車両管理規程とは?必要な理由から掲載すべき内容、違反した際の罰則についても解説

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車両管理規程とは、企業が業務用車両の使用に関して定めたルールと基準を記した文書で、この中には安全性の確保、法規の遵守、運用コストの最適化といった要素が盛り込まれています。

車両の利用に関連するさまざまな課題を管理し、効率的な運用を実現するために、車両管理規程は必要不可欠です。

そこで今回は、なぜ車両管理規程が必要なのか、またどのような内容を含めるべきかについて、具体的に解説していきます。関連する法律や罰則時の規程も紹介しますので、これから車両管理規程を作成、更新する方はぜひ参考にしてください。

車両管理規程とは?


車両管理規程とは、業務時間中に従業員が使用する車両に適用される企業の定めた規則です。この規程は、社用車の利用方法や運用ルールを明確にすることで、交通事故発生時のリスクを管理し、企業の損害賠償責任の発生を防ぐことができます。

通勤時や業務時に交通事故が発生すれば、企業が大きな責任を負うことになるため、事故の発生率を減少させ、さまざまなリスクを回避することは重要です。そのために車両管理規程を策定し、従業員に周知したうえで遵守させる必要があります。

また、社用車の利用方法を明確に規定し、従業員に対して適切な運転教育を提供することを記載することで、さらなる従業員の事故発生の予防につなげられます。

車両管理規程の作成が必要な理由

車両管理規程は、民法第715条「使用者等の責任」と道路交通法第74条の3「安全運転管理者の選任」を守るために重要な役割を果たします。

民法第715条は、「従業員が業務中の不法行為で他者に損害をあたえてしまった場合、企業が責任を負う」と規定しています。このため、従業員が安全運転をせずに事故を起こした場合でも、企業が責任を負わなければなりません。しかし、車両管理規程を作成し、安全運転を推進していれば、責任を負わずに済むケースもあります。

参考:民法第715条|e-Gov法令検索

また、道路交通法では、5台以上の車両を業務で使用する企業は、安全運転管理者を選任しなければならないと規定されています。この管理者は従業員が法を遵守し、安全に運転することを確保する責任を持つのです。

参考:道路交通法第74条|e-Gov法令検索

安全運転管理者については、以下の記事でも解説していますので参考にしてみてください。

関連記事:【最新版】安全運転管理者の役割とは?

車両管理規程では、安全運転管理者や社用車の運用ルールを記載するため、従業員ごとに解釈の違いを防ぎ、共通の認識を持って安全運転に取り組むことができます。

車両管理規程の対象になる車両

通勤、業務で使用する車両は、すべてが車両管理規程の対象となります。具体的には、以下の4種類が該当します。

車両管理規程に掲載すべき9つのポイント


ここからは、車両管理規程に記載すべき主なポイントについて解説します。必ずしもすべての項目を記載する必要がある訳ではないため、自社の運用に必要なものや業務に合ったものを選んでください。

安全運転管理者の選任や車両管理責任者の明示

車両管理規程において重要な項目の一つが、「安全運転管理者の選任や車両管理責任者の明示」です。道路交通法により、企業は使用する自動車の台数が一定数以上に達した場合、各拠点で安全運転管理者やその補助者である副安全運転管理者を選任し、公安委員会に届け出る必要があると定められています。

安全運転管理者は、自動車運転の安全を確保するために、内閣府令で定められた業務を行う責任者であり、その選任と業務の履行は法的に義務付けられています。多くの企業では、総務部や管理部門が安全運転管理者の役割を担うことが多いですが、規程には具体的な部署名と責任者名を記載してください。

車両管理台帳の作成

車両管理台帳は、社用車の適切な管理に欠かせない書類です。車両管理台帳には、車両の型式、登録番号、車名、車種を始め、車検や定期点検の日付など、車両の状態を把握するための情報を記載します。

車両管理台帳の記載内容例

法的に定められた特定の書式は存在しませんが、台帳には車両の特定、状態、および保険情報を含めることが一般的です。

車両管理台帳については、以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

参考:車両管理台帳とは?記載すべき項目や管理方法を紹介

運転者台帳の作成

運転者台帳は、社内の規定に沿って運転許可を得た運転者の詳細を管理するものです。この台帳を作成し、車両管理台帳と連動させることで、交通事故が発生した際の対応がスムーズになります。

また、企業が運転手の管理を適切に果たしている証明としても重要です。さらに、交通事故が起こった場合、運転者台帳に記載された正確な情報が迅速かつ適切な事故処理に役立ちます。

運転者台帳の記載内容例

運転者台帳には、貨物自動車運送事業輸送安全規則という法令で記載するべき10項目が定められています。

1. 作成番号及び作成年月日
2. 事業者の氏名または名称
3. 運転者の氏名、生年月日及び住所
4. 雇入れの年月日及び運転者に選任された年月日
5. 道路交通法に規定する運転免許に関する事項
6. 事故や違反の記録
7. 運転者の健康状態
8. 特定の運転者に対する指導や適正診断の受診の状況
9. 6ヶ月以内の写真
10. 運転者で亡くなった場合(解任した場合)は、その年月日及び理由
参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条|e-Gov法令検索

安全運転の確保

車両管理規程においては、運転者が常に交通ルールを遵守し、無事故・無違反で運転するための基本的な指針を示します。規程では、無免許運転、免許の失効、飲酒運転、速度違反など明確に禁止される行為を掲げ、運転者がこれらの違反を行わないように促します。

さらに、疲労運転の防止、携帯電話の使用制限、安全ベルトの着用義務など、安全運転を支援するための具体的な措置の記載も行いましょう。これに加えて、定期的な安全教育の実施や、事故発生時の報告手順を明確にすることで、運転者が常に安全意識を持って行動する環境を整えることができます。

