コロナ

増加する異業種からトラックドライバーへの転職

新型コロナウイルスと運送業界

緊急事態宣言が一旦明けても尚、依然として我々の生活に様々な我慢や不自由を強いる新型コロナウイルスですが、ご存じの通り、運送業界にも甚大な影響が出ています。

その「影響」の出方は実に様々で、ラストワンマイルの輸送を担う宅配業はまさに「激忙」。ヤマト運輸によると、今年4月の宅配便の数は、去年の同じ月と比べて13%以上増え過去最多に。これに伴い同社は先日、配送ドライバーなどの従業員約22万人に1人当たり最大5万円の見舞金(総額70億円)を支給しました。

また、食品や日用品など、生活インフラに関わる商品を輸送するトラックドライバーたちも、普段以上の物量に疲弊しています。一般社団法人全国スーパーマーケット協会が発表した2020年3月期の販売統計調査(速報値)によると、スーパーマーケットの総売上高は前年同月比の8.8%増。日々スーパーに生活必需品を降ろすトラックドライバーたちからは、「もう勘弁してくれ。毎日、毎日、盆暮れ並みの物量」という嘆きの他、「最近の物量の多さと連続する雨のせいでもういっそコロナになって休んだが楽なんじゃないかと思うようになってきた」といった声すら聞こえてきました。

しかしその一方、とりわけ一次輸送を担う運送企業やトラックドライバーからは、「物量が減った」、「会社がもたない」、「平日でも2日しか仕事に出ていない」、「(洗車する時間がたっぷりある)おかげで最近トラックが毎日ピカピカ」という真逆の悲鳴が上がります。

全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業現状と課題2018」では、平成28年度の「消費関連貨物」は全体の32%程度。物量が激増した食料品やトイレットペーパーなどの「生活必需品」は、ここからさらに絞られます。この「消費関連貨物」以外の輸送においては、木材や砂利、廃棄物などの「建設関連貨物」が37.3%、そして、製造現場で使用する金属、機械、石油などの「生産関連貨物」が30.4%を占めますが、周知のとおり、コロナで経済活動は著しく鈍化。

生活必需品以外の輸送に携わるトラックはそれに引っ張られるように物量が減り、ドライバーの仕事も薄くなっているのが現状です。

今、この記事を読んでくださっている企業さまは、後者だという方のほうが多いのかもしれません。

物流の実情を知らない人たちによる転職活動

ただ、こうした状況は、実は世間にはあまり知られていません。世間が抱く現在のトラックドライバーたちのイメージは、「コロナ禍の中を必死に走り回るエッセンシャルワーカー」であり、「総じて大忙し」という印象をもたれているのです。

そんな中で起きているのが、「他業種からの転職希望者の急増」です。
業界関係者たちに取材をしてみると、免許取得支援制度のある求人に未経験応募者の列ができたり、まだ募集をかけていないのに「近所に住んでいるから」という理由で問い合わせの電話がかかってきたりするケースがあるといいます。

コロナ禍による失業者は、今後きっと増加してゆくと予想します。中でも、緊急事態宣言中に「営業自粛」という名の強制休業を迫られた業種からは、多くの従業員たちが職場を離れる、または離れざるを得なくなるでしょう。実際、総務省統計局「労働力調査(基本集計)」が発表した「完全失業率」をグラフに表して見てみると、その数値の跳ね上がり方に、正直息を飲みます。

また、恐ろしいことにこの「完全失業率」というのは、「職を探しているのに見つからない人の割合」のこと。コロナ禍で職を失った人の中には、感染拡大を恐れて自宅待機をし、あえて転職活動や求職活動をしなかった人」もおり、こうした人たちは、この中にはカウントされていません。
 
世間の「トラックドライバーは人手不足」というイメージと、失業者の増加。これが、運送業界に転職者が急増するとする根拠です。

現役ドライバーの仕事を阻む新人ドライバー

慢性的な人手不足に陥っている運送業界においては、ピンチの中でもこれを人材獲得のチャンスだととらえる人もいます。もちろん人材が必要ならば積極的に受け入れ、育成するべきです。が、ここで気を付けなければならないのは、他業種からの転職希望者がどこまで運送の過酷な実情を知っているかです。

