずれも高所作業車の運転には欠かせない資格です。ただし、講習によって内容や受講時間が異なる点や、資格によっては携われない業務もあります。 資格を取得した後、業務ができないという事態を避けるためにも、本章ではそれぞれの資格内容について確認しておきましょう。
高所作業車運転技能講習
作業床の高さが10m以上の高所作業車を操作する場合は「高所作業車運転技能講習」を受講しておく必要があります。技能講習は「学科講習→学科試験→実技講習→実技試験」で構成されており、学科・実技の両試験に合格しなければ資格を取得できません。
- 17時間
- 14時間
- 12時間
受講時間は上記3時間で、受講時に保有している資格によって変わります。受講時間ごとに費用も異なるため、保有している資格が免除対象かどうか申込時に確認しておくとよいでしょう。
高所作業車運転特別教育
操作する作業床の高さが10m未満の高所作業車であれば「高所作業車運転特別教育」の受講だけでも十分でしょう。特別教育の場合、試験などは特になく、9時間の講習を受けるだけで修了証が交付され、資格を取得できます。 また、技能講習と同じく受講時に保有している資格によっては講習の1部免除が可能です。ただし、高所作業車運転特別教育の修了者では作業主任者にはなれないため、作業主任者を目指す場合は、高所作業車運転技能講習を受講しなければなりません。 なお、高所作業車の資格に関するさらに詳しい内容は、次のページでも解説しています。 「高所作業車の運転に必要な資格は2種類!取得に必要なものと手続き」
高所作業車の人気メーカー4選
高所作業車の人気メーカーとして次の4社が挙げられます。
- タダノ
- JLG
- AICHI
- ワイケー
いずれも、高所作業車業界では有名なメーカーばかりです。メーカーごとに様々な特徴があるため、高所作業車の購入を検討している場合、自社に最適なメーカーを選択しなければなりません。ここでは、各メーカーの特徴について詳しくみていきましょう。
タダノ
「タダノ」はクレーン車が主力のメーカーですが、高所作業車にも注力しており、トラック式の高所作業車のラインナップが非常に豊富です。製品によっては最大地上高が37.4mに到達する伸縮ブーム型の高所作業車もあります。 地上高37.4mは12~13階建のマンションに相当するため、大型貨物船の造船所などに最適です。 参考:タダノ HP
JLG
「JLG」はアメリカの高所作業車メーカーの1つで、あらゆる高所作業を実現させるために、多種多様な製品を開発・販売しています。中でも「400AJPN」は高所作業車でも種類が少ないバイエナジー式を取り入れた屈折ブーム型の高所作業車です。 水平かつ平行に作業床を移動させられることから、設備の保守点検に適しており、屋内外問わず使用できます。 参考:JLG HP
AICHI
「AICHI」は日本を代表する高所作業車メーカーで、自走式高所作業車のラインナップが豊富なだけでなく、トラック式高所作業車を多く取り揃えています。中でも「スカイマスターWZ09ASM」は定員4~5名が乗り込んでも余裕の広さを誇る伸縮ブーム型の高所作業車です。 一般的な伸縮ブーム型の高所作業者の定員が2名以下のため、その広さがお分かりいただけるかと思います。 参考:アイチコーポレーション HP
ワイケー
「ワイケー」も日本の高所作業車メーカーで、大きく分けてトラック式と小型自走式の2つの高所作業車を販売しています。その中でも「タワーステージYX50TG」は貨物登録が可能で、デッキの上に貨物を載せて公道での走行が可能です。 そのため、高所作業車とは別に荷物運搬車を用意しなくて済み、運搬車の運用コストを削減したり、作業効率を高めたりできます。 ワイケーの「PC40S」は、顧客ニーズに応えて誕生した小型自走式モデルです。デッキを旋回させられることから、障害物が多い場所で威力を発揮できるでしょう。 参考:株式会社ワイケー HP
高所作業車は作業現場で欠かせない存在
建設現場を皮切りに、造船所や造園、工場・倉庫といった施設内外など、現代の高所作業において安定した作業床で作業が行える高所作業車は欠かせない存在です。そのため、高所作業車の資格を取得していれば、多くの作業現場で活躍できるでしょう。 しかし、高所作業車といっても「3つの走行装置」「4つの作業装置」と装置の種類が豊富なため、装置の組み合わせ次第で様々な高所作業車があります。また、メーカーごとに特徴や強みも異なるため、自社の使用環境や現場状況に最適なものを選び、高所作業車を上手に活用していきましょう。