社用車の保守点検や整備

社用車の保守点検や整備に関する情報も記載しましょう。車検や定期点検、日常点検の予定や、点検項目を記載し、社用車の整備を定期的に実施するようにしてください。

点検内容としては、タイヤの摩耗状態、ブレーキシステムの機能、燃料系統のチェック、灯火装置の作動確認、エンジンオイルや冷却水の補充状況など、基本的なメンテナンス項目を網羅することが望まれます。

また、不具合が見つかった場合の社内対応窓口や修理プロセスも明確にし、必要に応じて専門の整備士による詳細な診断を受けることも大切です。

社用車の私的使用禁止

社用車は業務実施のための資産であるため、業務外での使用は基本的に禁止し、その内容を車両管理規程に記載しましょう。

しかし、特別な状況や緊急の場合には、社用車を私的に使用することが必要になることもあります。そのような場合に備えて、事前に社用車の業務以外での使用に関して承認を得る手続きを定めることが重要です。

具体的には、目的・日時・場所などの使用条件を明記した許可申請書を提出し、承認された文書をもって初めて車両を使用できるようにしましょう。

マイカーの業務使用について

マイカーの業務使用は、多くのリスクを伴うため慎重に取り扱う必要があります。業務中に事故が発生した際には、企業が損害賠償責任を負う可能性があるため、多くの企業ではマイカーの業務使用を原則禁止しています。

しかし、勤務地によってはマイカー通勤が必要となるケースもあるため、車両管理規程とは別にマイカー通勤規程を策定し、通勤に使用する車両や利用経路の事前の申請や、車検証や任意保険証書のコピーの提出などを義務付けましょう。

これにより、マイカー使用の範囲や条件を明確にし、事故発生時の責任の所在を事前に定めることが可能です。

事故時の対応方法

事故発生直後に運転者が行うべき行動(安全の確保、警察への通報、救急車の要請など)を列挙し、事故報告のためのフォームや手順を明確にしておくことが大切です。

また、事故の状況を正確に記録し、必要な写真撮影や目撃者の情報収集も行うように、内容を記載しましょう。さらに、事故に関わる保険会社への連絡方法を明確に記述することで、事故処理の流れをスムーズに進めることが可能です。

事故時の手順を事前に定めておくことで、事故発生時の混乱を最小限に抑え、法的な責任や保険請求の処理が適切に行えます。

車両管理規程違反時の罰則内容

車両管理規程に違反した際の罰則内容は、規程内で明確に定義することが非常に重要です。これにより、従業員が規程の重要性を理解し、遵守する動機を持つことができます。

例えば、無免許運転や飲酒運転などの重大な違反には厳しい罰則を適用し、社内規則にもこれを記載しておくことが推奨されます。また、運転中の携帯電話の使用や違法駐車などの違反には、一定期間の車両使用禁止など、状況に応じた罰則を科すことが効果的です。

罰則の適用は、事前に従業員に対して十分な説明を行い、規程の各項目が明確に理解されていることが前提です。

従業員が車両管理規程に違反した場合の罰則とは?

企業における車両の適切な使用を保証するために設けられた車両管理規程は、従業員が遵守すべき重要なガイドラインです。しかし、もし従業員がこれらの規程に違反した場合、どのような罰則が適用されるのでしょうか。

ここからは、車両管理規程違反時に科される罰則の種類とその適用条件について解説します。

罰金を取ってはならない

車両管理規程に違反したからといって、企業が従業員から罰金を徴収できません。労働基準法第16条において、企業が従業員に罰金を課すことは違法とされています。

参考:労働基準法第16条|e-Gov法令検索

ただし、罰金ではなく違反行為に対する具体的な対応策や改善命令など、教育的なアプローチや減給、謹慎などの罰則であれば記載が可能です。

それでも軽度な違反内容の場合は、減給などの金銭に関わる処罰ではなく、厳重注意などの処分にする方がよいでしょう。

車両管理規程や就業規則に定めなければならない

減給などの罰則規定を設ける場合は、必ず車両管理規程や就業規則において、従業員が規定に違反した際の罰則を事前に明示しましょう。

また、減給を行う場合、労働基準法第91条に減給額の上限が定められているので、この範囲内に収める必要があります。同法によると、減給の制裁を設ける場合、一回の減給額は労働者の平均賃金の一日分の半額を超えてはならず、また一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超える減給も禁止です。

参考:労働基準法第91条|e-Gov法令検索

なお、規程に記載する際は、「罰金として徴収する」という表現を避け、「厳重注意、減給、または降格などの措置を取ることがある」と表現することが推奨されます。

車両管理規程は必須の事項


車両管理規程は、従業員が安全に車両を使用するための明確なガイドラインを提供し、事故のリスクを減少させるとともに、法的な責任から企業を保護するものです。そのため、車両管理規程の策定と維持は、事業運営の基本として極めて重要であり、すべての企業にとって必須の事項となります。

また、車両管理をより効率的に行うためには、トラッカーズマネージャーの利用をおすすめします。トラッカーズマネージャーは、車両・ドライバー・配車計画など運行にまつわる各種台帳情報をクラウド上で一元管理できるため、紙やExcelによる工数やミスを大幅に削減可能です。

多数の車両やドライバーを管理している場合、抜け漏れが情報が分散化してしまう可能性もあるため、車両台帳や運転者台帳などの帳票管理から配車・運行計画~請求書の発行・送付までまるっと一元管理できるトラッカーズマネージャーをぜひご検討下さい。

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参考:東京の役員運転手派遣・請負『セントラルサービス株式会社』