現在の運送業の現状を知らない転職希望者から聞こえてくるのは「トラックドライバー“にでも”なろう」という声。

実際、コロナ禍以降のSNSには、
「こんな稼げない状態が3年5年と続くようならいっそ大型免許取ってトラックに転職しようか最近少し考えてる」
「飲食店で失業してもECを扱ってる物流倉庫の作業員や運び屋の需要は旺盛だろうしそっちにシフトした方が儲かりそう」
という投稿が相次いでいます。

前回にも紹介した通り、4月にはトラックドライバーたちの間でシャワー問題やトイレ問題が立て続けに起きました。そんな中でも、あっけらかんとその現状を自虐織り交ぜながら報告し合う現役ドライバー達を見た時、彼らにとって「トラックドライバー」という職は、巷でよく言われる「底辺職」ではなく、むしろ「天職」なのだと再認識したと同時に、“にでも”な転職組には務まらないなと改めて思った次第です。

入社してもすぐに辞めてしまう人材を雇っては、研修期間中、教育係になる現役ドライバーの邪魔になるだけになってしまいます。実際、現役ドライバーからは「すぐ辞める人たちがいて仕事にならない」という声もすでに入ってきています。

採用面接で転職希望者に接する際は、過酷なトラックドライバーの実情を予め提示し、長く業界にいてくれる人材をしっかり把握・獲得することで現役ドライバーの仕事の効率を守るのも、企業側の大きな責任なのかもしれません。

コロナ禍から垣間見えるトラックドライバーのマナー教育の重要性

「シャワー難民」が続出

ご存じの通り、コロナ禍で生じた物量の増減によって物流・運送業界は混乱を極めました。
中でも現場のトラックドライバーには、精神的苦痛・死活問題とも言うべき出来事が4月から立て続けに起きており、「体力面だけでなく精神面でも疲弊している」という声が私のところにも毎日のように届いている状況です。

かねてよりトラックドライバー職は「底辺職だ」、「あんな仕事なんてやりたくない」などと言われてきました。そこに突如降って湧いたコロナ禍では、「物流を支える人たちのお陰で今こうして通常通り暮らせています」、「トラックドライバーさんありがとう」という声がある一方で、「コロナ運んでくるな」という心無い言葉や、中には除菌スプレーを吹きかけられたという許されない行為の他、家族が出勤・登校拒否されるという職業差別の被害まで聞こえてきます。

さらにドライバーを苦しめたのが、各ガソリンスタンドにあるシャワールームの利用停止です。

ご存じの方も多いかと思いますが、4月中旬、トラックドライバーの間で最も利用率の高いガソリンスタンドのシャワールームがコロナの感染拡大防止を理由に次々閉鎖され、「シャワー難民」が続出した出来事がありました。しかし、再開を望む声が非常に多く、各ガソリンスタンドはこの決定を早々に取り止め、1週間ほどで事態は収束。SNS上などでは「よかった」と安堵するドライバーの声が多く見られました。

この「シャワールーム騒動」を受け、Twitterを通じて「シャワーがない間どうしていたのか」とドライバーに取材してみたところ、こんな声が返ってきました。

「公園の障がい者用トイレで頭を洗った」
「コンビニのお湯を拝借して体を拭いた」
「赤ちゃん用のお尻拭きシート」で体を拭いた」
「ガソリンスタンドの洗車用の水を使った」

ガソリンスタンドにシャワールームがあることすらほとんど知られていない中、こうしたドライバーたちによる涙ぐましい努力は、世間にはなかなか伝わりません。
実際、騒動の最中、各ニュース媒体にこのシャワー問題を書いたところ、「そんな苦労があったのか、知らなかった」と、大変多くの反響がありました。

一難去ってまた一難

さて、こうして胸をなで下ろしたのもつかの間、その数日後、新たに勃発したのが大手コンビニエンスストアによる「トイレの閉鎖騒動」です。

こちらも業界の中では深刻な問題とされているためご存じの方も多いはずですが、4月下旬、今度はコンビニエンスストア大手のローソンが全店舗のトイレ使用を停止して物議を醸しました。
言わずもがな、トラックドライバーにとってこのトイレ閉鎖は、シャワールーム閉鎖よりも深刻度が高いところです。

ですので、やはりこれにも強い「再開の声」が上がりました。しかも今度はトラックドライバーだけではなく、一般のお客さん、さらには一部の加盟店オーナーからの強い要望もあったことで、ローソン本部からのトイレ使用禁止は、発表翌日に撤回。

が、最終的な判断が店舗ごとに委ねられたことから、現在でもトイレ使用を禁止している店舗が目立っているのが現状で、さらにはこの「トイレ閉鎖」の動きが、他の大手コンビニや他商業施設でも徐々に広まりつつあり、トラックドライバーは現在も依然として「トイレ難民」と化しています。

トラックドライバーのマナー

こうした状況の中、現場から次のような声が聞こえてくることがあります。

「どうしてトイレやシャワーを勝手に閉めるんだ」
「物流を回しているのは俺たちトラックドライバーだぞ」
「我々トラックドライバーがいないとみんな困るだろう」

トラックドライバーも、「物流を停めない」という正義のもと日々走っていますが、施設側にも「開放によって感染者が出れば閉店を余儀なくされ、店員も客も守れなくなる」という彼らなりの「真っ当な理由」や、「その判断に至る正義」があります。

シャワーやトイレが使えないのは、トラックドライバーにとっては死活問題であることは間違いありません。が、これらの施設はあくまでも施設側の厚意で使わせてもらっている状態です。
ゆえに、こうした一部のトラックドライバーによる一方的で傲慢な主張は、筋が違うところ。

この件に関して、某県にあるローソンのオーナーさんに話を聞いたところ、「普段からトイレやゴミ箱の使い方が非常に悪い。本部から(トイレ閉鎖の)通達があった際は正直嬉しかったです。ああ、あのトイレをこれからしばらく掃除しなくていいのかと。なのに1日で再開。開放の判断は委ねてもらえたので、弊店ではトイレは貸していません」

もちろんこうした悪マナーはトラックドライバーに限ったことではありませんが、実際問題として、トラックドライバーの間でも、「立ち小便」や「黄色いペットボトル」が今後増えるのではという懸念は多く出ています。各いう私もその1人です。

実際すでに、トイレと一緒にゴミ箱が封鎖されたことによって、大型車枠近くにポイ捨てが目立つようになったと漏らすコンビニ店員もいます。
こうした状況が続いてしまえば、トラックドライバーの地位向上はもとより、職業差別が加速する恐れも否めません。

一方、トラックドライバーの中には、シャワーやトイレの閉鎖が相次いだことで、自分たちがいかに周囲の協力を得て仕事ができていたのかに気付いたとする人も多かったのが印象的でした。

「シャワー完備してくれているガソリンスタンドと大型駐車場完備のコンビニが無ければ僕らは大変な事に……。この環境に感謝してマナー良く使わせていただきましょう」

「コロナの影響で一部のコンビニさんではトイレが借りられない状態です。仕方ないですよね。店員さんだって、掃除、消毒、(中にはペーパーの持ち出し)などもありますもんね。コンビニさん!いつもお世話になってます!でも、危機一髪の時には貸してくれるのは感謝!」

様々なリスクを追って走るトラックドライバーは、間違いなく社会インフラの要です。が、決して「偉い」わけではない。大変な中ではありますが、こういう時だからこそ経営者の皆さんによるマナー指導を徹底し、ドライバーの地位向上を目指していただければと思っています。

トラックドライバーたちに聞いた!「運送業界におけるコロナの影響」

トイレットペーパーがしばらくなかった大きな理由

2月、突如として売店からトイレットペーパーが姿を消しました。
当時報道された通り、その直前に広く拡散された「マスクはトイレットペーパーからできている」や「トイレットペーパーは中国から輸入されており今後買えなくなる」といった情報は全くのデマで、それらの情報が流れた後にも、倉庫や製造工場には多くの在庫や原料の古紙が潤沢にありました。

それでもトイレットペーパーがしばらくなかった大きな理由の1つには、他でもない「配送」が追い付かなかったという事情があります。

ご存知の通り、日本の貨物輸送の9割以上を担うのはトラック。
しかし、定期便として輸送ルートがあらかじめ決められていること、そして何よりトラックドライバーの慢性的な人手不足により、こうしたデマ情報はトラック物流業界にとって大きな混乱を招く原因になります。

トラックがあっても、運ぶ商品があっても、それを運ぶ「人間(ドライバー)」がいなければ、物流は今回の騒動ように簡単に止まってしまう。
そうした単純でありながらもなかなか気付かれない裏事情に、「物流は経済を回す欠かせない存在でありながら非常に繊細」であると改めて感じずにはいられません。

トラックドライバーたちに聞くコロナの影響

こうして「国の血液」とも称されるトラックドライバーたちに、今回のトイレットペーパー騒動以外に生じているコロナの影響について聞いたところ、同じ運送業でも、「運んでいるモノ」によってその影響は大きく違ってくるため、その答えにはバラつきがありました。

「仕事が大幅に減った」と真っ先に答えが返ってきたのは、各イベントで使用する機材などを運ぶトラックドライバーと、中国をはじめとする海外からのコンテナを運ぶトレーラーのドライバーたち。

現在、「部品や製品が中国から入ってこないために作業が途中でストップしてしまい、納品できない」という状況が各所で生じていますが、こうした異変をいち早く感じ取ったのも、海上コンテナを運ぶトレーラーのドライバーでした。

また、国による大規模イベントの開催自粛要請は、演者や現場スタッフはもちろん、その機材を運ぶドライバーの仕事や収入をも奪っています。
ご存じの通り、トラックドライバーの多くは「日給月給」という給与体系で雇用されているため、仕事がなくなりその日が休みになれば、収入もそのまま吹っ飛んでしまいます。そのため、休みが増えるドライバーは生活が立ち行かなくなり、アルバイトを始めようとするケースも。が、こうした時世の中、都合よく仕事先も見つからないため、他業種や別路線を担う運送企業への転職を考える熟練ドライバーも出てきています。

その一方、二次輸送と言われる、いわゆる「宅配業務」は、各企業のテレワークの導入、国からの学校休校や不急不要の外出自粛の要請を受け、運ぶモノが多様化し、荷量も増えています。

大手宅配業者や大手ECサイトAmazonの配送員たちに話を聞いたところ、現在飛ぶように売れていると感じるのがレトルト食品、水、コメといった生活インフラのための備蓄品。
また、家で過ごす時間が増えるため、書籍のほか、トレーニングマシーンやダンベルといったジム用品なども多く運ぶ印象があるとのことでした。

冷蔵冷凍車のトラックドライバーからは、休校になり家で留守番をする子どもが増えたことで冷凍食品が大きく動いているという話が聞こえてきます。が、あくまでもそれは家庭用で、レストラン向けの冷凍食品は逆に5~6割減ったと感じるということでした。

トラックドライバーたちへの感謝の気持ち

そんな中、コロナ騒動以前にはなかった現象として挙げられるのが、「巣ごもり消費」です。
外出を避ける消費者からは、

「暇だからやることがネットショッピングしかない」
「何もできない歯痒さにネットショッピングでポチポチ」
「今は大人しくネットショッピングで経済を回します」
「コロナのせいで払い戻しなどがあり、ストレス発散も兼ねてネットショッピング。色々と届くため、ますます引き篭もりに拍車をかけている」

といった声が聞こえてきます。

しかし、3月と4月は元々、卒業や入学入社などによって贈り物が行き来し、引越し時期とも重なるため、業界は1年の中でも繁忙期。
仕事が減り、倒産寸前の同業者がいることを考えると、こうした巣ごもり消費は手を広げて歓迎したいところですが、今後こうした外出の自粛が続けば、荷量はさらに増加し、配達の遅延や物流のパンクなどが生じるのでは、と予想する経営者やドライバーもいます。

現場のトラックドライバーは、こうしたコロナによる騒動や混乱の中で在宅ワークが叫ばれる現在においても、そして今後においても、消費者の生活インフラを守るべく、第一線で日本中を走り回らねばなりません。

先が見えない不安によって、今後もデマの拡散や不要な買いだめは頻発するかもしれません。実際、トイレットペーパーのデマ騒動で少しは懲りたかと思いきや、一部地域に出された「週末の外出自粛」によって、消費者によるさらなる買占め・買いだめが勃発しました。 

在宅ワークもできず、第一線でインフラを支えるトラックドライバーたち。
そんなトラックドライバーたちに感謝せずにはいられません。

企業経営者自身も大変な時期ではあるかと思いますが、東日本大震災の際に得たそれぞれの教訓を思い出し、そして活かしながら、前へ進んでいっていただきたいと心から思っています。